HOME > 万葉集 > 万葉集 憶良らは今は罷らむ子泣くらむ 品詞分解と訳

万葉集 憶良らは今は罷らむ子泣くらむ 品詞分解と訳

Sponsored Links
 今回は、「万葉集」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。


万葉集 巻3・337 山上憶良(やまのうえのおくら)

山上憶良臣(おみ)、宴(うたげ)を罷る(まかる)歌一首
 (山上憶良の臣が宴を退出する歌一首)


憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も吾を待つらむそ


※第四句の「それその母も」は、原文が「其彼母毛」となっており、「その彼(か)の母も」(その子の母も)とする説や、「彼」が「被」の誤字だとして、「そを負ふ母も」(それを背負っている母も)とする説もある。


<平仮名 ※「む」の読みは「ん」>

おくららは いまはまからむ こなくらむ それそのははも わをまつらむそ


<万葉仮名>

憶良等者 今者将罷 子将哭 其彼母毛 吾乎将待曽


<現代語訳>

私め、憶良はもうおいとまいたしましょう。家では今ごろ子供が泣いているでしょう。それにほら、私の妻も私を待っていることでしょうよ。

※「私め」の「め」は、自分を謙遜した意を表す接尾語。


<作者>

山上憶良(やまのうえのおくら)
660年~733年頃。飛鳥時代後期~奈良時代前期の歌人。万葉集第三期。702年遣唐使として入唐し帰国後伯耆守・筑前守などを歴任。漢詩文など中国文学の影響を強く受け、人生苦や人間愛を主題にした思想性の強い独自の歌風による社会派歌人。


<和歌の基礎知識>

◇和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◇和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)>

・句切れ :二句切れ、三句切れ

◇たまに、この歌が小倉百人一首に撰集されていると思っている人たちもいるようですが、山上憶良の歌で小倉百人一首に撰集されているものはありませんよ。
なかには、「和歌=百人一首」だと思っている人、この歌を「俳句」だと思っている人もいるようです。
心当たりのある人は、上にリンクをつけてある「文法・用語の基礎知識」の記事を読んでおいてね。

小倉百人一首は、勅撰和歌集から撰集されているので、勅撰和歌集ではない万葉集の歌人の歌はほとんど撰集されていない。万葉集の代表的歌人のうち、柿本人麻呂・山部赤人・大伴家持などは拾遺集や新古今集などの勅撰和歌集に所収されている歌が撰集されていますが、額田王・山上憶良・大伴旅人などの歌は撰集されていません。
Sponsored Links
<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<品詞分解・語句文法解説>

億良 :名詞

ら :謙遜を表す接尾語。 
※中座する者たちを代表して詠んだ歌として、複数を表わす接尾語とする説もある。

は :係助詞

今 :名詞

は :係助詞

罷ら :謙譲語:動詞ラ行四段活用「罷る(まかる)」の未然形 退出する。おいとまする。
※「敬意の主体(誰から)」(作者である憶良)→「敬意の対象(誰へ)」(宴に同席した貴人たち)への敬意。

む :意志の助動詞「む」の終止形

子 :名詞

泣く :動詞カ行四段活用「泣く」の終止形

らむ :現在推量の助動詞「らむ」の終止形 現在の見えない事柄を推量して(今頃は)~しているだろう。

それ :感動詞 (相手に呼びかける気持ちを表し) ほら。
※代名詞とする説もある。

そ :代名詞

の :格助詞

母 :名詞

も :係助詞

吾(我) :代名詞

を :格助詞

待つ :動詞タ行四段活用「待つ」の終止形

らむ :現在推量の助動詞「らむ」の連体形 現在の見えない事柄を推量して(今頃は)~しているだろう。

そ :自分の気持ちを強く相手に伝える強意(断定)の終助詞「ぞ」の清音化したもの。 ~だよ。
※係助詞とする立場もある。係助詞とした場合も終助詞的用法(文末用法)なので係り結びはない。

