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平家物語 祇園精舎 品詞分解と現代語訳

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 今回は、「平家物語」の冒頭「祇園精舎」の原文・現代語訳(口語訳)・品詞分解(文法的説明)・語句の意味・文法解説・敬語(敬意の方向)・音便・係り結び・対句・比喩・鑑賞・おすすめ書籍などについて紹介します。


「平家物語 祇園精舎」


<原文>

◇全文の「現代仮名遣い・発音・読み方(ひらがな)」は下記の別サイトからどうぞ。
《⇒現代仮名遣いサイトへ行く》

 祇園精舎(ぎをんしやうじや)の鐘の声(こゑ)、諸行無常(しよぎやうむじやう)の響きあり。娑羅双樹(しやらさうじゆ)の花の色、盛者必衰(じやうしやひつすい)の理(ことわり)をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜(よ)の夢のごとし。猛き(たけき)者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵(ちり)に同じ。

 遠く(とほく)異朝(いてう)をとぶらへば、秦の趙高(てうかう)、漢の王莽(わうまう)、梁(りやう)の朱异(しうい)、唐(たう)の祿山(ろくさん)、これらは皆、旧主先皇(きうしゆせんくわう)の政(まつりごと)にも従はず、楽しみを極め(きはめ)、諫め(いさめ)をも思ひ入れず、天下(てんが)の乱れんことを悟ら(さとら)ずして、民間の愁ふる(うれふる)所を知らざつしかば、久しからずして、亡じ(ばうじ)にし者どもなり。

 近く本朝(ほんてう)をうかがふに、承平の将門(しようへいのまさかど)、天慶の純友(てんぎやうのすみとも)、康和の義親(かうわのぎしん)、平治の信頼(へいぢのしんらい)、これらはおごれる心も猛き事も、皆とりどりにこそありしかども、間近く(まぢかく)は、六波羅(ろくはら)の入道前太政大臣平朝臣清盛公(にふだうさきのだいじやうだいじんたひらのあつそんきよもりこう)と申し(まうし)し人のありさま、伝へ承る(つたへうけたまはる)こそ、心も言葉も及ばれね。

 その先祖を尋ぬれ(たづぬれ)ば、桓武(くわんむ)天皇第五の皇子(わうじ)、一品式部卿葛原親王九代(いつぽんしきぶきやうかづらはらしんわうくだい)の後胤(こういん)、讃岐守正盛(さぬきのかみまさもり)が孫(そん)、刑部卿忠盛朝臣(ぎやうぶきやうただもりのあつそん)の嫡男(ちやくなん)なり。かの親王の御子(みこ)、高視(たかみ)の王、無官無位(むくわんむゐ)にして失せ(うせ)給ひ(たまひ)ぬ。その御子(おんこ)、高望(たかもち)の王の時、初めて平(たひら)の姓(しやう)を賜はつ(たまはつ)て、上総介(かづさのすけ)になり給ひしより、たちまちに王氏(わうし)を出で(いで)て人臣(じんしん)に連なる(つらなる)。その子鎮守府(ちんじゆふ)の将軍(しやうぐん)義茂(よしもち)、後(のち)には国香(くにか)と改む。国香より正盛に至るまで六代は、諸国の受領(ずりやう)たりしかども、殿上(てんじやう)の仙籍(せんせき)をばいまだ許されず。

※義茂=良望


<現代語訳>

 祇園精舎の(無常堂の)鐘の音には、諸行無常(=万物は常に、はかなく移り変わって行くものである)という響きがある。(釈迦入滅の時、白色に変わったという)娑羅双樹の花の色は、盛者必衰(=いま盛んな者も必ず衰える)という(この世の)道理を表している。おごり高ぶっている者もその生活が永遠に続くことはなく、(それは)まるで(はかない)春の夜の夢のようなものである。勢いの盛んな者も結局は滅びてしまう、(それは)まったく(はかなく吹き飛ばされる)風の前の塵と同じようなものである。

