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枕草子(102段) 中納言参りたまひて 品詞分解と現代語訳+敬語

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 今回は、「枕草子 中納言参りたまひて」の原文・現代語訳(口語訳)・品詞分解(文法的説明)・語句の意味・文法解説・敬語(敬意の方向)・係り結び・おすすめ書籍などについて紹介します。


 「枕草子(まくらのそうし) 中納言参りたまひて 102段(全98段)(能106段)」(清少納言)

 ※枕草子は伝本・注釈書によって章段の区切り方が違うことを常識として知っておいて下さい。
   代表的な「日本古典文学大系」の他に「日本古典全書 枕冊子」「能因本」の段数もカッコ内に示す。
   枕草子は作品名や冒頭の文章で検索しましょうね。段数で検索をすると損をしますよ。


<原文>

◇全文の「現代仮名遣い・発音・読み方(ひらがな)」は下記の別サイトからどうぞ。
《⇒現代仮名遣いサイトへ行く》

 中納言参り(まゐり)給ひ(たまひ)て、御扇(おほんあふぎ・みあふぎ)奉らせ(たてまつらせ)給ふに、「隆家(たかいへ)こそいみじき骨は得て侍れ(はべれ)。それを張らせて参らせむとするに、おぼろけの紙は、え張るまじければ、求め侍るなり」と申し(まうし)給ふ。

「いかやうにかある」と問ひ聞こえさせ給へば、「すべていみじう侍り。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり』となむ人々申す。まことにかばかりのは見えざりつ」と、言(こと)高くのたまへば、「さては、扇のにはあらで、海月(くらげ)のななり」と聞こゆれば、「これは隆家が言にしてむ」とて、笑ひ給ふ。

 かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、「一つな落としそ」と言へば、いかがはせむ。


<現代語訳>

 中納言(隆家様)が参上なさって、(中宮様に)御扇をお差し上げになる時に、「隆家はすばらしい(扇の)骨を手に入れております。それに(紙を)張らせて差し上げようと思いますけれども、並大抵の紙は張れないでしょうから、(ふさわしい紙を)探しているのでございます」と申し上げになさる。

(中宮様が)「(その骨は)どのようなものか」とお尋ね申し上げなさると、(中納言様は)「何から何まですばらしいのでございます。『全く今までに見たことがない骨の様子だ』と人々が申します。本当にこれほどの(骨)は見かけたことがない」と、声高におっしゃるので、(私が)「それでは、扇の(骨)ではなくて、海月の(骨)のようね」と申し上げると、(中納言様は)「これは、隆家の言葉にしてしまおう」と言って、お笑いになる。

 このような(自慢話めいた)ことは、聞き苦しいことのうちに入れておくべき(で書くべきではないの)だけれど、(周囲の人々が)「一つも(書き)落としてくれるな」と言うので、どうしようか、いや、どうしようもない(ので書いた)。


<作者>

清少納言(「現」せいしょうなごん・「歴」せいせうなごん)
966年頃~1020年代頃。平安時代中期の歌人・随筆文学作者。枕草子は随筆文学の傑作。父は清原元輔、曾祖父は清原深養父。清少納言は女房名で姓の「清」と家格を表す「少納言」に由来するといわれる。橘則光と結婚し則長を生むが離婚。993年頃から一条天皇の中宮定子に仕えた。和漢の才能に優れ、約10歳年下の定子に愛されたが、定子の父である関白藤原道隆の死とともに権力は道長に移り、定子は24歳の若さで悲運の死を遂げる。定子の死後は宮仕えを辞し、藤原棟世と再婚したというが、晩年は不遇であったともいわれている。
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<品詞分解(文法的説明=文法解釈)>

◇主要な品詞を色別表示にした見やすい品詞分解を別サイトに作成しました。
《⇒品詞色別表示の品詞分解サイトへ行く》

 ※活用の基本形を、ひらがなで示した。動詞は、品詞名を省略した。

 中納言参り給ひて、御扇奉らせ給ふに、
 中納言【名詞】 参り【ラ行四段活用「まゐる」の連用形:謙譲の本動詞】 給ひ【ハ行四段活用「たまふ」の連用形:尊敬の補助動詞】 て【接続助詞】、 御扇【名詞】 奉らせ【サ行下二段活用「たてまつらす」の連用形:謙譲の本動詞】 給ふ【ハ行四段活用「たまふ」の連体形:尊敬の補助動詞】 に【格助詞】、
※奉ら【ラ行四段活用「たてまつる」の連用形:謙譲の本動詞】+せ【尊敬の助動詞「す」の連用形】とする場合もある。

