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おすすめ古語辞典

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 今回は、中学生・高校生・大人(社会人)向けの古語辞典(下記14冊)について紹介します。なお、中学生用の古語辞典は中段に記載しています。

「ベネッセ全訳古語辞典 改訂版」 
「小学館全文全訳古語辞典」
「旺文社全訳古語辞典」
「三省堂全訳読解古語辞典」
「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典」 
「旺文社全訳学習古語辞典」
「大修館新全訳古語辞典」
「旺文社古語辞典」 
「ベネッセ古語辞典」
「三省堂例解古語辞典」
「講談社古語辞典」
「大修館古語林」
「明治書院最新詳解古語辞典」
「岩波古語辞典」

 古文は日本語ですが、古文の学習は外国語学習のような側面もあり、「英和辞典」の中でも書きましたが、語学学習において経済面と本棚のスペースが許すならば、複数の辞書を常備するべきだと思っています。

 辞書には、それぞれに捨て難い特徴があり、研究者によって様々な学説の違いもある。それに加えて辞書にだって間違いはあります。「1冊の辞書を信用し過ぎるな」です。

 現在の古語辞典の主流は全訳古語辞典ですが、全訳古語辞典と旧来の古語辞典との違いは、例文に現代語の全訳が収録されているかどうかです。(旧来の古語辞典は単語の意味のみ収録で例文の訳なし、もしくは例文の一部分のみ訳を収録。)

 ◇このページの紹介書籍にはAmazonへのリンクを付けてありますので参考にしてください。


<高校生・大人用の全訳古語辞典>
 
「ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 中村幸弘」(収録項目23,000)
 
 古語辞典を選ぶにあたって「古語辞典 おすすめ」でネット検索すると、「小学館全文全訳古語辞典」をすすめる記事も見かけますが、全訳系の古語辞典では「ベネッセ全訳古語辞典 改訂版」の方が断然まさります。

 この古語辞典の優れた点は、
①語法・品詞識別情報が詳しく記載されいる。
②重要語以上に対して適切な基本義が示されている。
③古文常識や読解ポイント、古語キーワードなどの収録コラムが非常に充実している。
④「スタートライン企画」や「ステップアップ企画」で古文学習のポイントが解説されている。
⑤小倉百人一首の品詞分解が収載されている。
⑥文法用語が見出し語として収録され、詳しく解説されている。
⑦全体的な見やすさ。
などです。

 また、「ベネッセ全訳古語辞典改訂版」では「旧版」と比較した場合に、重要な敬語において入門者が混同しがちな「敬意の主体」と「敬意の対象」(誰から誰に対して敬意を払っているのか)が例文の隣に赤字で追加記載されており、より分かりやすくなっている点や、品詞識別情報が表形式になって見やすくなっている点、さらに助動詞「む」の語法をはじめとして、一部追加記述がなされている点などにおいても優れています。

 ただし、旧版にあった下欄記事の「現代語に生きる古語の語源」が採用されていないこと、巻末の和歌俳句索引が見出し語だけになり、例文採用の和歌俳句が索引から除外されたのは残念。

 ちなみに「ベネッセ全訳古語辞典改訂版」と「ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 携帯版」は大きさ(92%縮刷)と価格が違うだけで内容は同じです。
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「小学館全文全訳古語辞典 北原保推」(収録語25,000)

 「小学館全文全訳古語辞典」は語法情報が少なく、品詞識別情報のコラムも1ページを割いているのに情報量が不十分であり、識別時の結論も断定し過ぎているのが気になる。

 この古語辞典の最大の売りは全文全訳と看板を掲げているように、全文用例として教科書に載っているような主要作品の品詞分解および訳が収載されている点で、大いに学習の助けになることは確かだが、これも分散収載されているのが残念であり、巻末付録の「朗読で味わう日本の古典」と融合すべきだったのではないか。

 和歌についても作者別の索引が多少ある程度で探しにくく、全文用例を採用していない実質的な旧版である「全訳古語例解辞典(小学館)」(収録語25,000)には存在する初句の索引がないのが残念。
 この辞書は全文全訳という策に溺れてユーザーフレンドリーな視点を疎かにしている印象。