 遠く外国(の例)を調べてみると、秦朝の趙高、漢朝の王莽、梁朝の朱异、唐朝の祿山、これらの者は皆、もとの主君や先代の皇帝の政治にも従わず、楽しみの限りを尽くし、人の忠告も深く考えることをせず、世の中が乱れるようなことに気づかないで、人民がつらい思いをしていることも知らなかったので、長く続かずに滅亡してしまった者たちである。

 近く我が国(の例)を調べてみると、承平の平将門、天慶の藤原純友、康和の源義親、平治の藤原信頼、これらの人々はおごり高ぶった心も勇ましさも、皆それぞれにあったけれども、最近では、六波羅の入道、前の太政大臣平朝臣清盛公と申し上げた人の(おごりを極めた)有様は、伝え聞き申し上げてみると、心(に想像すること)も言葉(で言い表すこと)も出来ないほどである。

 清盛の先祖をたどってみると、桓武天皇の第五皇子、一品式部卿葛原親王の九代目の子孫、讃岐守正盛の孫であり、刑部卿忠盛朝臣の長男である。その葛原親王の御子の高視王は、無位無官で、お亡くなりになった。その御子、高望王の時に、初めて平の姓をいただいて、上総介(=今の千葉県の国司の次官)におなりなってから、すぐに皇族を離れて臣下の列に加わった。その高望王の子の鎮守府の将軍義茂は、後には国香と改名した。国香から正盛に至るまでの六代は、諸国の国司であったけれども、宮中の殿上の間への昇殿をまだ許されなかった。
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<品詞分解>

◇主要な品詞を色別表示にした見やすい品詞分解を別サイトに作成しました。
《⇒品詞色別表示の品詞分解サイトへ行く》

 ※活用の基本形を、ひらがなで示した。動詞は、品詞名を省略した。
 
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
 祇園精舎【名詞】 の【格助詞】 鐘【名詞】 の【格助詞】 声【名詞】、 諸行無常【名詞】 の【格助詞】 響き【名詞】 あり【ラ行変格活用「あり」の終止形】。 沙羅双樹【名詞】 の【格助詞】 花【名詞】 の【格助詞】 色【名詞】、 盛者必衰【名詞】 の【格助詞】 理【名詞】 を【格助詞】 あらはす【サ行四段活用「あらはす」の終止形】。

おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
おごれ【ラ行四段活用「おごる」の已然形】 る【存続の助動詞「り」の連体形】 人【名詞】 も【係助詞】 久しから【形容詞シク活用「ひさし」の未然形】 ず【打消の助動詞「ず」の終止形】、 ただ【副詞】 春【名詞】 の【格助詞】 夜【名詞】 の【格助詞】 夢【名詞】 の【格助詞】 ごとし【比况の助動詞「ごとし」の終止形】。

猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
猛き【形容詞ク活用「たけし」の連体形】 者【名詞】 も【係助詞】 つひに【副詞】 は【係助詞】 滅び【バ行上二段活用「ほろぶ」の連用形】 ぬ【完了の助動詞「ぬ」の終止形】、 ひとへに【副詞】 風【名詞】 の【格助詞】 前【名詞】 の【格助詞】 塵【名詞】 に【格助詞】 同じ【形容詞シク活用「おなじ」の終止形】。

 遠く異朝をとぶらへば、秦の趙高、漢の王莽、梁の朱异、唐の祿山、
 遠く【形容詞ク活用「とほし」の連用形】 異朝【名詞】 を【格助詞】 とぶらへ【ハ行四段活用「とぶらふ」の已然形】 ば【接続助詞】、 秦【名詞】 の【格助詞】 趙高【名詞】、 漢【名詞】 の【格助詞】 王莽【名詞】、 梁【名詞】 の【格助詞】 周伊【名詞】、 唐【名詞】 の【格助詞】 禄山【名詞】、 

