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春望(杜甫) 書き下し文と現代語訳

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 今回は、杜甫の漢詩「春望」の白文(原文)、訓読文、書き下し文、現代語訳(口語訳・意味)、読み方(ひらがな)、形式、押韻、対句、語句・文法・句法解説、おすすめ書籍などについて紹介します。


【近体詩(唐詩)】 春望(「歴」しゆんばう・「現」しゅんぼう) 杜甫(とほ):盛唐


<要旨>

永遠不滅の自然を前に、人間の行為のはかなさ、さらに自らの老いを嘆き、不安と絶望を詠んだ詩。
当時の時代背景として、755年~の安禄山の乱により首都長安は破壊され、杜甫も反乱軍に捕らえられ長安に軟禁されていた。


<白文(原文)>

国破山河在 城春草木深           
感時花濺涙 恨別鳥驚心           
烽火連三月 家書抵万金           
白頭掻更短 渾欲不勝簪



◇送り仮名などは本によって若干違う場合があるので、あなたのテキストに従ってください。

◇漢詩(近体詩)の規則をこのページ中段に記載しています。

◇書き下し文のルールについては、このページ下段に記載しています。

◇返り点の読み方、置き字などについて知りたい場合は、「漢文の基礎知識」を読んでね。

◇現代仮名遣いのルールについて知りたい場合は、「現代仮名遣いの基礎知識」をどうぞ。



《白》 白文
《訓》 訓読文(返り点・送り仮名・句読点など) ※返り点送り仮名 ※置き字
《書》 書き下し文(歴史的仮名遣い)
《仮》 読み方・現代仮名遣い(ひらがな)
《訳》 現代語訳(口語訳)
※《別の訓読および読みなどがある場合は訳の下に記載》


《白》 国破山河在
《訓》 国破レテ山河在
《書》 国破れて山河在り
《仮》 くにやぶれて さんがあり
《訳》 首都(の長安)は(戦乱のためにすっかり)破壊されてしまったが、山や河(といった自然)は(昔のままの)姿をとどめている。

《白》 城春草木深
《訓》 城春ニシテ草木深
《書》 城春にして草木深し
《仮》 しろはるにして そうもくふかし
《訳》 (廃墟と化した)町中には(再び)春がめぐってきて、草や木が青々と生い茂っている。

《白》 感時花濺涙
《訓》 感ジテハニモ
《書》 時に感じては花にも涙を濺ぎ
《仮》 ときにかんじては はなにもなみだをそそぎ
《訳》 (このような)時のなりゆきに深く心を痛めては、(美しく感じられるはずの)花を見ても涙を流し、

《白》 恨別鳥驚心
《訓》 恨ミテハレヲニモカス
《書》 別れを恨みては鳥にも心を驚かす
《仮》 わかれをうらみては とりにもこころをおどろかす
《訳》 (家族と)離ればなれになっていることを悲しんでは、(聞いて楽しいはずの)鳥の鳴き声にも、(敵の襲来ではないかと)はっとするのである。
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《白》 烽火連三月
《訓》 烽火連ナリ三月
《書》 烽火三月に連なり
《仮》 ほうか さんげつにつらなり
《訳》 戦いののろしは、もう何か月も続いており、

《白》 家書抵万金
《訓》 家書抵万金
《書》 家書万金に抵る
《仮》 かしょ ばんきんにあたる
《訳》 家族からの便りは、万金に値する(ほど貴重なものとなってしまった)。

《白》 白頭掻更短
《訓》 白頭掻ケバ
《書》 白頭掻けば更に短く
《仮》 はくとう かけば さらにみじかく
《訳》 白髪頭をかけば、髪はますます薄く短くなって、

《白》 渾欲不勝簪
《訓》 渾ベテラント
《書》 渾べて簪に勝へざらんと欲す
《仮》 すべて しんにたえざらんとほっす
《訳》 もうすっかり、冠を留めるためのかんざしもさせないほどである。



<漢詩(近体詩)の規則>

◇唐代に完成した形式(絶句・律詩)=「近体詩」、それ以前の形式=「古体詩」

五言絶句七言絶句五言律詩七言律詩
句数4句8句
字数一句5字・計20字一句7字・計28字一句5字・計40字一句7字・計56字
押韻2・4句の末尾1・2・4句の末尾2・4・6・8句の末尾1・2・4・6・8句の末尾
対句用いても用いなくてもよい。原則、頷聯(3・4句)&頸聯(5・6句)が対句。

◇絶句=起句(第一句)、承句(第二句)、転句(第三句)、結句(第四句)

◇律詩=二句をまとめて「聯(連):れん」という。
首聯(しゅれん)=第一句・第二句、頷聯(がんれん)=第三句・第四句、頸聯(けいれん)=第五句・第六句、尾聯(びれん)=第七句・第八句

◇押韻(おういん)=同じ響きの字を句末に置くこと。 
天(ten)・川(sen)、鳥(tyou)・少(syou

※ほとんどの押韻は上の例で示したように日本語の漢字音でもわかりますが、あくまでも詩人たちが生きていた時代(唐など)の中国音での押韻です。

◇対句(ついく)=二句の文法構造が同じで、互いの各語が意味などの上で何らかの対応をしていること。

さらに詳しく知りたい方は「漢詩の規則と基礎知識(漢詩のリズム・覚えておきたい詩人)」の記事をどうぞ。


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<形式>

五言律詩


<押韻>

深(シン)・心(シン)・金(キン)・簪(シン)


<対句>

首聯(しゅれん)(第一句と第二句)

頷聯(がんれん)(第三句と第四句)

頸聯(けいれん)(第五句と第六句)

※律詩は頷聯・頸聯が対句になるのが原則だが、この詩は首聯も対句で、杜甫の「登岳陽楼」などと同じ。

※なお、「漢詩の規則と基礎知識」の記事内で、「春望」首聯(しゅれん)対句の文法構造・意味対応に関する解説をしていますので、知りたい方は読んでね。


<語句・文法・句法解説>

春望 :春の眺め。春の眺望。

国 :国家ではなく、国都(首都)=長安のこと。

城 :町中。 ※当時中国の町は城壁で囲われていたため。

濺 :(涙を)流す。

驚心 :はっとする。 ※「(聞いて楽しいはずの鳥の鳴き声にも、)心が痛む。」と解釈する説もある。

烽火 :(敵の襲来を知らせる)のろし。

三月 :次の三説がある。①三月②三か月③何か月も

家書 :家族からの手紙。

万金 :多額のお金。高価なもの。

抵 :相当する。値する。

渾 :全く。すっかり。

欲 :~しそうだ。~になろうとする。

不勝 :できない。

簪 :かんざし。冠を留めるピン。

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<書き下し文のルール>

◇書き下し文(かきくだしぶん)とは、訓点(返り点・送り仮名・句読点など)に従って、漢字仮名交じりで書いた歴史的仮名遣いの日本文のこと。

①漢文に付いているカタカナの送り仮名は歴史的仮名遣いのまま平仮名で書く。

②日本語の助詞や助動詞にあたる漢字は平仮名に直す。

③再読文字は最初の読みの部分は漢字+送り仮名、二度目の読みの部分は平仮名で書く。
・例:未。(未だ知らず。) 

④訓読しない漢字(置き字)は書き下し文に書かない。

⑤会話文・引用文の終わりの送り仮名「~」は、「と」を「」の外に出し、「~。」と。と書く。
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