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和歌の文法・用語・和歌集・歌風の基礎知識

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 今回は、和歌に頻出する「係り結びの法則」などの文法や構文(このページ中段以降)、和歌の定義、用語、和歌集、三大和歌集の歌風、歌仙などについて紹介します。

 各項目の代表的な和歌には、解説した記事へのリンクをつけてあります。その他の歌を知りたい場合は、右サイドメニュー中段(スマホ版では下段)にあるブログ内検索を利用して下さい。

 なお、この記事に記載していた修辞法(表現技法)については、単独記事として別途新規に投稿しました。
 「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」


 このブログには、「新古今和歌集 おすすめの俳句」とか、「百人一首 秋の俳句」のような検索をしている人たちが1日に数人訪れます。俳句(五・七・五)と和歌を区別できないんですね。

<和歌とは>

◇和歌とは、長歌、短歌、旋頭歌、仏足石歌など日本の定型歌の総称。近代以降では短歌のみを指す。
歌謡、連歌、俳諧、俳句などは含めない。

唐歌(からうた=漢詩)に対して大和歌(やまとうた)ともいう。

・長歌 :「五・七」音の句を3回以上繰り返して最後に「七」音の句を加えた和歌。 「瓜食めば~」

・短歌 :「五・七・五・七・七」。三十一文字(みそひともじ)ともいう。

前半の五・七・五を「上の句(かみのく)」または「本(もと)」、後半の七・七を「下の句(しものく)」または「末(すゑ)」という。

第一句を「初句(頭句・起句)」、第二句を「胸句」、第三句を「腰句(腰の句)」、第五句を「結句(尾句・落句)」という。

・旋頭歌(せどうか) :「五・七・七・五・七・七」 「白珠は~」

・仏足石歌(ぶっそくせきか) :「五・七・五・七・七・七」 万葉集には下記一首のみ。
万葉集・巻16・3884 「伊夜彦神の麓に今日らもか鹿の伏すらむ皮衣着て角つきながら」


<主な和歌の用語>

・詞書(ことばがき)=和歌の前書き。和歌の成立事情や日時・場所などを記したもの。「名にし負はばいざ~」

※万葉集では「題詞(だいし)」。「あかねさす~」
※成立事情や題が不明の歌は、「題しらず」。

・左注(さちゅう)=和歌の左側に付ける注記。編者があとから書き入れる場合も多い。「天の原~」

・部立(ぶだて)=歌集で歌を主題によって分類し、各々の部にまとめること。具体的には歌集の「春歌」や「恋歌」などのこと。

・歌合(「歴」うたあはせ・「現」うたあわせ) :左右二組に分かれて、決められた題のもと一首ずつ和歌の優劣を競う遊戯。「薄く濃き~」

・よみ人しらず :作者不明または匿名。

・字余り(じあまり)=和歌・俳諧・俳句などで、いずれかの句が定型の音数を超えること。例えば、短歌なら、「五・七・五・七・七」のうち五音句が六音以上、あるいは七音句が八音以上になること。「淡海の海~」 
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<三大和歌集の歌風>

◇三大和歌集とは、万葉集・古今和歌集・新古今和歌集のこと。

◇万葉集=奈良時代末頃に成立した、現存する日本最古の歌集。大伴家持が最終編者といわれている。歌数は約4500首。
「万葉集:ブログ収録和歌一覧」

◇万葉集の歌風=「丈夫ぶり(「歴」ますらをぶり・「現」ますらおぶり」=男性的でおおらかな歌風。(特に第二期の歌風)

◎万葉集 第一期~第四期の代表歌人 ※区分には諸説ある。

・第一期 (629年~672年 壬申の乱まで)
額田王、舒明天皇、斉明天皇、天智天皇、大海人皇子(天武天皇)、有馬皇子

・第二期 (672年~710年 平城京遷都まで)
柿本人麻呂、天武天皇、持統天皇、大伯皇女、大津皇子、志貴皇子、高市黒人、長奥麻呂(長意吉麻呂)

・第三期 (710年~733年 山上憶良の推定没年まで)
山部赤人、山上憶良、大伴旅人、大伴坂上郎女、小野老、高橋虫麻呂、笠金村、湯原王(3~4期)

・第四期 (734年~759年)
大伴家持、中臣宅守、狭野弟上娘子、笠郎女


◇古今和歌集=905年に醍醐天皇の命が下され、913年頃に撰進された最初の勅撰和歌集。略称:古今集。
撰者は紀友則(きのとものり)・紀貫之(きのつらゆき)・凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)・壬生忠岑(みぶのただみね)の4人。歌数は約1100首。
「古今集:ブログ収録和歌一覧」

