HOME > 古今和歌集 > 古今集・伊勢 飽かなくにまだきも月のかくるるか 品詞分解と訳

古今集・伊勢 飽かなくにまだきも月のかくるるか 品詞分解と訳

Sponsored Links
 今回は、「古今和歌集」と「伊勢物語 渚の院」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。

◇「渚の院」第六首目(返歌)「おしなべて~」は、「こちらのリンク(おしなべて~)」からどうぞ。

◇「渚の院」のこの他の和歌は、「リンク(世の中に~)」「リンク(狩り暮らし~)」からどうぞ。


古今集・巻17・雑歌上・884 業平朝臣(在原業平) & 伊勢物語 第82段 「渚の院」(第五首目)


古今集 詞書

惟喬親王(これたかのみこ)の狩しけるともにまかりて、宿りにかへりて、よひと夜さけをのみ、物語をしけるに、十一日の月も隠れなむとしける折に、みこゑひてうちへいりなんとしければよみ侍りける

(惟喬親王の狩りの供として参りまして、離宮に戻り、夜通し酒を飲み、世間話をしているうちに、十一日の月が隠れようとしているときに、親王も酔って寝所へ入って行こうとしていたので詠みました歌。)


飽かなくにまだきも月のかくるるか山の端逃げて入れずもあらなむ


<平仮名> (歴史的仮名遣い)

あかなくに まだきもつきの かくるるか やまのはにげて いれずもあらなむ


<現代語訳>

まだ眺め足りないのに、もう月が隠れてしまうのか。月の入る山の端よ、逃げて行って月を入れないでおくれ。


<作者>

在原業平(ありわらのなりひら)
825年~880年。六歌仙、三十六歌仙の一人。平城(へいぜい)天皇の皇子である阿保(あぼ)親王の第五子、母は桓武天皇の皇女である伊都(いと)内親王。在原の姓を賜って皇族の身分を離れ臣籍に下る。在原行平の異母弟。容姿端麗、奔放でおおらかな性格であったといわれており、「伊勢物語」の主人公「昔男」のモデル。また、「源氏物語」の主人公「光源氏」のモデルとする説も一部にはある。蔵人・右馬頭などを経て蔵人頭・右近権中将・美濃権守に至る、従四位上。在五中将(在原家の五男の意味)、在中将と呼ばれた。朝臣(あそん)は、五位以上の人の姓名につける敬称。


<語句文法解説> 作者・詞書

朝臣(あそん) :五位以上の人の姓名につける敬称。在原業平は、従四位上。

まかり :動詞ラ行四段活用「罷る(まかる)」の連用形 参ります。
     
よひと夜(夜一夜) :副詞 一晩中。夜通し。

「隠れなむ」の「なむ」 :強意の助動詞「ぬ」の未然形+意志の助動詞「む」の終止形 ~てしまおう。
※完了の助動詞「つ」「ぬ」+推量の助動詞「む」「べし」「らむ」など=完了→強意(確述)を表す。

ゑひ :動詞ハ行四段活用「酔ふ(ゑふ)」の連用形 酔う。

※「まかり」は、古典文法の例外的な扱いで、「特殊な謙譲語(謙譲語Ⅱ) or 特殊な丁寧語」(荘重体敬語)。
作者が勅撰和歌集である古今集の読者(天皇)に、かしこまりの気持ちを表している。
「特殊な謙譲語(謙譲語Ⅱ) or 特殊な丁寧語」(荘重体敬語)については、 「音便」・「敬語」の基礎知識の記事を参照して下さい。
Sponsored Links
<品詞分解・語句文法解説> 歌

飽か(あか) :動詞カ行四段活用「飽く(あく)」の未然形

なくに :「な」(打消の助動詞「ず」の古い未然形)+「く」(準体助詞or接尾語)+「に」(助詞) 
     ※(「に」は、格助詞説、接続助詞説、終助詞説、間投助詞説など諸説ある。) ~ないのに。
     「飽かなくに」 まだ満足していないのに。

※この他に、「なくに」を使った和歌としては、「陸奥のしのぶもぢずり~」「枕とて草ひき結ぶ~」

まだき :副詞 もう。早くも。

も :係助詞

月 :名詞

の :格助詞

かくるる(隠るる) :動詞ラ行下二段活用「隠る(かくる)」の連体形

か :終助詞  ※「も~か」詠嘆の慣用表現。

山 :名詞

の :格助詞

端(は) :名詞
※山の端(やまのは) :山が空と接する山の方の部分。(空の方の部分は山際)

逃げ :動詞ガ行下二段活用「逃ぐ(にぐ)」の連用形

て :接続助詞

入れ(いれ) :動詞ラ行下二段活用「入る(いる)」の未然形 入れる。
※入る(いる) ①四段・自動詞の意味「はいる」 ②下二段・他動詞の意味「いれる」

ず :打消の助動詞「ず」の連用形

も :係助詞

あら :動詞ラ行変格活用「あり」の未然形

なむ :誂えの終助詞  ~てほしい。
※誂え(あつらえ)=他者への願望

Sponsored Links


<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<和歌の基礎知識>

◎和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◎和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)>

・句切れ :三句切れ

・頭韻(とういん)=句の頭の音が第五句を除いて「ア段音」(あ・ま・か・や・○)


<和歌索引>

◆ブログ内の和歌を探す時は、カテゴリーではなく下に示す各一覧を利用してね。

和歌:ブログ収録・歌別一覧
和歌:ブログ収録・作者別一覧
万葉集:ブログ収録和歌一覧
古今集:ブログ収録和歌一覧
新古今集:ブログ収録和歌一覧
小倉百人一首:歌番号順一覧
伊勢物語:ブログ収録和歌一覧
ヨルタモリ:日本古典文学講座:百人一首一覧


<古文や和歌の学習書と古語辞典>

古文や和歌を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
《古文・和歌の学習書の記事へ⇒》

《品詞分解付き対訳書の記事へ⇒》

《古語辞典の記事へ⇒》
Sponsored Links
◇関連記事 (前後の7記事を表示)
 その他の記事は、右サイドメニューの「カテゴリ」(和歌などは索引)からどうぞ。
 

Comment (コメント)

 (任意) 未入力時 = よみ人しらず
 (任意) 入力時もコメント欄には非表示
 (必須) 管理人承認後に表示
Private

Categories (カテゴリ)
Search This Blog (ブログ内検索)
Featured Posts (特集・古典の基礎知識)
◆ 古典を得意科目にする記事
My Recommended Books (おすすめ書籍)
◆ 辞書と学習書の記事
Popular Posts (人気記事)
All Posts (すべての記事)
This and That (あれこれ)
  • ブログ記事に誤字や記述間違い等がある場合は、コメント欄から教えてください。
  • このブログのリンクはご自由にどうぞ。
    その際に連絡の必要はありません。
  • 古典作品の解説や和歌の鑑賞文などを目的とした中学生の読者さんもいるようですね。

    このブログの古典文法などは、詳しい文法的説明を求める高校生以上の読者を想定して書いています。一般の中学生には必要のない知識なので、わからなくても気にしないでね。
About This Blog (このブログについて)

んば

Author:んば
Since May 9,2014


くらすらん
暮らす欄くらすらむClass Run

この絵は私のお気に入りで
アンリ・ルソー『眠るジプシーの女』