 ただし、あくまでも「ベネッセ全訳古語辞典」と比較してのことであって、その他の全訳系古語辞典と比較すると、「小学館全文全訳古語辞典」が実用性のある辞書であることは否定しません。
 何だかんだ言っても、主要作品の品詞分解と訳を収載した全文用例は便利で、このブログでも学校の定期試験前になると、試験範囲と思われる作品の品詞分解や訳を求めるアクセスが急増します(笑)

 ですから、品詞分解や訳を目当てに教科書ガイドの購入を検討しているのならば、「小学館全文全訳古語辞典」で十分に間に合う場合も多いと思われます。
 さらに、この辞書の付録部には、簡易の現古辞典(英語ならば和英辞典のイメージ)なども付属しています。

 なお、この辞書の全文用例の収録作品については、「全文全訳古語辞典(小学館)品詞分解収録作品」の記事に記載しましたので参考にしてください。


◆採用文法における「ベネッセ全訳古語辞典」「小学館全文全訳古語辞典」の違い

 古文は、学者によって文法解釈に多少の違いがありますから、どの学者が辞書を編纂したかで文法の記述内容が違います。
 「ベネッセ全訳古語辞典」と「小学館全文全訳古語辞典」の採用文法における違いは、「ベネッセ全訳古語辞典」は形容詞のク活用・シク活用の未然形「く」・「しく」や打消の助動詞「ず」の未然形「ず」を採用しているが、「小学館全文全訳古語辞典」は採用していない。
※この説の違いについては、「用言の活用」の記事の下段「形容詞の活用表」のところを参照してください。

 また、特殊な敬語で荘重体敬語とも呼ばれる「まかる」「申す」「つかまつる」などを、「ベネッセ全訳古語辞典」は謙譲語Ⅱとし、「小学館全文全訳古語辞典」は丁寧語としている。
 ちなみに、特殊な謙譲語である下二段の補助動詞「たまふ」も、「ベネッセ全訳古語辞典」は謙譲語Ⅱで表記。
※荘重体敬語については、 「敬語」の記事の下段で紹介しています。

 さらに、完了の助動詞「り」は一般に、四段活用動詞の場合は已然形に接続するとしているが、「小学館全文全訳古語辞典」は命令形接続としている点(命令形接続の方が説としては新しい)などである。

 アマゾンの「小学館全文全訳古語辞典」のカスタマーレビューに「明らかに間違え過ぎです。なんで動詞の後に完了の助動詞があるのに、動詞が命令形になっているのでしょうか。」とのコメントがありますが、間違っているワケではないんですよね。

 おそらく「このReviewer」の学校のテキストの表記(已然形接続)とは違ったのでしょうが、古典文法には説の違いもあることを「この人」は勉強しなかったのでしょうね。

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◆全訳古語辞典の第3の候補としては、「旺文社全訳古語辞典 宮腰賢」(収録語22,500)です。
 私が、この全訳古語辞典の最も優れていると思う点は、用例の訳が逐語訳(直訳)であることです。もちろん、意訳のほうが意味が分かりやすいのですが、試験の答案で求められるのは文法に忠実な逐語訳(直訳)です。高校生が試験答案のための現代語訳を必要としたり、試験対策として訳出の練習をするときに、大いに参考となるでしょう。また、和歌の収録数が多いことも魅力です。


◆有名な辞書ですが、おすすめしない全訳古語辞典があります。それは「三省堂全訳読解古語辞典 鈴木一雄」 (収録項目21,000)。
 この古語辞典は、なぜかブランド名だけは通っていますが、採用例文が少ない上に、その例文の質が悪い。さらに解説も分かりにくいなど、どこがいいのかサッパリ分からない。
 私が所有している理由は、このブログで批評するためです。持ってもいないのに批判するは気が引けますからね(笑)