「隆家こそいみじき骨は得て侍れ。
「隆家【名詞】 こそ【係助詞】 いみじき【形容詞・シク活用「いみじ」の連体形】 骨【名詞】 は【係助詞】 得【ア行下二段活用「う」の連用形】 て【接続助詞】 侍れ【ラ行変格活用「はべり」の已然形:丁寧の補助動詞】。 

それを張らせて参らせむとするに、
それ【代名詞】 を【格助詞】 張ら【ラ行四段活用「はる」の未然形】 せ【使役の助動詞「す」の連用形】 て【接続助詞】 参らせ【サ行下二段活用「まゐらす」の未然形:謙譲の本動詞】 む【意思の助動詞「む」の終止形】 と【格助詞】 する【サ行変格活用「す」の連体形】 に【接続助詞】、

おぼろけの紙は、え張るまじければ、
おぼろけ【形容動詞・ナリ活用「おぼろけなり」の語幹】 の【格助詞】 紙【名詞】 は【係助詞】 え【副詞】 張る【ラ行四段活用「はる」の終止形】 まじけれ【不可能の助動詞「まじ」の已然形】 ば【接続助詞】、 

求め侍るなり」と申し給ふ。
求め【マ行下二段活用「もとむ」の連用形】 侍る【ラ行変格活用「はべり」の連体形:丁寧の補助動詞】 なり【断定の助動詞「なり」の終止形】」 と【格助詞】 申し【サ行四段活用「まうす」の連用形:謙譲の本動詞】 給ふ【ハ行四段活用「たまふ」の終止形:尊敬の補助動詞】。

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「いかやうにかある」と問ひ聞こえさせ給へば、
「いかやうに【形容動詞・ナリ活用「いかやうなり」の連用形】 か【係助詞】 ある【ラ行変格活用「あり」の連体形】」 と【格助詞】 問ひ【ハ行四段活用「とふ」の連用形】 聞こえ【ヤ行下二段活用「きこゆ」の未然形:謙譲の補助動詞】 させ【尊敬の助動詞「さす」の連用形】 給へ【ハ行四段活用「たまふ」の已然形:尊敬の補助動詞】 ば【接続助詞】、

「すべていみじう侍り。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり』となむ人々申す。
「すべて【副詞】 いみじう【形容詞・シク活用「いみじ」の連用形:「いみじく」のウ音便】 侍り【ラ行変格活用「はべり」の終止形:丁寧の補助動詞】。 『さらに【副詞】 まだ【副詞】 見【マ行上一段活用「みる」の未然形】 ぬ【打消の助動詞「ず」の連体形】 骨【名詞】 の【格助詞】 さま【名詞】 なり【断定の助動詞「なり」の終止形】』 と【格助詞】 なむ【係助詞】 人々【名詞】 申す【サ行四段活用「まうす」の連体形:丁寧(謙譲語Ⅱ)の本動詞】。

まことにかばかりのは見えざりつ」と、言高くのたまへば、
まことに【副詞】 かばかり【副詞】 の【格助詞】 は【係助詞】 見え【ヤ行下二段活用「みゆ」の未然形】 ざり【打消の助動詞「ず」の連用形】 つ【完了の助動詞「つ」の終止形】」 と【格助詞】、 言【名詞】 高く【形容詞・ク活用「たかし」の連用形】 のたまへ【ハ行四段活用「のたまふ」の已然形:尊敬の本動詞】 ば【接続助詞】、
※言高く【形容詞・ク活用「ことたかし」の連用形】とする場合もある。

「さては、扇のにはあらで、海月のななり」と聞こゆれば、
「さては【接続詞】、 扇【名詞】 の【格助詞】 に【断定の助動詞「なり」の連用形】 は【係助詞】 あら【ラ行変格活用「あり」の未然形】 で【接続助詞】、 海月【名詞】 の【格助詞】 な【断定の助動詞「なり」の連体形:「なる」の撥音便無表記】 なり【推定の助動詞「なり」の終止形】」 と【格助詞】 聞こゆれ【ヤ行下二段活用「きこゆ」の已然形:謙譲の本動詞】 ば【接続助詞】、

「これは隆家が言にしてむ」とて、笑ひ給ふ。
「これ【名詞】 隆家【名詞】 が【格助詞】 言【名詞】 に【格助詞】 し【サ行変格活用「す」の連用形】 て【強意の助動詞「つ」の未然形】 む【意思の助動詞「む」の終止形】」 と【格助詞】 て【接続助詞】 笑ひ【ハ行四段活用「わらふ」の連用形】 給ふ【ハ行四段活用「たまふ」の終止形:尊敬の補助動詞】。
※とて【格助詞】とする立場もある。

 かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、
 かやう【形容動詞・ナリ活用「かやうなり」の語幹】 の【格助詞】 こと【名詞】 こそ【係助詞】 は【係助詞】、 かたはらいたき【形容詞・ク活用「かたはらいたし」の連体形】 こと【名詞】 の【格助詞】 うち【名詞】 に【格助詞】 入れ【ラ行下二段活用「いる」の連用形】 つ【強意の助動詞「つ」の終止形】 べけれ【当然の助動詞「べし」の已然形】 ど【接続助詞】、

「一つな落としそ」と言へば、いかがはせむ。
「一つ【名詞】 な【副詞】 落とし【サ行四段活用「おとす」の連用形】 そ【終助詞】」 と【格助詞】 言へ【ハ行四段活用「いふ」の已然形】 ば【接続助詞】、 いかが【副詞】 は【係助詞】 せ【サ行変格活用「す」の未然形】 む【意思の助動詞「む」の連体形】。
※「む」(連体形)は、疑問副詞「いかが」に呼応した結び。 

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<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◆「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◆「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◆「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◆「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◆「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<語句・文法解説> 

■主な敬語については、「敬意の主体(誰から)」→「敬意の対象(誰へ)」(敬意の方向)を示した。
※古文の敬語が分からない人は、上にリンクを付けてある「敬語の基礎知識」を読んでね。

◇助動詞「む」、強意の助動詞などの主な助動詞や助詞の意味については、上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。


・中納言 :藤原隆家。関白道隆の四男で中宮定子の弟。

■《参り》《給ひ》 :参上なさる。
《参り》謙譲の本動詞(参上する。) :「作者(清少納言)」→「中宮定子」への敬意。
《給ひ》尊敬の補助動詞(お~になる。~なさる。) :「作者(清少納言)」→「中納言隆家」への敬意。

■《奉らせ》《給ふ》 :お差し上げになる。差し上げなさる。
《奉らせ》謙譲の本動詞(差し上げる。) :「作者(清少納言)」→「中宮定子」への敬意。
《給ふ》尊敬の補助動詞(お~になる。~なさる。) :「作者(清少納言)」→「中納言隆家」への敬意。

※「奉らせ」は、謙譲語の「奉る」に謙譲の意味を強める助動詞「す」が付いて一語化したもの。
「奉らせ」の動作主が中納言(隆家)であるため、このブログでは「せ給ふ」と、二重尊敬(最高敬語)では解釈しない立場。「奉ら」+「せ」と二語に品詞分解した場合も、「せ」は謙譲の意味を強める助動詞と解釈する。
「せ給ふ」として、隆家に対する二重尊敬(最高敬語)と解釈する立場もあるが、枕草子において他の段でも、隆家に対しては「給ふ」のみが用いられ、二重尊敬「せ給ふ」は用いられていない。
ただし、あなたに指導者がいるのなら、その文法・解釈に従って下さいね。

■得て《侍れ》
《侍れ》丁寧の補助動詞(~おります。~ございます。) :「話し手(中納言隆家)」→「聞き手(中宮定子)」への敬意。

■張らせて《参らせ》
《参らせ》謙譲の本動詞(差し上げる。) :「話し手(中納言隆家)」→「中宮定子」への敬意。

・「おぼろけの」 :並大抵の & (後半に出てくる)「かやうの」 :このような。
※(形容動詞の語幹)+「の」(格助詞)は、連体修飾語をつくる形容動詞の語幹用法。

・え~まじけれ : とても~できない。 
※「え」は、打消と呼応して不可能を表す呼応の副詞(陳述の副詞・呼応の副詞)。
※助動詞「まじ」は、「べし」の打消のイメージ。

■求め《侍る》なり
《侍る》丁寧の補助動詞(~おります。~ございます。) :「話し手(中納言隆家)」→「聞き手(中宮定子)」への敬意。

■《申し》《給ふ》 :申し上げなさる。
《申し》謙譲の本動詞(申し上げる。) :「作者(清少納言)」→「中宮定子」への敬意。
《給ふ》尊敬の補助動詞(お~になる。~なさる。) :「作者(清少納言)」→「中納言隆家」への敬意。

・いかやうに :どのようだ。どんなだ。

■問ひ《聞こえ》《させ給へ》」 :申し上げなさる。
《聞こえ》謙譲の補助動詞(お~申し上げる。) :「作者(清少納言)」→「中納言隆家」への敬意。
《させ給へ》(お~になる。~なさる。) :「作者(清少納言)」→「中宮定子」への敬意。
《させ》尊敬の助動詞+《給へ》尊敬の補助動詞(二重尊敬・最高敬語なので動作主は中宮定子。)