これらは皆、旧主先皇の政にも従はず、楽しみを極め、諫めをも思ひ入れず、
これら【代名詞】 は【係助詞】 皆【名詞】、 旧主【名詞】 先皇【名詞】 の【格助詞】 政【名詞】 に【格助詞】 も【係助詞】 従は【ハ行四段活用「したがふ」の未然形】 ず【打消の助動詞「ず」の連用形】、 楽しみ【名詞】 を【格助詞】 極め【マ行下二段活用「きはむ」の連用形】、 諫め【名詞】 を【格助詞】 も【係助詞】 思ひ入れ【ラ行下二段活用「おもひいる」の未然形】 ず【打消の助動詞「ず」の連用形】、 

天下の乱れんことを悟らずして、
天下【名詞】 の【格助詞】 乱れ【ラ行下二段活用「みだる」の未然形】 ん【婉曲の助動詞「む」の連体形】 こと【名詞】 を【格助詞】 悟ら【ラ行四段活用「さとる」の未然形】 ず【打消の助動詞「ず」の連用形】 して【接続助詞】、 

民間の愁ふる所を知らざつしかば、
民間【名詞】 の【格助詞】 愁ふる【ハ行下二段活用「うれふ」の連体形】 所【名詞】 を【格助詞】 知ら【ラ行四段活用「しる」の未然形】 ざつ【打消の助動詞「ず」の連用形:「ざり」の促音便】 しか【過去の助動詞「き」の已然形】 ば【接続助詞】、

久しからずして、亡じにし者どもなり。
久しから【形容詞シク活用「ひさし」の未然形】 ず【打消の助動詞「ず」の連用形】 して【接続助詞】、 亡じ【サ行変格活用「ばうず」の連用形】 に【完了の助動詞「ぬ」の連用形】 し【過去の助動詞「き」の連体形】 者ども【名詞】 なり【断定の助動詞「なり」の終止形】。

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 近く本朝をうかがふに、承平の将門、天慶の純友、康和の義親、平治の信頼、
 近く【形容詞ク活用「ちかし」の連用形】 本朝【名詞】 を【格助詞】 うかがふ【ハ行四段活用「うかがふ」の連体形】 に【接続助詞】、 承平【名詞】 の【格助詞】 将門【名詞】、 天慶【名詞】 の【格助詞】 純友【名詞】、 康和【名詞】 の【格助詞】 義親【名詞】、 平治【名詞】 の【格助詞】 信頼【名詞】、

これらはおごれる心も猛き事も、皆とりどりにこそありしかども、
これら【代名詞】 は【係助詞】 おごれ【ラ行四段活用「おごる」の已然形】 る【完了の助動詞「り」の連体形】 心【名詞】 も【係助詞】 猛き【形容詞ク活用「たけし」の連体形】 事【名詞】 も【係助詞】、 皆【名詞】 とりどりに【形容動詞ナリ活用「とりどりなり」の連用形】 こそ【係助詞】 あり【ラ行変格活用「あり」の連用形】 しか【過去の助動詞「き」の已然形】 ども【接続助詞】、 

間近くは、六波羅の入道前太政大臣平朝臣清盛公と申しし人のありさま、
間近く【形容詞ク活用「まぢかし」の連用形】 は【係助詞】、 六波羅【名詞】 の【格助詞】 入道【名詞】 前太政大臣【名詞】 平朝臣清盛公【名詞】 と【格助詞】 申し【サ行四段活用「まうす」の連用形:謙譲の本動詞】 し【過去の助動詞「き」の連体形】 人【名詞】 の【格助詞】 ありさま【名詞】、 

伝へ承るこそ、心も言葉も及ばれね。
伝へ承る【ラ行四段活用「つたへうけたまはる」の連体形:謙譲の本動詞】 こそ【係助詞】、 心【名詞】 も【係助詞】 言葉【名詞】 も【係助詞】 及ば【バ行四段活用「およぶ」の未然形】 れ【可能の助動詞「る」の未然形】 ね【打消の助動詞「ず」の已然形】。