◇古今和歌集の歌風=「手弱めぶり(「歴」たをやめぶり・「現」たおやめぶり)」=女性的で繊細・優美な歌風。

※勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)
天皇あるは上皇・法皇の命令(勅命)によりつくられた公的な和歌集。古今集以下、21の和歌集がある(二十一代集)。


◇新古今和歌集=1201年に後鳥羽院の命が下され、1205年に撰進された第8番目の勅撰和歌集。略称:新古今集。
撰者は、源通具(みちとも)・藤原有家(ありいえ)・藤原定家(ていか・さだいえ)・藤原家隆(いえたか)・藤原(飛鳥井)雅経(まさつね)・寂蓮(じゃくれん)の6人。歌数は約1980首。
「新古今集:ブログ収録和歌一覧」

◇新古今和歌集の歌風=藤原俊成が提唱した「幽玄(「歴」いうげん・「現」ゆうげん)=言外の深い余剰美」、および、息子の藤原定家が提唱し幽玄を深めた「有心体(うしんてい)=妖艶で風雅な《趣・余情・美》」

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<小倉百人一首とは>

藤原定家の撰による鎌倉時代(1235年頃に成立)の秀歌撰集。天智天皇から順徳院に至る歌人百人の秀歌を各一首ずつ、ほぼ時代順に配列したもの。

歌はすべて勅撰和歌集に所収されているもので、古今集からは24首、新古今集からは14首を撰歌。定家好みの妖艶で技巧的な歌が多く、王朝和歌の集大成といえる。

定家の日記「明月記」では、1235年5月27日に定家の子である為家の妻の父蓮生(れんしょう:俗名・宇都宮頼綱)の求めにより京都の嵯峨にあった小倉山の山荘で撰歌したとされているが、定家が撰歌しものと現在の「小倉百人一首」には多少の違いがあるとされていて、定家ゆかりの人物(子の為家あたり)に補訂されて現在の形になったといわれている。

「新百人一首」、「後撰百人一首」など様々な「百人一首」があるが、一般的に「百人一首」といえば「小倉百人一首」のこと。

小倉百人一首には、勅撰和歌集ではない万葉集の歌人の歌はほとんど撰集されていない。万葉集の代表的歌人のうち、柿本人麻呂・山部赤人・大伴家持などは拾遺集や新古今集などの勅撰和歌集に所収されている歌が撰歌されているが、額田王・山上憶良・大伴旅人などの歌は撰歌されていない。
「小倉百人一首:歌番号順一覧」


<八代集とは>

平安初期から鎌倉初期にかけてつくられた八つの勅撰和歌集の総称。
①古今集(こきんしゅう)・②後撰集(ごせんしゅう)・③拾遺集(しゅういしゅう)=三代集
④後拾遺集(ごしゅういしゅう)・⑤金葉集(きんようしゅう)・⑥詞花集(しかしゅう)・⑦千載集(せんざいしゅう)・⑧新古今集(しんこきんしゅう)。


<六歌仙と三十六歌仙>

◇六歌仙

僧正遍昭 在原業平 文屋康秀 喜撰法師 小野小町 大友黒主
「ブログ収録作者別和歌一覧」

◇三十六歌仙

柿本人麻呂 山部赤人 大伴家持 猿丸大夫 僧正遍昭 在原業平 小野小町 藤原兼輔 紀貫之 凡河内躬恒 紀友則 壬生忠岑 伊勢 藤原興風 藤原敏行 源公忠 源宗于 素性法師 大中臣頼基 坂上是則 源重之 藤原朝忠 藤原敦忠 藤原元真 源信明 斎宮女御 藤原清正 藤原高光 小大君 中務 藤原仲文 清原元輔 大中臣能宣 源順 壬生忠見 平兼盛
「ブログ収録作者別和歌一覧」(小倉百人一首のページには作者紹介あり)

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<和歌に頻出する文法と構文>

◇「係り結びの法則」とは何か (和歌に限らず、古文の基本的な文法規則)

「係り結びの法則」とは、「文中に一定の係助詞《ぞ・なむ・や・か・こそ》がある場合、それを受ける活用語が特定の活用形《連体形・已然形》となる現象」のこと。
※活用語=動詞・形容詞・形容動詞・助動詞。

◎係り結びの形
・係助詞「ぞ・なむ・や・か(やは・かは・もぞ)」→受ける活用語が「連体形」となる。
・係助詞「こそ(もこそ)」→受ける活用語が「已然形」となる。
・係助詞「は・も」→単独では係り結びに関与しない。(終止形で結ぶとする立場もある。)
※「は・も」は、「やは・かは(疑問・反語)」・「もぞ・もこそ(懸念・困惑)」などのように他の係助詞とセットのときに係り結びに関与する。