「大修館新全訳古語辞典」(収録語17,600)
 2016年末に「大修館 全訳古語辞典」の実質的な改訂版として発売された全訳古語辞典です。
収録語数は上で紹介した代表的な全訳古語辞典と下で紹介している入門者用の全訳古語辞典の中間程度で、文法事項なども高校生の古文学習に必要な要素は記載されています。
特に、「ベネッセ全訳古語辞典」のように主な敬語には敬意の方向が示されているのは役に立つでしょうし、百人一首などの和歌の訳なども中ほどにまとめて収録されています。
 パッと見はまあまあ良さそうな辞書なのですが、例えば助動詞「む」「べし」の意味識別は、あくまでも文脈によって判断すべきものであるのに、文末用法で主語が「一人称なら意志・二人称なら適当(勧誘)・三人称なら推量」などと法則性を好みたがる高校生につけ込む安易な受験参考書のような記述をしている所が多々ある点が気になる。


<中学生・古文の苦手な高校生用の全訳古語辞典>

中学生に特化した古語辞典はよい辞書がありませんから、高校生の入門者用の古語辞典で代用するのがよいでしょう。

「旺文社 全訳学習古語辞典 宮腰賢」(収録語12,000)
 「旺文社全訳古語辞典」の収録語数や文法解説を抑えた姉妹版で、この辞書の良い点は、巻末に主要50作品の品詞分解と訳が収録されている点です。また、この50作品や用例の訳は本家と同様に意訳ではなく逐語訳(直訳)ですから、解釈の勉強をするのにも適しています。ただし、文法解説は簡素ですから、高校生用というよりは中学生が古語の意味を調べたり、巻末の主要作品を使って古文の作品に親しんだり音読したりするときに使うのがよいでしょう。

「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典 中村幸弘」(収録語12,000)
 「ベネッセ全訳古語辞典」の収録語数を抑えた姉妹版で、重要語(853語)を大見出しで下段に別枠表示し、図表を多用した分かりやすい入門用の全訳古語辞典です。また、収録数はそれほど多くはありませんが和歌の解説が丁寧なところも評価できますし、古典常識などのコラムが充実しているので読み物としても面白いでしょう。 文法解説も「ベネッセ全訳古語辞典」ほどではありませんが十分に記載されています。
 高校一年生や古文が苦手な高校生などの古文学習導入時、あるいは大学受験生が詳しい単語集の代わりとして使用する場合などに適しています。

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<非全訳(旧来)の古語辞典>

 ここから紹介するのは全訳ではないので、高校生が1冊目に持つ学習用の古語辞典としては不向きですが、2冊目以降の古語辞典を検討している高校生や大学生・社会人には有用な辞書です。

「旺文社古語辞典 第10版 松村明」(収録語43,500)
 私がメインで使っている「ベネッセ全訳古語辞典」では足りない見出し語や語義を満たしてくれるし、訳語の質も良い。和歌の見出し採用も非常に多いのが私のお気に入り。
 また、古文は学者によって主張している文法や解釈が異なることが多々あるし、基準としている底本の違いによる和歌集での歌番号の違いや枕草子などでは作品の章段数の違いもあります。そういうことを知る上でも編者の違う辞書を持つ意義がある。

追記:「旺文社古語辞典 第10版増補版 松村明」は、2015/10/13発売です。今回の改定では百人一首などの和歌や敬語などの解説を充実させたようです。


「ベネッセ古語辞典 中村幸弘」(収録語47,000)
 「ベネッセ全訳古語辞典」と編者もほぼ同じなので、その上級版のイメージ。しかし、和歌の解釈などを見ると真逆の解釈をしているものも見受けられる。和歌の担当者が違うのでしょうね(笑)
 別冊の「名歌名句鑑賞辞典(収録項目1400)」は非常に便利だが、辞書本体の収録語や語義には中型古語辞典のわりに不足を感じることがあるので、コーパスが良くないのかも知れない。

 「ベネッセ全訳古語辞典」を補完する中型古語辞典として「旺文社古語辞典」と「ベネッセ古語辞典」を比較した場合は、出版社の違う「旺文社古語辞典」の方がむしろ相性が良い印象。
全訳古語辞典を所有していて、2冊目の中型古語辞典を検討しているのならば、「旺文社古語辞典」をおすすめします。