 その先祖を尋ぬれば、桓武天皇第五の皇子、一品式部卿葛原親王九代の後胤、讃岐守正盛が孫、刑部卿忠盛朝臣の嫡男なり。
 そ【代名詞】 の【格助詞】 先祖【名詞】 を【格助詞】 尋ぬれ【ナ行下二段活用「たづぬ」の已然形】 ば【接続助詞】、 桓武天皇【名詞】 第五【名詞】 の【格助詞】 皇子【名詞】、 一品式部卿【名詞】 葛原【名詞】 親王【名詞】 九代【名詞】 の【格助詞】 後胤【名詞】、 讃岐守正盛【名詞】 が【格助詞】 孫【名詞】、 刑部卿【名詞】 忠盛朝臣【名詞】 の【格助詞】 嫡男【名詞】 なり【断定の助動詞「なり」の終止形】。

かの親王の御子、高視の王、無官無位にして失せ給ひぬ。
か【代名詞】 の【格助詞】 親王【名詞】 の【格助詞】 御子【名詞】、 高視【名詞】 の【格助詞】 王【名詞】、 無官無位【名詞】 に【断定の助動詞「なり」の連用形】 して【接続助詞】 失せ【サ行下二段活用「うす」の連用形】 給ひ【ハ行四段活用「たまふ」の連用形:尊敬の補助動詞】 ぬ【完了の助動詞「ぬ」の終止形】。

その御子、高望の王の時、初めて平の姓を賜はつて、
そ【代名詞】 の【格助詞】 御子【名詞】、 高望【名詞】 の【格助詞】 王【名詞】 の【格助詞】 時【名詞】、 初めて【副詞】 平【名詞】 の【格助詞】 姓【名詞】 を【格助詞】 賜はつ【ラ行四段活用「たまはる」の連用形:「たまはり」の促音便:謙譲の本動詞】 て【接続助詞】、 

上総介になり給ひしより、たちまちに王氏を出でて人臣に連なる。
上総介【名詞】 に【格助詞】 なり【ラ行四段活用「なり」の連用形】 給ひ【ハ行四段活用「たまふ」の連用形:尊敬の補助動詞】 し【過去の助動詞「き」の連体形】 より【格助詞】、 たちまちに【副詞】 王氏【名詞】 を【格助詞】 出で【ダ行下二段活用「いづ」の連用形】 て【接続助詞】 人臣【名詞】 に【格助詞】 連なる【ラ行四段活用「つらなる」の終止形】。

その子鎮守府の将軍義茂、後には国香と改む。
そ【代名詞】 の【格助詞】 子【名詞】 鎮守府【名詞】 の【格助詞】 将軍【名詞】 義茂【名詞】、 後【名詞】 に【格助詞】 は【係助詞】 国香【名詞】 と【格助詞】 改む【マ行四段活用「あらたむ」の終止形】。

国香より正盛に至るまで六代は、諸国の受領たりしかども、
国香【名詞】 より【格助詞】 正盛【名詞】 に【格助詞】 至る【ラ行四段活用「いたる」の連体形】 まで【副助詞】 六代【名詞】 は【係助詞】、 諸国【名詞】 の【格助詞】 受領【名詞】 たり【断定の助動詞「たり」の連用形】 しか【過去の助動詞「き」の已然形】 ども【接続助詞】、 

殿上の仙籍をばいまだ許されず。
殿上【名詞】 の【格助詞】 仙籍【名詞】 を【格助詞】 ば【係助詞】 いまだ【副詞】 許さ【サ行四段活用「ゆるす」の未然形】 れ【受身の助動詞「る」の連用形】 ず【打消の助動詞「ず」の終止形】。

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<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◆「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◆「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◆「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◆「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。


