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推敲(唐詩紀事) 書き下し文と現代語訳

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 今回は、故事成語「推敲」の白文(原文)、訓読文、書き下し文、現代語訳(口語訳・意味)、読み方(ひらがな)、鑑賞、語句・文法・句法解説、おすすめ書籍などについて紹介します。


【推敲:「歴」すいかう・「現」すいこう】 《唐詩紀事:とうしきじ》


<原文>

賈島赴挙至京、騎驢賦詩、得「僧推月下門」之句。欲改推作敲。引手作推敲之勢、未決。不覚衝大尹韓愈。乃具言。愈曰、「敲字佳矣。」遂並轡論詩久之。


<意味>

詩歌や文章の字句を取捨して何度も練り上げること。



◇送り仮名や句読点などは本によって若干違う場合があるので、あなたのテキストに従ってください。

◇書き下し文のルールについては、このページ下段に記載しています。

◇返り点の読み方、置き字などについて知りたい場合は、「漢文の基礎知識」を読んでね。

◇現代仮名遣いのルールについて知りたい場合は、「現代仮名遣いの基礎知識」をどうぞ。



《白》 白文
《訓》 訓読文(返り点・送り仮名・句読点など) ※返り点送り仮名 ※置き字
《書》 書き下し文(歴史的仮名遣い)
《仮》 読み方・現代仮名遣い(ひらがな)
《訳》 現代語訳(口語訳)
※《別の訓読および読みなどがある場合は、その主なものを訳の下に記載》


《白》 賈島赴挙至京
《訓》 賈島赴キテ
《書》 賈島挙に赴きて京に至り、
《仮》 かとう きょに おもむきて けいに いたり、
《訳》 賈島が科挙(=官吏登用試験)を受けるために、都の長安にやって来て、
※《至り、→ 至る。》

《白》 騎驢賦詩
《訓》 騎リテ
《書》 驢に騎りて詩を賦し、
《仮》 ろに のりて しを ふし、
《訳》 ろばに乗って詩を作っていたところ、

《白》 得僧推月下門之句
《訓》 得タリ「僧月下門」之句
《書》 「僧は推す月下の門」の句を得たり。
《仮》 「そうは おす げっかの もん」の くを えたり。
《訳》 「僧は推す月下の門」という句ができた。
※「僧は推す月下の門」(僧は月に照らされている門を押し開けて中に入って行く。)
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《白》 欲改推作敲
《訓》 欲メテ一レサント
《書》 推を改めて敲と作さんと欲す。
《仮》 すいを あらためて こうと なさんと ほっす。
《訳》 (しかし)「推」の字を改めて「敲」にしたいと思った。

《白》 引手作推敲之勢未決
《訓》 引キテスモ推敲之勢ヒヲ、未
《書》 手を引きて推敲の勢ひを作すも、未だ決せず。
《仮》 てを ひきて すいこうの いきおいを なすも、 いまだ けっせず。
《訳》 (そこで)手を動かして推す(おす)と敲く(たたく)のしぐさをしてみたが、(どちらにするか)まだ決まらない。

《白》 不覚衝大尹韓愈
《訓》 不タル大尹韓愈
《書》 覚えず大尹韓愈に衝たる。
《仮》 おぼえず たいいん かんゆに あたる。
《訳》 (そのうちに)思わず都の長官である韓愈(の行列)に突き当たってしまった。

《白》 乃具言
《訓》 乃
《書》 乃ち具に言ふ。
《仮》 すなわち つぶさに いう。
《訳》 そこで、(賈島は)ありのままに(事の次第を韓愈に)話した。

《白》 愈曰敲字佳矣
《訓》 愈曰ハク、「敲字佳シト。」
《書》 愈曰はく、「敲の字佳し。」と。
《仮》 ゆ いわく、 「こうの じ よし。」と。
《訳》 (それを聞いて、突き当たった賈島の非礼を処罰せずに)韓愈は言った、「敲の字がよい。」と。

《白》 遂並轡論詩久之
《訓》 遂ベテズルコトシクス
《書》 遂に轡を並べて詩を論ずること之を久しくす。
《仮》 ついに くつわを ならべて しを ろんずる こと これを ひさしくす。
《訳》 (二人は)そのまま馬とろばとを並べて進みながら、しばらく詩について論じ合った。

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<鑑賞>

韓愈はなぜ「敲の字がよい。」と言ったのか。

「僧は推す月下の門」(僧は月に照らされている門を押し開けて中に入って行く。)では、僧が門の中へ入っていった後に静かな夜の映像が残るだけで面白くも何ともない。

しかし、「僧は敲く月下の門」であれば、シーンと静まりかえった夜に、月光に照らされた門をトントンとたたく音が響くことによって静けさがいっそう強調されるとともに、映像に音が加わることによって詩に立体的な奥行きが生まれる。
また、門をたたいた後には誰かが門を開けて僧を迎えた入れたであろうことが想像されるから、映像にも奥行きが生まれ、門を開けた者と僧との会話はどんなものだったろうなど「敲く」に改めることによって言外の余情感も広がる。


<語句・文法・句法解説>

賈島 :中国の詩人

挙 :(中国の官吏登用試験)科挙。

京 :ここでは唐の都、長安のこと。

驢 :ろば。

賦詩 :詩を作る。

「僧推月下門」 :僧は月に照らされている門を押し開けて中に入って行く。

欲 :~したいと思う。~しようとする。

敲 :(門などを)トントンとたたく。

引手 :手を動かす。

勢 :しぐさ。身振り。

未 :「いまダ~ず」と読む再読文字。まだ~ない。

不覚 :思わず。

衝 :突き当たる。

大尹 :都の長官。

韓愈 :中唐の詩人、文章家。唐宋八大家の一人。

乃 :そこで。

具 :ありのままに。詳しく。

矣 :置き字。断定の意を表す。

遂 :そのまま。その結果。

並轡 :馬を並べて一緒に行くこと。 「轡」=手綱を付けるために馬の口にかませる金属製の馬具。

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<書き下し文のルール>

◇書き下し文(かきくだしぶん)とは、訓点(返り点・送り仮名・句読点など)に従って、漢字仮名交じりで書いた歴史的仮名遣いの日本文のこと。

①漢文に付いているカタカナの送り仮名は歴史的仮名遣いのまま平仮名で書く。

②日本語の助詞や助動詞にあたる漢字は平仮名に直す。

③再読文字は最初の読みの部分は漢字+送り仮名、二度目の読みの部分は平仮名で書く。
・例:未。(未だ知らず。) 

④訓読しない漢字(置き字)は書き下し文に書かない。

⑤会話文・引用文の終わりの送り仮名「~」は、「と」を「」の外に出し、「~。」と。と書く。
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