「三省堂例解古語辞典 小松英雄」(収録語20,000)
 絶版だが、独自の解釈・語義と採用例文、主要な助動詞や助詞に対する豊富な用例と詳細な解説欄、古語キーワードを取り上げた要説欄、さらに丁寧な百人一首の解説など巻末の付録部分も読み応えがある。
 また、この辞書の収録語は2万語だが、上で示した2冊の中型古語辞典では見つけられなかった見出し語・訳語・例文が、この辞書には収録されている場合が少なからずあり、訳語にも独自性が感じられる。
 なお、この辞書には「三省堂例解古語辞典ポケット版」もあります。


「講談社古語辞典 佐伯梅友」(収録語45,000)
 これも絶版ですが、この辞書は古典の主要11作品に使われている語をほぼ網羅し、見出し語として収録しているのが特徴。(主要11作品は、古事記・万葉集・竹取・伊勢・古今集・蜻蛉・枕草子・源氏・更級・徒然草・奥の細道)
 例えば、枕草子「ふと心劣りとかするものは」の「まのもなし」や、現代語と同じ意味で使われている語の場合ほとんどの古語辞典では見出し語収録されていないが、「川」でも何でも載っているので重宝する。


「古語林 林巨樹 大修館」(収録語数約36.000)
 約1000の最重要語の用例には現代語訳がついていて、売りのひとつが助動詞・助詞を囲み見出しとして解説している点なので、助動詞・助詞に関する豊富な情報が欲しい人ならば、持っていてもよいかも知れない。もうひとつの売りである敬語については、「ベネッセ全訳古語辞典」の方が詳しい。


「最新詳解古語辞典 佐藤定義 明治書院」(収録語20,000)
 ケースを除いた本体の厚さが2.4cm程度の小型古語辞典で携帯性に優れている。小型辞書ではあるが、語義や例文が豊富で、特に語義はここで紹介した古語辞典の中では最も充実しているかもしれない。品詞識別情報や語法解説もあり、百人一首や主要作品の冒頭部分なども現代語訳つきで巻末に収録されている。
 また、この辞書は、たとえば「枕草子 うつくしきもの」に出てくる「遊ばす」や「瑠璃の壺」など、他の辞書では載っていなかったり、曖昧な表現している箇所に、例文付きで訳語や解説を明記してくれていて、枕草子の語彙に強いところが私のお気に入り。


「岩波 古語辞典 補訂版 大野晋」(収録語43,000)
 通常の古語辞典は、用言の場合に終止形を見出し語としているが、この辞書は連用形を見出し語にしている。語源については詳しいが、語の意味や文法解釈に通説とは違う大野晋独自の見解が盛り込まれているので、高校生の学習用には適さない。大学生や古文を楽しむ社会人なら使ってもよいでしょう。


◆最後に、オンライン古語辞典としては、「学研全訳古語辞典 金田一春彦」(収録語26,000)をベースにした「weblio古語辞典」があります。


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 以上、皆さまのお役に立てば幸いです。
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このコメント下さった方。

貴重な情報を有難うございました。

他の方にも参考になるコメントなので、非公開をご希望なのが残念です。

いただいたコメントは大事に取っておきます。

また、いらして下さいね。

はじめまして。
高校生の子供に古語辞典を買ってほしいと言われ、探していたら、こちらのサイトに辿り着きました。
本屋に行く時間がないので、ネットでの購入を考えていたのですが、中身を見れない事もあり、どうやって探そうかと思っていたので、こちらには各辞典の内容の説明が詳しく書いてあり、とても参考になりました。
あまり、勉強が得意ではない子供なので、「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典」にしました。
アマゾンのレビューでも古文入門の子供には最適なようで、我が子にはピッタリだと思います。
届くのが楽しみです。
ありがとうございました!

Re:

よしさん、こんにちは。

お役に立てたようでうれしいです。
記事でも書きましたが、古文入門時の古語辞典として「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典」は、とても良い辞書だと思います。
私自身も、高校生が習うような和歌の記事を書く時には、今でも必ずこの古語辞典の解説を参照しています。
古文が、お子さんの得意科目になるといいですね。
是非、またお越し下さい。
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