・いみじう :「いみじく」のウ音便。 すばらしい。

■いみじう《侍り》
《侍り》丁寧の補助動詞(~おります。~ございます。) :「話し手(中納言隆家)」→「聞き手(中宮定子)」への敬意。

・さらに :打消の語と呼応する副詞(陳述の副詞・呼応の副詞) 全く(~ない)。

■人々《申す》
《申す》「特殊な謙譲語(謙譲語Ⅱ) or 特殊な丁寧語」(荘重体敬語)の本動詞(申します。)
「話し手(中納言隆家)」→「聞き手(中宮定子)」への敬意。
※この「申す」については、下の<文法特記>を参照のこと。

・かばかり :これほど。

・「かばかりのは」の「の」 :準体格(体言の代用)の格助詞(~のもの) ここでは「骨」を代用。
※「扇の」、「海月の」も同じ。

・言高く :声高に。

■言高く《のたまへ》
《のたまへ》尊敬の本動詞(おっしゃる。) :「作者(清少納言)」→「中納言隆家」への敬意。

・さては :それでは。

・にはあら :断定の助動詞「なり」の語源は「に・あり」で、その間に助詞「は」が挟まった形。「に」の識別頻出形。

・で :打消しの接続助詞 ~なくて。(未然形接続)

◎「ななり」 :~であるようだ。
「なるなり」→「なんなり」→「ななり」と変化した撥音便「ん」の無表記。 
※読む時は「ナンナリ」と撥音便の「ン」を加えて読むのがルール。

◎「海月のななり」 :清少納言の機知に富んだ洒落(しゃれ)。
当時から海月は食用で、骨がないのは周知の事実。
見たことがない骨(隆家)=(骨がない)海月の骨ようね(作者)→(上手い洒落だと感心して)隆家の言葉に・・・。
また、単なる洒落にとどまらず、「あなたが持っているという骨も、海月の骨のように、本当は持っていないのでは?」と自慢話をする隆家を遠回しに皮肉っているとも解釈できる。

■ななりと《聞こゆれ》
《聞こゆれ》謙譲の本動詞(申し上げる。) :「作者(清少納言)」→「中納言隆家」への敬意。

「てむ」・「つべけれ」 :完了の助動詞「つ」「ぬ」+推量の助動詞「む」「べし」など=完了→強意(確述)を表す。

■笑ひ《給ふ》
《給ふ》尊敬の補助動詞(お~になる。~なさる。) :「作者(清少納言)」→「中納言隆家」への敬意。

・かたはらいたき :(はたで見ていて)きまりが悪い。聞き苦しい。

・「一つな落としそ」の「な~そ」 :~してくれるな。 禁止構文(懇願するイメージの穏やかな禁止)。
※「な」は、禁止と呼応する副詞(陳述の副詞・呼応の副詞)

・いかがはせむ :反語 どうしようか、いや、どうしようもない。
※「いかが」は、疑問・反語の副詞(陳述の副詞・呼応の副詞)なので、これに呼応して連体形の「む」で結ぶ。
「いかが」は、「いかにか」(副詞「いかに」+係助詞「か」)の撥音便化した「いかんが」から転じた形。

◎「かやうのことこそは~いかがはせむ」
謙遜をしながらも、内心は得意満面な清少納言。積極的に自慢するのではなく、「みんなが書けって言うからぁ・・・」としている所が彼女の賢さ。


<係り結び>

・「こそ」→「侍れ」

・「か」→「ある」

・「なむ」→「申す」

・かやうのこと「こそ」→結びの消滅(流れ) 
※「べけれ」のあとの接続助詞「ど」により文が終了していないため。

※「いかが」→(はせ)「む」(疑問・反語の副詞「いかが」に呼応した結び)

◇係り結びが分からない人は、上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。


<文法特記>

■「特殊な謙譲語(謙譲語Ⅱ) or 特殊な丁寧語」(荘重体敬語)

 この章段における会話文中の「人々申す」の「申す:(申します)」は、古典文法の例外的な扱いで、地の文での「申し給ふ」の「申す:謙譲語(申し上げる)」とは違い、「特殊な謙譲語(謙譲語Ⅱ) または、特殊な丁寧語」とされ、丁寧語で分類する場合も、「敬意の対象」である「読者」や「聞き手」に対し敬意を表し高める「侍り(はべり)」や「候ふ」とはニュアンスが違い、「敬意の主体」側の「かしこまり」の気持ちが強い特殊な丁寧語。
 主に会話文や手紙文、古今集など勅撰和歌集の詞書(天皇が読者であるため)などで用いられるが、「吉田と申す馬乗り」(徒然草第186段)などのように地の文で用いられることもある。

