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古今集 袖ひちてむすびし水のこほれるを 品詞分解と訳

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 今回は、「古今和歌集」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。


古今集・巻1・春歌上・2 紀貫之(きのつらゆき)

春立ちける日よめる
 (立春の日に詠んだ歌。)


袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ


<平仮名> (歴史的仮名遣い)

そでひちて むすびしみづの こほれるを はるたつけふの かぜやとくらむ

◇この歌の「現代仮名遣い・発音・読み方」(ひらがな)は下記の別サイトからどうぞ。
《⇒現代仮名遣いサイトへ行く》


<現代語訳>

(去年の暑い夏の日に)袖がぬれるような様子で手にすくった水が、(冬の寒さで)凍っていたのを、立春の今日の風が今頃とかしているのだろうか。

中国の五経の一つ「礼記(らいき)」月令の一節「孟春の月、東風氷を解く」(陰暦一月になり、春風が氷を解かす)を踏まえ、水の様子から四季の移り変わりを表現し、春を迎えた喜びを詠んだ歌。


<作者>

紀貫之(きのつらゆき)
870頃~945年頃。平安前期の歌人。三十六歌仙の一人。古今集の撰者の一人で仮名序の執筆者とされている。土佐日記で仮名日記文学を創始。歌風は理知的技巧的で繊細優美。家集は「貫之集」。美濃介・土佐守などを経て従五位上・木工権頭に至る。


<語句文法解説> 詞書

春立ちける日 :立春の日。陰暦では12月後半から1月前半。太陽暦では2月4日頃。暦の上で春が始まる日。

よめ :動詞マ行四段活用「詠む」の已然形

る :完了の助動詞「り」の連体形
※準体法なので、この場合は「歌」を補って解釈する。

※準体法、「る」の識別については、下にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。
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<品詞分解・語句文法解説> 歌

袖 :名詞

ひち :動詞タ行四段活用「ひつ」の連用形(自動詞)。 ぐっしょりぬれる。 
※袖を主語として「袖ぬれて」と解釈する。
「ひつ」下二段(他動詞)もあるため、直訳としては「袖ぬらして」とは解釈しない。(ちょっと不自然な訳になるけどねぇ。)
また、「ひつ」上二段(自動詞)は中古(平安時代)半ば以降に発生(古今集は中古前期成立)。

て :接続助詞

むすび :動詞バ行四段活用「掬ぶ(むすぶ)」の連用形  (水などを)両手ですくう。

し :過去の助動詞「き」の連体形

水 :名詞

の :格助詞

こほれ :動詞ラ行四段活用「こほる」の已然形 凍る。

る :存続の助動詞「り」の連体形
※詞書「よめる」の「る」と同じ準体法。準体格(体言の代用)の格助詞「の」などを補って訳出する。

を :格助詞

春 :名詞

立つ :動詞タ行四段活用「立つ」の連体形

けふ(今日) :名詞

の :格助詞

風 :名詞

や :疑問の係助詞

とく :動詞カ行四段活用「とく」の終止形 固形のものを液状にする。とかす。
※下二段の「とく」=とける。

らむ :現在推量の助動詞「らむ」の連体形 (今ごろ)~ているだろう。

※助動詞「り」、「らむ」などについては、下にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。

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<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<和歌の基礎知識>

◎和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◎和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)・係り結び>

・掛詞 :「むすび」が、「掬び」と「結び」の掛詞

      :「はる」が、「春」と「張る」の掛詞

      :「たつ」が、「立つ」と「裁つ」の掛詞

      :「とく」が、「溶く」と「解く」の掛詞 

・縁語 :「結び」「張る」「裁つ」「解く」が、「袖」の縁語

・係り結び 「や」→「らむ」

◇この歌の「句切れ」を検索している人たちがいるようなので書いておきますが、この歌は「句切れなし」ですよ。歌の途中に意味上の切れ目(文が終止している所)がないでしょ。

※「修辞法」が分からない人は、上にリンクをつけてある「修辞法の基礎知識」を、「係り結び」が分からない人は、「文法・用語の基礎知識」を読んでね。

◇たまに、この歌が小倉百人一首に撰集されていると思っている人たちもいるようですが、紀貫之の歌で小倉百人一首に撰集されているのは、35番「人はいさ~」ですよ。

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<関連>

※「ひつ」下二段(他動詞)の用例

(土佐日記・二月十六日)

       
天雲のはるかなりつる桂川袖をひてても渡りぬるかな 


(大空の雲が遥か遠くにあるように土佐の国から遠かった桂川よ、今はこうして袖をぬらしながらも渡ったことよ。)


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<古文や和歌の学習書と古語辞典>

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