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新古今集 寂しさはその色としもなかりけり 品詞分解と訳

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 今回は、「三夕の歌(さんせきのうた)」の一首で、「新古今和歌集」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。

 なお、他の二首については、西行法師の「心なき~」の記事、藤原定家の「見渡せば~」の記事を参照してください。


新古今集・巻4・秋歌上・361 寂蓮法師(じゃくれんほうし)

題しらず


寂しさはその色としもなかりけり槇立つ山の秋の夕暮れ


<平仮名> (歴史的仮名遣い)

さびしさは そのいろとしも なかりけり まきたつやまの あきのゆふぐれ


<現代語訳>

この寂しさは特にどの色のせいだということはなかったのだなあ。(山全体から寂しさが漂う)杉やヒノキの茂る山の秋の夕暮れよ。

(第三句までの上の句で情を、下の句で景を詠んだ情前景後の句法。紅葉せずに秋らしくない杉やヒノキのような常緑樹の山でも寂しいと詠むことで山の秋の夕暮れの寂しさを巧みに強調している。)


<作者>

寂蓮法師(じゃくれんほうし)
1139頃~1202年。平安末期の歌人。俗名は藤原定長。伯父である藤原俊成の養子となったが、定家が生まれた後に自ら退いて出家。新古今和歌集の撰者の一人であったが完成前に没した。歌風は優艶で技巧的。家集に「寂連法師集」。


<和歌の基礎知識>

◇和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◇和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)>

句切れ :三句切れ

体言止め :夕暮れ

倒置 :上の句と下の句の倒置と解釈することもできる。

頭韻(とういん)=句の頭の音が第二句を除いて「ア段音」
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<品詞分解・語句文法解説>

寂しさ(さびしさ) :名詞
※「さ」は、形容詞・形容動詞の語幹に付いて程度・状態を表わす名詞をつくる接尾語。

は :係助詞

そ :代名詞

の :格助詞 
※この歌の「その」は、「どの」の意味

色 :名詞
※「その色」は、紅葉など特定の色を越えた全体の景色や雰囲気のこと。

と :格助詞

しも :強意の副助詞 「その色」を強調している。
※(打消の語と呼応して)必ずしも~ではない。
※し(強意の副助詞)+も(係助詞)とする立場もある。

なかり :形容詞ク活用「なし」の連用形

けり :詠嘆の助動詞「けり」の終止形 ~だなあ。
※和歌で使われている助動詞「けり」は詠嘆。

槇(まき) :名詞 杉やヒノキなど常緑樹の総称。

立つ :動詞タ行四段活用「たつ」の連体形

山 :名詞

の :格助詞

秋 :名詞

の :格助詞

夕暮れ(ゆふぐれ) :名詞

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<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<関連>

この歌は、古来、秋の夕暮れを詠んだ著名な三首である、「三夕の歌(さんせきのうた)」の一首。
他の二首、西行法師の「心なき~」、藤原定家の「見渡せば~」については、このページ最上段につけているリンクから参照してください。

ちなみに、三夕の歌に共通する修辞(表現技法)は、「三句切れ」と「体言止め(夕暮れ)」。
また、上の句と下の句の「倒置」と解釈することもできる。


<和歌索引>

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<古文や和歌の学習書と古語辞典>

古文や和歌を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
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◇関連記事 (前後の7記事を表示)
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