※助動詞「む」、「らむ」などについては、上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。

Sponsored Links


<私の一言>

 「ら(らむ)」音の多用がリズム感を生んでいるんですね。

 この歌は、山上憶良が筑前国守(今の福岡県北部)として赴任していた頃に、大宰府の長官である太宰帥(だざいのそち)として赴任していた大伴旅人(家持のお父さん)らとの大宰府での宴を退席する際に詠んだものといわれている。
 当時、旅人や憶良は小野老(おののおゆ)、沙弥満誓(さみのまんぜい)、大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)たちと筑紫歌壇(つくしかだん)という歌人グループを構成していました。

 本当に子どもと奥さんが待っていたのか、それとも宴会途中で帰ることで座をシラケさせないために詠んだ歌なのか、私には分かりません。
 ただ、この歌を詠んだ時の憶良が60代後半~70歳位であったことから、自分の子供が泣きながら待っているとするのは不自然なので、後者とするのが一般的なようです。
 すでにオッサンとなっているであろう子供が泣き、若妻ではなく婆さんが待っている姿を想像した周りの人たちは爆笑しながらツッコミを入れたかもね。

 憶良が子煩悩であったことは、「瓜食めば~」「銀も~」といった歌からも確かなようですが、一般的には「子どもと嫁さんが待ってるからぁ」と言って宴会途中で帰る奴に限って家には帰らず、愛人宅に向かうのが男というものです(笑)

 時代や年齢は関係ないでしょう。

 憶良さん、本当に家に帰っていたのならゴメンナサイね。


<和歌索引>

◆ブログ内の和歌を探す時は、カテゴリーではなく下に示す各一覧を利用してね。

和歌:ブログ収録・歌別一覧
和歌:ブログ収録・作者別一覧
万葉集:ブログ収録和歌一覧
古今集:ブログ収録和歌一覧
新古今集:ブログ収録和歌一覧
小倉百人一首:歌番号順一覧
伊勢物語:ブログ収録和歌一覧
ヨルタモリ:日本古典文学講座:百人一首一覧


<古文や和歌の学習書と古語辞典>

古文や和歌を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
《古文・和歌の学習書の記事へ⇒》

《品詞分解付き対訳書の記事へ⇒》

《古語辞典の記事へ⇒》
Sponsored Links
◇関連記事 (前後の7記事を表示)
 その他の記事は、右サイドメニューの「カテゴリ」(和歌などは索引)からどうぞ。
 

Comment (コメント)

 (任意) 未入力時 = よみ人しらず
 (任意) 入力時もコメント欄には非表示
 (必須) 管理人承認後に表示
Private

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: ↑の方へ

こっそり誤字を教えてくださって、ありがとうございました。
さっそく直しておきました。

よ~く見たら4箇所も・・・、恥ずかしい(#^.^#)
この記事を見て、間違って覚えてしまった人たちがいないことを祈るばかりです。

あなたのやさしさに感謝します!
また来てくださいね!
Categories (カテゴリ)
Search This Blog (ブログ内検索)
Featured Posts (特集・古典の基礎知識)
◆ 古典を得意科目にする記事
My Recommended Books (おすすめ書籍)
◆ 辞書と学習書の記事
Popular Posts (人気記事)
All Posts (すべての記事)
This and That (あれこれ)
  • ブログ記事に誤字や記述間違い等がある場合は、コメント欄から教えてください。
  • このブログのリンクはご自由にどうぞ。
    その際に連絡の必要はありません。
  • 古典作品の解説や和歌の鑑賞文などを目的とした中学生の読者さんもいるようですね。

    このブログの古典文法などは、詳しい文法的説明を求める高校生以上の読者を想定して書いています。一般の中学生には必要のない知識なので、わからなくても気にしないでね。
About This Blog (このブログについて)

んば

Author:んば
Since May 9,2014


くらすらん
暮らす欄くらすらむClass Run

この絵は私のお気に入りで
アンリ・ルソー『眠るジプシーの女』