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和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識

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 今回は、修辞法(表現技法)=句切れ・枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取りなどについて紹介します。

 それぞれの代表的な和歌には、解説した記事へのリンクをつけてあります。その他の歌を知りたい場合は、右サイドメニュー中段・下段(スマホ版では下段)にあるブログ内検索を利用して下さい。

 ◇和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」を読んでね。


<和歌の修辞法(表現技法)>

句切れ(くぎれ)=和歌における句切れとは、短歌の結句(第五句)以外(初句~第四句)の句の終りに意味上の切れ目がある(文が終止している)こと。
したがって、長歌などには句切れという用語は用いない。(※句切れを修辞に含めない立場もある。)

形の上では、句末が活用語の場合は、終止形・命令形はもちろんのこと、係り結びによる連体形・已然形など、また、句末が体言、助詞などの場合もあり、形だけではなく意味を踏まえた上で判断する。
※活用語=用言(動詞・形容詞・形容動詞)・助動詞

◎二句切れ・四句切れは、五七調(五・七/五・七/七)。万葉集に多い。

◎初句切れ・三句切れは、七五調(五/七・五/七・七)。古今集は三句切れ、新古今集は初句切れ、三句切れが多い。

◎「切れ字」は、連歌・俳諧・俳句の用語であり、和歌では用いない。 
※季節を示す「季語」も連歌・俳諧・俳句の用語。

※切れ字=連歌・俳諧・俳句で句を切るのに用いられる活用語の言い切りの形(終止形・命令形)、助詞、助動詞のこと。切れ字となる助詞は「や・か・ぞ・かな」など、助動詞は「けり・ず・らん」など。

「連歌・俳諧・俳句の切れ字による句切れ」と「和歌の句切れ」を混同しないこと。
草の戸も住み替はる代/雛の家(「二句切れ」の俳諧)
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音におどろかれぬる(「句切れなし」の和歌)

句割れ(くわれ)=句の中に意味の切れ目が生じる。「新しき~」

句跨り(くまたがり)=一文節のことばが二句にまたがっている。


枕詞(まくらことば)=主に「5音」で、特定の語を導き出すことを目的として、その前に置かれる決まったことば。序詞とは違って著作権のない歌の短いイントロ・飾りのようなイメージで、誰でも歌を詠むときに使うことができる。「飾り」だから基本的には訳出しないが、「花がたみ~」のように実景を表現したものでもあるとして訳出する場合もある。

・掛詞の代表的な和歌 :「あをによし」→「奈良」「ちはやぶる」→「神」「ひさかたの」→「光」・「月」、などなど。


序詞(じょことば・じょし)=主に「7音以上」で、特定の語を導き出すことを目的として、作者がその歌のためだけに即興的に自作した1回限りの表現技法。著作権がある歌のイントロのようなイメージで、序詞の後からが作者の本当に言いたい部分。基本的には訳出する。
「同音による序詞」、「掛詞による序詞」、「比喩による序詞」の3つに大別される。

・「同音による序詞」の代表的な和歌 :「多摩川に~」「ほととぎす~」「駿河なる~」

・「掛詞による序詞」の代表的な和歌 :「風吹けば沖つ~」「唐衣きつつ~」「立ち別れ~」

・「比喩による序詞」の代表的な和歌 :「あしひきの山鳥の~」「むすぶ手の~」「新しき~」
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掛詞(かけことば)=一つの言葉に同じ音の二つの意味を重ねて《例:かれ=枯れ(かれ)・離れ(かれ)》、表現内容を複雑・豊かにした技法。

・掛詞の代表的な和歌 :「花の色は~」「名にし負はば逢坂山の~」「このたびは~」


縁語(えんご)=ある言葉と意味の上で密接に関連する言葉を連想的に用いる技法。関連語のグループのようなもの《例:「雪」と「降る・消ゆ(きゆ)・溶く(とく)」》。

・縁語の代表的な和歌 :「白玉か~」「玉の緒よ~」「色見えで~」

・掛詞と縁語の両方がある代表的な和歌 :「袖ひちて~」「唐衣きつつ~」「むすぶ手の~」


本歌取り(ほんかどり)=有名な古歌から一句~二句を取って、題材を変えたり、逆を詠んだり、本歌の時間や事件をさらに展開したりして新しい歌を詠む技法。

・本歌取りの代表的な和歌 :「花さそふ~」「志賀の浦や~」「春の夜の夢の浮橋~」

本説取り(ほんぜつどり・ほんせつどり)=和歌以外の物語、漢詩文などを典拠として歌を詠む技法。
※典拠(てんきょ)=もとになった確かなより所。

・本説取りの代表的な和歌 :「見渡せば花も紅葉も~」「昔思ふ~」「またや見む~」

引き歌(ひきうた)=物語、日記、随筆などの散文部分に有名な古歌の一部もしくは歌全体を引用することにより情趣を高める表現技巧。または歌そのもの。

・引き歌の例 :「花は盛りに(徒然草)」「たれこめて~」


倒置(とうち)=語句の順序を入れ替えて、感動や余情を表したり、語調を整えたりする。

・倒置の代表的な和歌 :「忘れては~」「山里は~」「月見れば~」

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体言止め(たいげんどめ)=短歌の結句(第五句)を体言で終止することによって、その後にまだ表現が続くような印象を残すことで、余韻・余情・詠嘆を表す技法。