<語句・文法解説>

■主な助動詞や助詞の意味などについては、上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。

◇主な敬語については下段で、「敬意の主体(誰から)」→「敬意の対象(誰へ)」(敬意の方向)を下段にまとめて示した。


祇園精舎
インドの長者で須達多(すだった)が庭園を買って釈迦のために建てた寺。寺の無常堂の四隅の鐘は病僧が亡くなる時に「諸行無常、是生滅法~」と自然に鳴って、これを聞いた病僧は苦悩を忘れ往生を遂げたといわれている。

諸行無常 :万物は常に移り変わって行くものであり、永遠不滅なものはない。

娑羅双樹
インド原産の高木で淡黄色の花をつける。釈迦が入滅した時、床の四方に2株ずつ(=双樹)計8株生えていたが、入滅と同時に白く変化して枯れたという。

盛者必衰 :盛んな者も必ず衰える。

理 :道理。

異朝 :外国。ここでは中国のこと。 ⇔ 本朝 :日本。

とぶらへ :尋ねる。探す。調べる。

秦の趙高 :秦の始皇帝の宦官。始皇帝の死後、二世皇帝胡亥の丞相として暴政をふるったが三世皇帝子嬰に殺された。

漢の王莽 :平帝を毒殺し、帝位を奪ったが、その悪政のため68歳の時に殺された。

梁の朱异 :梁の武帝の臣。権勢をふるったが、失政により侯景の乱を招き自殺。

唐の祿山 :唐の玄宗の臣。安祿山。755年に安史の乱を起こし、大燕皇帝となったが太子に殺された。

愁ふる :悲しみ嘆く。つらく思う。

亡じ :滅びる。死ぬ。

うかがふ :調べてみる。尋ね求める。

承平の将門 :平将門。935年に謀反を起こし、939年には偽宮を作り自ら平親王と号したが、翌年平貞盛らに討たれた。

天慶の純友 :藤原純友。将門に同意して乱を起こしたが、941年に小野好古に討たれた。

康和の義親 :源義親。1101年、対馬守となって以来、悪事を重ね、隠岐に流されたが1107年に平正盛に討たれた。

平治の信頼 :藤原信頼。1159年に源義朝と共に謀反を起こしたが、平清盛に討たれた。

とりどりに :さまざまに。それぞれに。

間近く :最近の。

六波羅 :京都市東山区の鴨川付近。当時jは、平氏の屋敷が並んだ政権の本拠地。

朝臣 :五位以上の人の姓名につける敬称。
三位以上の人は氏の下に(平朝臣清盛)、四位以下の人は名の下に(忠盛朝臣)つける。

公 :(身分の高い人の名に付いて)尊敬を表す接尾語。

一品 :親王の中で最高位にある皇子。

式部卿 :律令制での八省の一つ式部省の長官。式部省は、朝廷の儀礼・儀式、役人の人事などを担当。

後胤 :子孫。

「讃岐守正盛が孫」の「が」 :連体格の格助詞 ~の。

刑部卿 :律令制での八省の一つ刑部省の長官。刑部省は、裁判と罪人の処刑などを担当する。

王氏 :皇族。

人臣 :臣下。

鎮守府将軍 :蝦夷を鎮定するために陸奥・出羽地方に置かれた役所。将軍は長官。

受領 :実際に任地に赴任して国務を行う国守(諸国の長官)。大半は六位以下。
※任地に赴任しない国守=遥任(えうにん)。

殿上の仙籍 :清涼殿の殿上の間に昇殿を許された殿上人の姓名などを記した札。

※殿上人 :清涼殿の殿上の間に昇殿を許された四位・五位の人および六位の蔵人。⇔地下人。
※三位以上の人(四位の参議を含む)は、上達部(かんだちめ)。
※清涼殿 :天皇が生活する建物。
※殿上の間 :清涼殿にある殿上人の詰め所。