 謙譲語Ⅱとする「ベネッセ全訳古語辞典 改訂版」によると、『話し手(中納言隆家)が、自分の側の人々の「言う」動作を低めて、聞き手(中宮)にかしこまりの気持ちを表す』とあり、自己卑下の敬語。
 (なお、ベネッセ系の古語辞典が丁寧語ではなく謙譲語Ⅱを採用しているのは、「申し侍り」のような例の場合に、通常の形ではない「丁寧語+丁寧語」となってしまうため。)

 話し手が場を意識した重々しい格式ばった表現でもあるので、荘重体敬語(そうちょうたいけいご)もしくは格式語とも言う。

 また、「人々申す」の「申す」を単に謙譲語とするのは、「私に(隆家に)」人々が「申す」ことになり、「私」では敬うべき客体にはならず、「敬うべき客体が存在しない時に荘重体敬語と見る」と、「古文解釈の方法 関谷浩 駿台文庫」の中では述べられている。
 他に「参る、まかる:(参ります)」、「つかまつる:(いたします)」などに、この用法ある。

 ブログ収録作品では、「徒然草 高名の木登り」「徒然草 丹波に出雲といふ所あり」などの会話文、「飽かなくにまだきも月のかくるるか~」(古今集・伊勢物語・在原業平)、「風吹けば沖つ白波たつた山~」(古今集・伊勢物語・よみ人しらず)などの詞書や左注に同様の用法が見られる。

 荘重体敬語は、学校では素通りしたり、単に謙譲語としている場合もあるかも知れませんが、あなたに指導者がいるのなら、その文法・解釈に従って下さい。


■「中納言参り給ひて 言う 敬語」 
こんな感じの検索ワードを打っている訪問者が多いので、一応、書いておきます。

「のたまふ(宣ふ)」 :「言う」の尊敬語 :おっしゃる
「申す(まうす)」 :「言う」の謙譲語 :申し上げる
「聞こゆ(きこゆ)」 :「言う」の謙譲語 :申し上げる
※「ゆ」は、上代(奈良時代以前)の自発の助動詞「自然と~する」
  「聞こゆ」=敬う人に自然と言葉が聞こえるようにする→申し上げる

「中納言参り給ひて」では用いられていないが、その他「言う」の主な敬語
尊敬語:「仰す(おほす)」、「仰せらる(おほせらる)」、「宣はす(のたまはす)」
謙譲語:「聞こえさす」、「奏す(そうす)」、「啓す(けいす)」


<枕草子の文学ジャンル・内容分類>

「枕草子」(平安時代中期)の文学ジャンル=「随筆」(日本最古の随筆)。
「方丈記」(鎌倉時代初期)、「徒然草」(鎌倉時代末期)とともに日本三大随筆のひとつ。
「をかし」の文学(枕草子) ⇔ 「あはれ」の文学(源氏物語)

枕草子の内容は、大きく分類すると3つの章段から構成されている。

「類聚的章段」 :類聚(るいじゅ・るいじゅう)=同じ種類の事柄を集めること。
「随想的章段」 :四季折々の自然や人事などを観察。
「日記的章段」 :中宮定子周辺の宮廷生活の様子を回想。「回想的章段」ともいう。

類聚的章段は、「ものづくし」または「ものはづくし」ともいわれ、さらに「もの型」の章段と「は型」の章段に分類できる。

「もの型」の章段 :「うつくしきもの」、「すさまじきもの」、「にくきもの」など。
「は型」の章段 :「木の花は」、「鳥は」、「虫は」など。

「随想的章段」 :「春はあけぼの」、「九月ばかり」など。
※「春はあけぼの」は、趣のあるものを集めた類聚的章段とも言える。

「日記的章段」 :「中納言参りたまひて」、「雪のいと高う降りたるを」など。


予想テスト問題などは、気分が乗ったら、いずれ追記します。


<このブログに収録済みの品詞分解作品>

 品詞分解:ブログ収録作品一覧


<古文の学習書と古語辞典>

 古文を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
 《⇒古文学習書の記事へ》 

 《⇒品詞分解付き対訳書の記事へ》 

 《⇒古語辞典の記事へ》
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◇関連記事 (前後の7記事を表示)
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