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古今集 秋来ぬと目にはさやかに見えねども 品詞分解と訳

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 今回は、「古今和歌集」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。


古今集・巻4・秋歌上・169 藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆき・あそん)

秋立つ日よめる
(立秋の日に詠んだ歌)


秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる


<平仮名>

あききぬと めにはさやかに みえねども かぜのおとにぞ おどろかれぬる

(もちろん、歴史的仮名遣い・現代仮名遣いともに同じ。分らない人は下段のリンクからルールを勉強してね。)


<現代語訳>

(立秋をむかえても)秋が来たと目にははっきり見えないけれど、風の音に(秋の訪れを)気づかされたことだ。

(立秋になっても見た目にはまだ夏で、秋の気配を到底感じ取ることはできませんが、それまでとは、かすかに違う風の音の変化から、秋の象徴のひとつである秋風を耳で感じ取った、視覚と聴覚を対比させた繊細な感覚の歌ですね。この歌は、陰暦7月1日頃、現在の太陽暦だと8月7日頃の立秋に詠んだもので、陰暦の暦の上では7月から秋ですが、暦と実際に感じる気候にはズレがありますよね。あなたは現在の立秋(8月7日頃)に秋を感じ取ることができますか?)


<作者>

藤原敏行(ふじわらのとしゆき)
生年不詳~901 or 907年。平安前期の歌人。藤原富士麿の子。右兵衛督従四位上。宇多天皇時代の宮廷歌人で、能書家としても知られる。三十六歌仙の一人。朝臣(あそん)は、五位以上の人の姓名につける敬称。


<語句文法解説> 作者・詞書

朝臣(あそん) :五位以上の人の姓名につける敬称。

秋立つ日 :立秋の日。 陰暦7月1日前後。太陽暦では8月7日前後。暦の上で秋が始まる日。

よめ :動詞マ行四段活用「詠む」の已然形

る :完了の助動詞「り」の連体形
※準体法なので、この場合は「歌」を補って解釈する。

※準体法、「る」の識別については、下にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。
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<品詞分解・語句文法解説> 歌

秋 :名詞

来(き) :動詞カ行変格活用「来(く)」の連用形

ぬ :完了の助動詞「ぬ」の終止形
※「ぬ」ではありませんよ。「来ぬ」の識別については下段の文法特記を参照のこと。

と :引用の格助詞
◇この「と」は、引用文=「会話文・心内文(心の中で考えたこと)」に付く格助詞。

目 :名詞

に :格助詞

は :係助詞

さやかに :形容動詞ナリ活用「さやかなり」の連用形 はっきりとしている。明瞭だ。

見え :動詞ヤ行下二段活用「見ゆ」の未然形 見える。

ね :打消の助動詞「ず」の已然形 ~ない。

ども :逆接確定条件の接続助詞(已然形接続) ~けれども。

風 :名詞
 
の :格助詞

音 :名詞

に :格助詞

ぞ :係助詞

おどろか :動詞カ行四段活用「驚く」の未然形 はっと気がつく。気づく。
※「目が覚める」という意味もありますね。現代語の「ビックリする」という意味で使われることはまれ。

れ :自発の助動詞「る」の連用形 (自然と)~れる。~しないではいられない。

ぬる :完了の助動詞「ぬ」の連体形

※「自発」の助動詞「る」、「れ」の識別などについては、下にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。

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<文法特記>

◇「来ぬ」の識別 
①「来(き)」カ変・連用形+「ぬ」完了の助動詞「ぬ」の終止形→(来た)
②「来(こ)」カ変・未然形+「ぬ」打消の助動詞「ず」の連体形→(来ない)
※この歌の場合は歌意から判断して当然・・・①の「ぬ」ですね。
カ変など用言の活用、助動詞の接続と活用をしっかり覚えましょう。

◇「秋来ぬ」の後が引用を表す格助詞「と」だから、引用の格助詞「と」の前の活用語は終止形と安易に覚えるのは危険ですよ。引用の格助詞「と」の前では引用文が終止しますから、この歌のように終止形である場合が多いのは確かですが、それ以外に、命令形、「係り結び」による連体形・已然形、詠嘆・余情を表す「連体形止め」、「連用形中止法」など、引用の格助詞「と」の前の活用語には様々な活用形が考えられますから、必ず文意を踏まえて判断するようにしましょう。

※たま~に、「ぬ」だと思っている人もいますが、文法的にあり得ません。
「卯(う)の花の♪ 匂う垣根に♪ 時鳥(ほととぎす)♪ 早(はや)も来(き)鳴きて♪ 忍音(しのびね)もらす♪ 夏は来(き)ぬ♪」 《夏は来ぬ♪》(YouTube)


<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。

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<和歌の基礎知識>

◎和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◎和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)・係り結び>

・句切れを含め、修辞は特にありません。

係り結び :「ぞ」→「ぬる」

※「句切れ」が分からない人は、上にリンクをつけてある「修辞法の基礎知識」を、「係り結び」が分からない人は、「文法・用語の基礎知識」を読んでね。


<私の一言>

この歌の「句切れ」を検索している人たちが非常に多いのですが、この歌は「句切れなし」ですよ。歌の途中に意味上の切れ目(文が終止している所)がないでしょ。
特に、この人たちの約2割が「区切れ」と誤字で検索していますから正しく覚えましょうね。

この歌を見た瞬間に「句切れなし」と判断できない人は、「和歌の句切れ」を理解できていない証拠ですね。

注意点は、「和歌の句切れ」と「連歌・俳諧・俳句の切れ字による句切れ」を混同しないことです。

この歌の場合、「係り結び」はありますが、修辞法(表現技法)は特にないので、正しく解釈できるかどうかがポイントですね。

たま~に、この歌を「俳句」だと思っている人もいるようで、ビックリさせられることがあります(笑)

また、古今集に入集している藤原敏行の歌はこの歌だけだと思っている人(18首入集)、この歌が「小倉百人一首」に撰集されていると思っている人もいるようです。
藤原敏行の歌で小倉百人一首に撰集されているのは、18番「住の江の~」ですよ。


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<古文や和歌の学習書と古語辞典>

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