・体言止めの代表的な和歌 :「寂しさは~」「朝ぼらけ~」「薄く濃き~」

「道の辺に~」のように結句(第五句)以外の句末が体言のものは、その句が句切れであっても、和歌の場合は「体言止め」とは言わない。

・その他に、和歌でよく見られる文末用法

つつ止め=接続助詞「つつ」を和歌などの文末に用いて、動作・作用の継続を詠嘆的に表現する。 「しきりに~することだよ。」

・つつ止めの代表的な和歌 :「秋の田の~」「田子の浦に~」「君がため~」


歌枕(うたまくら)=和歌の題材として詠まれた諸国の名所。

・歌枕の代表的な和歌 :「難波潟~」、 「筑波嶺の~」「わが庵は~」


見立て(みたて)=ある事柄を他の事柄になぞらえたり、見なしたりする技法。
※比喩(直喩・隠喩など)と同一視する考えと、見立ては目に見えるものをなぞらえた表現技法とする考えがある。
例えば、「雪」を「花」になぞらえる=「見立て」、「(目に見えない)燃える思い」を「炎」になぞらえる=「比喩」
ちなみに、直喩(ちょくゆ)「~のごとし」などの直接的な比喩表現。 ⇔ 隠喩(いんゆ)=暗示による比喩表現(暗喩ともいう)。

・見立ての代表的な和歌 :「ちはやぶる~」「天つ風~」「冬ながら~」

擬人法(ぎじんほう)=人間以外のものを人間に見立てたもの。
人間以外のものに人間にしか使われない動詞などが使われる。

・擬人法の代表的な和歌 :「ひさかたの~」「春の夜の闇はあやなし~」「小倉山~」

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折句(おりく)=題の言葉の一文字ずつを各句の最初に詠み込んだもの。

・折り句の代表的な和歌 :「唐衣きつつ~」 ※「枕詞・序詞・掛詞・縁語」など修辞オンパレードの歌でもある。

沓冠(くつかむり・くつかぶり)=折句の一種で、事物の名を各句の頭(=冠)と末尾(=沓)に詠み込む技法。

沓冠の代表的な歌として、吉田兼好が頓阿(とんあ)に送った歌と頓阿の返歌

・夜も涼し寝覚めの仮庵手枕も真袖も秋に隔てなき風 (吉田兼好)
もすず ざめのかり まくら そでもあき だてなきか
「よねたまへ ぜにもほし (米賜へ 銭も欲し)」

・夜も憂し妬たく我が背子果ては来ずなほざりにだにしばし訪ひませ (頓阿)
るもう たくわがせ てはこ ほざりにだ ばしとひま
「よねはなし せにずこし (米は無し 銭少し)」

※この二首は沓が結句~初句へ戻りますが、沓も初句~結句へ詠み込む場合もあります。


物名(もののな・ぶつめい)=物の名前を歌の中に隠して詠み込む技法。「隠し題」ともいう。

古今集の「部立」では、巻10が「物名歌」 

・心から花のしづくにそぼちつつ憂くひずとのみ鳥のなくらむ (古今集・巻10・422 藤原敏行)
「憂くひず(うくひず)」=鶯(うぐいす)

・あしひきの山立ち離れ行く雲の宿りさだめぬ世にこそありけれ (古今集・巻10・430 小野滋蔭)
「立ち離(たちはな)」=橘(たちばな)

・あきちかう野はなりにけり白露の置ける草葉も色かはりゆく (古今集・巻10・440 紀友則)
「きちかう野はな(きちかうのはな)」=桔梗(ききょう)の花


押韻(おういん)=同じ音を決まった場所に繰り返し使うこと。韻を踏むこと。
※同音だけではなく、同一母音(「あ・か・さ・た・な」など)、同一子音(「は・ひ・ふ・へ・ほ」など)の場合もある。

・頭韻(とういん)=句の頭の音を揃えること。
頭韻の和歌の例 :「よき人の~」

・脚韻(きゃくいん)=句の終わりの音を揃えること。
脚韻の和歌の例 :「狩り暮らし~」

・接韻(せついん)=句の終りの音と次の句の頭の音を揃えること。


対句(ついく)=形式が同じで相対する二つの句を並べて用いること。

・対句の和歌の例 :「これやこの~」


反復法(はんぷくほう)=同一または類似の語句の繰り返し。

・反復法の和歌の例 :「君待つと~」「あかねさす~」「あしひきの山のしづくに~」


<古文や和歌の学習書と古語辞典>

古文や和歌を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
《古文・和歌の学習書の記事へ⇒》

《品詞分解付き対訳書の記事へ⇒》

《古語辞典の記事へ⇒》
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