◆受身・可能・自発・尊敬の助動詞「る」 :四段・ナ変・ラ変の未然形に接続

・未然形接続の助動詞として、使役・尊敬の助動詞「す」と共に
【四・ナ・ラ「る・す」】、その他「らる・さす」と覚える。

及ば【四段未然形】+れ【可能の助動詞「る」の未然形】
許さ【四段未然形】+れ【受身の助動詞「る」の連用形】


◆本文に従った平氏の系図

桓武天皇-葛原親王-高視王-高望王-国香(義茂)-○-○-○-○-正盛-忠盛-清盛

※葛原親王の九代目が正盛


<敬語動詞・音便>

◆「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事を読んでね。

◇「敬意の主体(誰から)」→「敬意の対象(誰へ)」(敬意の方向)

「入道前太政大臣平朝臣清盛公と申しし人」の「申し」 :謙譲の本動詞 (世間の人々が)~申し上げる。
◇「作者」→「清盛」への敬意。

伝へ承る :謙譲の本動詞 伝え伺う(うかがう)。伝え聞き申し上げる。
※「伝ふ」(下二段・人づてに聞く。伝授を受ける。)+「承る」(伺う。お聞きする。)の複合動詞。
◇「作者」→「作者が伝え聞いた人」への敬意。(※誰から聞いたかは不明)

「無官無位にして失せ給ひ」の「給ひ」 :尊敬の補助動詞 お~なる。~なさる。
◇「作者」→「高視王」への敬意。

「平の姓を賜はつ」の「賜はつ」 :謙譲の本動詞 いただく。頂戴する。
◇「作者」→「天皇」への敬意。

「上総介になり給ひ」の「給ひ」 :尊敬の補助動詞 お~なる。~なさる。
◇「作者」→「高望王」への敬意。

・音便

ざつ :打消の助動詞「ず」の連用形「ざり」の促音便。

賜はつ :ラ行四段活用「たまはる」の連用形「たまはり」の促音便。


<係り結び>

・皆とりどりに「こそ」→結びの消滅(流れ)
※「しか」のあとの接続助詞「ども」によって文が終了していないため。

・伝へ承る「こそ」→及ばれ「ね」

◇係り結びが分からない人は上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。


<対句>

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」
「娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」

「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」
「猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」

「遠く異朝をとぶらへば」
「近く本朝をうかがふに」


<比喩>

「ただ春の夜の夢のごとし」=「はかないもの」のたとえ。

「ひとへに風の前の塵に同じ」=「はかないもの」のたとえ。


<鑑賞・私の一言>

平家物語は、和漢混交文で、無常観や因果応報の仏教思想が根底にありますね。
平家物語(鎌倉時代)のジャンルは、「軍記物語」、作者は未詳。

※無常(仏教語)=生あるものは必ず滅び、何一つとして不変・常住のものはない。
※因果応報(仏教語)=過去前世の行いの善悪に応じて、報いがある。

平安末期~鎌倉時代は、戦乱や天変地異が相次いだこともあって、徒然草、方丈記、平家物語など中世文学の共通主題は「無常」ですよね。

この「祇園精舎」は、「ぎおんしょうじゃの かねのこえ しょぎょうむじょうの ひびきあり」のように、七五調の文体がリズム感を生んでいますね。

日本人の教養として、この「祇園精舎」や枕草子、徒然草、方丈記、奥の細道、土佐日記、源氏物語などの冒頭文は覚えておきましょうね。50回音読する根気さえあれば、自然に覚えられます。
大人になっても、これらをサラッと言えるのは、ちょっとカッチョイイものです(笑)

予想テスト問題は、気分が乗ったらいずれ追記します。


<このブログに収録済みの品詞分解作品>

 品詞分解:ブログ収録作品一覧


<古文の学習書と古語辞典>

 古文を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
 《⇒古文学習書の記事へ》 

 《⇒品詞分解付き対訳書の記事へ》 

 《⇒古語辞典の記事へ》
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◇関連記事 (前後の7記事を表示)
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