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古今集・伊勢 名にし負はばいざ言問はむ都鳥 品詞分解と訳

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 今回は、「古今和歌集」と「伊勢物語 東下り」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。

◇「東下り」のこの他の和歌は、「リンク(唐衣~)」「リンク(駿河なる~)」からどうぞ。

◇「東下り(全文)」の品詞分解・訳・解説は、「リンク・東下り(全文)」からどうぞ。


古今集・巻9・羇旅(きりょ)歌・411 在原業平朝臣(在原業平) & 伊勢物語 第9段 「東下り」(第四首目)


古今集 詞書

武蔵国と下総国との中にある隅田川のほとりにいたりて、都のいと恋しうおぼえければ、しばし川のほとりにおりゐて、「思ひやれば、かぎりなく遠くも来にけるかな」と思ひわびてながめをるに、渡守「はや舟に乗れ。日暮れぬ」と言ひければ、舟に乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なくしもあらず。さる折に、白き鳥の、嘴と足と赤き、川のほとりに遊びけり。京には見えぬ鳥なりければ、みな人見知らず。渡守に「これは何鳥ぞ」と問ひければ、「これなむ都鳥」と言ひけるを聞きてよめる

(武蔵の国と下総の国との境にある隅田川のほとりにやって来て、都がたいそう恋しく思われたので、少しの間、川のほとりに馬から下りて座って、思いを馳せれば、ひどく遠くへまでも来てしまったことだなあと、しょんぼり物思いにふけって、あたりを見ていると、渡し船の船頭が、「さっさと船に乗っておくれ。日が暮れちゃうよ」と言ったので、船に乗って渡ろうとするのだが、一行の者は、何となく気力も失せたようで、京に愛する人がいないわけでもないしと思っている、そんな時に白い鳥で、くちばしと足との赤いのが川のほとりで遊んでいた。京では見かけない鳥だったので、一行の者は見ても何の鳥だかわからない。それで渡し守に「これは何という鳥であるか」と尋ねたところ、「これは都鳥だよ」と言ったのを聞いて詠んだ歌)


名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと


<平仮名> (歴史的仮名遣い)

なにしおはば いざこととはむ みやこどり わがおもふひとは ありやなしやと


<現代語訳>

都という名を持っているのならば、(都のことをよく知っているだろうから、)さあ、尋ねよう、都鳥よ。私の恋しく思っているあの人は無事でいるのか、いないのかと。

(都鳥という名を聞いて、都に残してきた女性への思いが高まって詠んだ歌。)


<作者>

在原業平(ありわらのなりひら)
825年~880年。六歌仙、三十六歌仙の一人。平城(へいぜい)天皇の皇子である阿保(あぼ)親王の第五子、母は桓武天皇の皇女である伊都(いと)内親王。在原の姓を賜って皇族の身分を離れ臣籍に下る。在原行平の異母弟。容姿端麗、奔放でおおらかな性格であったといわれており、「伊勢物語」の主人公「昔男」のモデル。また、「源氏物語」の主人公「光源氏」のモデルとする説も一部にはある。蔵人・右馬頭などを経て蔵人頭・右近権中将・美濃権守に至る、従四位上。在五中将(在原家の五男の意味)、在中将と呼ばれた。朝臣(あそん)は、五位以上の人の姓名につける敬称。

《参考》 二条の后(にじょうのきさき)
842年~910年。藤原長良(ふじわらのながら)の娘で高子(たかいこ)。清和天皇の即位に伴う大嘗祭(859年)において、五節の舞姫を務め、清和天皇が東宮であった時に女御(866年)となり、貞明親王(後の陽成天皇)を生んで(869年)、中宮(877年)を経て皇太后(882年)となった。
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<語句文法解説> 詞書

「これなむ都鳥」 :「なむ」(係助詞)→結びの省略
「これなむ都鳥(なる)」のように、「なる」(断定の助動詞「なり」の連体形)が省略されている。
※伊勢物語も同じ。


<品詞分解・語句文法解説> 歌

名 :名詞

に :格助詞

し :強意の副助詞 ※無理に訳出しなくてもOK。

負は :動詞ハ行四段活用「負ふ(おふ)」の未然形
※「名に負ふ」は、名として持っている。

ば :順接仮定条件の接続助詞
※強意の副助詞「し」~接続助詞「ば」=「AしBば構文」(「し」が強意の副助詞であることを識別できる形。)

いざ :感動詞 さあ。

言問は(こととは) :動詞ハ行四段活用「言問ふ(こととふ)」の未然形 尋ねる。

む :意志の助動詞「む」の終止形

都鳥(みやこどり) :名詞 河口近くに住む水鳥の一種。

わ :代名詞

が :格助詞

思ふ :動詞ハ行四段活用「思ふ」の連体形

人 :名詞
 
は :係助詞

あり :動詞ラ行変格活用「あり」の終止形 存在する。無事でいる。

や :疑問の終助詞 
※係助詞説もある。係助詞とした場合も終助詞的用法(文末用法)なので係り結びはない。

なし :形容詞ク活用「なし」の終止形 

や :疑問の終助詞 
※係助詞説もある。係助詞とした場合も終助詞的用法(文末用法)なので係り結びはない。

と :格助詞

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<文法特記>

※この他に「AしBば構文」の歌としては、「唐衣きつつなれにし~」「名にし負はば逢坂山の~」「年ふればよはひは老いぬ~」などなど。

※この構文の接続助詞「ば」の意味については、文脈に応じて4つの意味の中から選択する。

※接続助詞「ば」については、下にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。


<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<和歌の基礎知識>

◎和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◎和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)>

・句切れ :二句切れ、三句切れ

・倒置 :「言問はむ」の内容を第四句以下の下の句が示す。


<和歌索引>

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<古文や和歌の学習書と古語辞典>

古文や和歌を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
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