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古今集・伊勢 風吹けば沖つ白波たつた山 品詞分解と訳

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 今回は、「古今和歌集」と「伊勢物語 筒井筒」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。

◇「筒井筒」のこの他の和歌は、「リンク(筒井つの~)」「リンク(君があたり~)」からどうぞ。

◇筒井筒(全文)の品詞分解・訳・解説は、「こちらのリンク筒井筒(全文)」からどうぞ。


古今集・巻18・雑歌下・994 :よみ人しらず & 伊勢物語 第23段 「筒井筒」(第三首目)

題しらず


風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ


<平仮名> (歴史的仮名遣い)

かぜふけば おきつしらなみ たつたやま よはにやきみが ひとりこゆらむ


・古今集 左注
 
ある人、この歌は、むかし大和の国なりける人の女に、ある人、すみわたりけり。この女、親もなくなりて、家もわるくなり行くあひだに、この男、河内の国に人をあひ知りて通ひつつ、かれやうにのみなり行きけり。さりけれども、つらげなるけしきも見えで、河内へ行くごとに男の心のごとくにしつつ、いだしやりければ、あやしと思ひて、もしなき間に、異心もやあると疑ひて、月のおもしろかりける夜、河内へ行くまねにて、前栽の中に隠れて見ければ、夜ふくるまで、琴をかき鳴らしつつうち嘆きて、この歌をよみて寝にければ、これを聞きて、それより、また外へもまからずなりにけり、となむいひ伝へたる

(ある人が、この歌は、昔、大和の国に住んでいた人の娘に、ある男がずっと通い続けていた。この女は、親も亡くなって、家の暮らしも悪くなって行くうちに、この男は、河内の国に知り合う人ができて通い通いして、縁が切れるばかりになっていった。そうではあったけれども、女はつらそうな様子も見えないで、男が河内へ行くたびに、男の意のままに送り出してやったので、男は不審に思って、もしや自分のいない間に、浮気でもしているのかと疑って、月の明るく照っている夜、河内に行くふりをして、庭の植え込みの中に隠れて見たところ、夜が更けるまで琴をかき鳴らしながらため息をついて、この歌を詠んで寝てしまったので、この歌を聞いて、それからは、再び他の所へは参らなくなってしまったといい伝えている歌)


<現代語訳>

風が吹くと沖の白波が立つ、その「たつ」を名に持つ竜田山を、この夜中にあなたは一人寂しく越えているのでしょうか。


<関連>

この歌は、大和物語149段にも収められている。

古今集・伊勢物語・大和物語、それぞれ少しずつ内容は違うが要旨は同じ。
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<品詞分解・語句文法解説>

風 :名詞

吹け :動詞カ行四段活用「吹く」の已然形

ば :接続助詞 

沖 :名詞

つ :上代(奈良時代以前)の格助詞 ~の。

白波・白浪(しらなみ) :名詞
※後漢書に白波賊(はくはぞく)の記述があることに由来し、「白波」を盗賊とする説もある。
歌舞伎に「知らざぁ言って聞かせやしょう」で有名な、五人の盗賊が登場する「白浪五人男」がありますね。

たつた山(竜田山・立田山) :歌枕 奈良県生駒郡にあり、大和と河内の間の要路で険しい山。

夜半(よは) :名詞 夜。夜中。

に :格助詞 ~に。
※断定の助動詞「なり」の連用形「に」(~である。)ではありません。
「にや」の「に」が断定の助動詞になる例は、「冬ながら~」の記事を参照のこと。

や :疑問の係助詞

君 :代名詞

が :格助詞

ひとり :名詞 
※副詞とする説もある。

越ゆ :動詞ヤ行下二段活用「越ゆ」の終止形 山などを通って向こうへ行く。

らむ :現在推量の助動詞「らむ」の連体形 (今頃)~しているだろう。

※助動詞「らむ」などについては、下にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。

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<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<和歌の基礎知識>

◇和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◇和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)・係り結び>

・序詞 :第二句までが、「たつ」を導く序詞

※「風吹けば沖つ白波」は、掛詞による序詞ですが、「たつ」を導く由来は、奈良県生駒郡にある竜田神社が「風の神」であるからだと、「山本古文読解講義の実況中継(上) 山本康裕」に書いてあります。

・掛詞 :「たつ」が、「立つ」と「(竜田山の)竜」の掛詞

・歌枕 :たつた山(竜田山・立田山)

・係り結び :「や」→「らむ」

※和歌の「修辞法」が分からない人は、上にリンクをつけてある「修辞法の基礎知識」を、「係り結び」が分からない人は、「文法・用語の基礎知識」を読んでね。

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<おまけ:軽く品詞分解> 「まからずなりにけり」

この歌の左注、「まからずなりにけり」の品詞分解が分からない人もいるようなので。
ちなみに、伊勢物語や大和物語では「いかずなりにけり」ですね。

まから :動詞ラ行四段活用「罷る(まかる)」の未然形 参る。参ります。

ず :打消の助動詞「ず」の連用形

なり :動詞ラ行四段活用「なり」の連用形

に :完了の助動詞「ぬ」の連用形

けり :過去の助動詞「けり」の終止形

※「にき(過去)」、「にけり(過去)」、「にたり(存続)」の「に」は完了の助動詞。
「に」の識別の重要な形なので、覚えておきましょうね。

「まからずなりにけり」の訳は、「参らなくなってしまった」、または、敬語の意味を弱めて「行かなくなってしまった」。

※この「まかる」は、古典文法の例外的な扱いで、「特殊な謙譲語(謙譲語Ⅱ) or 特殊な丁寧語」(荘重体敬語)。
作者が勅撰和歌集である古今集の読者(天皇)に、かしこまりの気持ちを表している。

「特殊な謙譲語(謙譲語Ⅱ) or 特殊な丁寧語」(荘重体敬語)については、 「音便」・「敬語」の基礎知識の記事を参照して下さい。


<私の一言>

昔も今も、浮気好きの男は特に、自分の女の浮気は許さないんですよねぇ(笑)

この歌は、左注があまりにも長いので、面倒で取り上げたくなかったのですが、ラインナップ上、このブログには必要不可欠な和歌なので頑張ってみました。


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<古文や和歌の学習書と古語辞典>

古文や和歌を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
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