◎係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ」の意味と訳し方
・「ぞ・なむ・こそ」=強調(強意) 「特に訳出しない」(係助詞が、その前の語や語句を強調している)
・「や・か」=疑問「~か。」 反語「~か、いや、~ではない。」
※「こそ」には下で示すように逆接の意味もある。
※「もぞ・もこそ」は、「~すると困る。~するといけない。~すると大変だ。」

◎係り結びの法則では、通常の場合、係助詞を受ける活用語が特定の活用形(連体形・已然形)になることで「結ぶ」、つまり文は終止する。
しかし、文が終止する場合でも、
・結びとなるはずの文節や述部が省略される「結びの省略」《例:~こそ。(「あれ・あらめ」などの省略。)》
また、以下のように文が終止しない場合もある。
・逆接を表す(逆接強調法)「こそ~已然形、」(~のに。~けれども。)《例:中垣こそあれ、~。(中垣はあるけれど、~。)》
・結びの箇所に接続助詞などが存在することによる「結びの消滅(流れ)」《例:なむ~思ひて、~。》
(通常は「なむ」→「思ふ(連体形)」で文を終止するが、接続助詞「て(連用形接続)」により「思ひ(連用形)」となり、文が終止せずに続く。)

◎疑問語に呼応した連体形の結び
「係り結びの法則」ではないが、文中に「いかが」などの副詞(陳述の副詞・呼応の副詞)や「いづれ」などの代名詞のような「疑問語」があると、それに呼応してほとんどの場合に「連体形」で結びます。

※係り結びの実例は、「土佐日記 帰京」「徒然草 同じ心ならん人と」「古今集 春の夜の闇はあやなし~」など、作品の記事下段にある係り結びの項を参照してください。


◇和歌で使われている助動詞「けり」は「過去」ではなく、「詠嘆」。
「~だなあ。~たことよ。」などのように訳出する。

例 :「心なき~」「駿河なる~」「花の色は~」


◇和歌の詞書に頻出する文末の「~よめる」は、「詠んだ歌」。

たまに、詞書の「よめる」で悩む人がいるようなので書いておきます。(例 :「世の中に~」

よめ :マ行四段活用動詞「詠む」の已然形

る :完了の助動詞「り」の連体形
※準体法なので、この場合は「歌」を補って訳出する。

現代語訳は、「詠んだ歌」。

※準体法、「る」の識別については、「古典文法の必須知識」 の記事を読んでね。


◇格助詞の省略

和歌に限らないが、古文では格助詞が省略されている場合も多々ある。

・主格の格助詞「の・が」の省略 (「が」または「は」を補って訳出する。)
「春過ぎて~」 (春過ぎて~)
「秋来ぬと~」 (秋来たと~)

・連用格(目的語)の格助詞「を」の省略 (「を」を補って訳出する。)
「月見れば~」 (月見ると~)
「花さそふ~」 (花誘う~)


◇「を・み」構文

名詞+間投助詞「を」+形容詞語幹+接尾語「み」 (間投助詞「を」は、省略される場合もある。)

「AをBみ」の形。 (原因・理由を表し)AがBなので。

例 :「苫をあらみ」「瀬を早み」「潟をなみ」「山高み」「山深み」「水清み」など。

※なお、形容詞シク活用の語幹の扱いには説の違いがあるので、シク活用の場合は「形容詞語幹」ではなく、《名詞+「を」+「シク活用・終止形」+「み」》で覚えておいた方がよい。(例 :「野をなつかしみ」


◇「AしBば」構文

「名に負はいざ~」のような、A+「し」(強意の副助詞)+B+「ば」(接続助詞)の形。 
「し」が強意の副助詞であることを識別できる形。 ※強意の副助詞「し」は特に訳出する必要はない。

この構文の接続助詞「ば」の意味については、接続・文脈に応じて「ば」が持つ4つの意味の中から選択する。
※接続助詞「ば」の意味がわからない人は、「古典文法の必須知識」 の記事を読んでね。

代表的な和歌
「年ふれば~」「唐衣きつつ~」「この世にし~」「うらうらに~」「家にあれば~」「立ち別れ~」など。


<古典文法の関連記事>

「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」

「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」

「助動詞・助詞の意味」・「係り結び」・「準体法」・「中止法」

「助動詞の活用と接続の覚え方」

「音便・敬語の基礎知識」


<古文や和歌の学習書と古語辞典>

古文や和歌を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
《古文・和歌の学習書の記事へ⇒》

《品詞分解付き対訳書の記事へ⇒》

《古語辞典の記事へ⇒》
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◇関連記事 (前後の7記事を表示)
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