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狐借虎威(戦国策) 書き下し文と現代語訳

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 今回は、故事成語「狐借」の白文(原文)、訓読文、書き下し文、現代語訳(口語訳・意味)、読み方(ひらがな)、語句・文法・句法解説、おすすめ書籍などについて紹介します。


【狐借:狐虎の威を借る:きつねとらのいをかる】 《戦国策:せんごくさく》


<原文>

虎求百獣而食之、得狐。狐曰、「子無敢食我也。天帝使我長百獣。今子食我、是逆天帝命也。子以我為不信、吾為子先行。子隨我後観。百獣之見我、而敢不走乎。」虎以為然。故遂与之行。獣見之皆走。虎不知獣畏己而走也。以為畏狐也。


<意味>

有力者の権勢をかさにきて威張ること。

※「狐虎の威を借る」、「虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)」、「虎の威を借る(とらのいをかる)」として使われている故事成語。



◇送り仮名や句読点などは本によって若干違う場合があるので、あなたのテキストに従ってください。

◇書き下し文のルールについては、このページ下段に記載しています。

◇返り点の読み方、置き字などについて知りたい場合は、「漢文の基礎知識」を読んでね。

◇現代仮名遣いのルールについて知りたい場合は、「現代仮名遣いの基礎知識」をどうぞ。



《白》 白文
《訓》 訓読文(返り点・送り仮名・句読点など) ※返り点送り仮名 ※置き字
《書》 書き下し文(歴史的仮名遣い)
《仮》 読み方・現代仮名遣い(ひらがな)
《訳》 現代語訳(口語訳)
※《別の訓読および読みなどがある場合は、その主なものを訳の下に記載》


《白》 虎求百獣而食之得狐
《訓》 虎求メテ百獣ラヒ、得タリ
《書》 虎百獣を求めて之を食らひ、狐を得たり。
《仮》 とら ひゃくじゅうを もとめて これを くらい、 きつねを えたり。
《訳》 ある虎が獣たちを探し求めては食べていて、(ある時)狐を捕まえた。

《白》 狐曰子無敢食我也
《訓》 狐曰ハク、「子無カレヘテ一レラフコト
《書》 狐曰はく、「子敢へて我を食らふこと無かれ。
《仮》 きつね いわく、 「し あえて われを くらう こと なかれ。
《訳》 狐が言うには、「あなたは決して私を食べてはいけません。

《白》 天帝使我長百獣
《訓》 天帝使ヲシテタラ百獣
《書》 天帝我をして百獣に長たらしむ。
《仮》 てんてい われをして ひゃくじゅうに ちょうたらしむ。
《訳》 (なぜなら)天の神が私を獣たちの頭(かしら)にさせているからです。
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《白》 今子食我是逆天帝命也
《訓》 今子食ラハバ、是ラフ天帝也。
《書》 今子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。
《仮》 いま し われを くらわば、これ てんていの めいに さからうなり。
《訳》 今、もしあなたが私を食べるなら、それは天の神の命令に背く(そむく)ことになります。

《白》 子以我為不信吾為子先行
《訓》 子以ツテサバナラ、吾為先行セン
《書》 子我を以つて信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。
《仮》 し われを もって しんならずと なさば、 われ しの ために せんこうせん。
《訳》 あなたが私(の言うこと)を信用できないと思うのなら、私があなたのために先に立って歩いてみましょう。

《白》 子隨我後観
《訓》 子隨ヒテ
《書》 子我が後に随ひて観よ。
《仮》 し わが あとに したがいて みよ。
《訳》 あなたは私の後ろからついて来て、(獣たちの様子を)よく見てください。

《白》 百獣之見我而敢不走乎
《訓》 百獣之見ヘテラン。」
《書》 百獣の我を見て、敢へて走らざらんや。」と。
《仮》 ひゃくじゅうの われを みて、 あえて はしらざらんや。」と。
《訳》 獣たちが私を見て、どうして逃げないことがありましょうか、いや、きっと逃げるでしょう。」と。
※《走 →走:走げ:にげ 》

《白》 虎以為然
《訓》 虎以ツテリト
《書》 虎以つて然りと為す。
《仮》 とら もって しかりと なす。
《訳》 (これを聞いて)虎はもっともであると思った。

《白》 故遂与之行
《訓》 故之行
《書》 故に遂に之と行く。
《仮》 ゆえに ついに これと ゆく。
《訳》 そこでそのまま狐と一緒に歩いて行くことにした。

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《白》 獣見之皆走
《訓》 獣見皆走
《書》 獣之を見て皆走る。
《仮》 けもの これを みて みな はしる。
《訳》 獣たちは、これ(=狐の後ろにいる虎)を見て、みな逃げ出した。
※《走 → 走:走ぐ:にぐ》

《白》 虎不知獣畏己而走也
《訓》 虎不レテルヲ也。
《書》 虎獣の己を畏れて走るを知らざるなり。
《仮》 とら けものの おのれを おそれて はしるを しらざるなり。
《訳》 虎は獣たちが自分を恐れて逃げたのだということに気づかなかったのだ。
※《走ルヲ → 走グルヲ:走ぐるを:にぐるを》

《白》 以為畏狐也
《訓》 以ツテルト也。
《書》 以つて狐を畏ると為すなり。
《仮》 もって きつねを おそると なすなり。
《訳》 (虎は獣たちが)狐を恐れていると思ったのである。
※《以為ヘラク、畏ルル。:以為へらく、狐を畏るるなりと。:おもえらく、 きつねを おそるるなりと。》


<語句・文法・句法解説>

百獣 :獣たち。すべての獣。

而 :置き字。この文章では「~テ・~ヤ」の送り仮名になって順接の意味で使われている。

子 :あなた。ここでは虎のこと。

無敢 :決して~するな(強い禁止)。 「無」=してはいけない。敢=「進んで~する。」

「無敢食我也」の「也」 :この「也」は、ここでは読まない置き字。「無かれ!」と語気を強めて言い切ったニュアンス。

天帝 :天地を支配する神。

使 :使ヲシテ「AヲシテBしム(AにBさせる:使役)」

長 :頭(かしら)。統率者。

今 :今もし~ならば(仮定)。

是 :それは。

逆 :背く(そむく)。

以我為不信 :「以A為B」の形で、AをBだと思う。

「百獣之」の「之」 :主格の格助詞。~が。

敢不~乎 :どうして~しないことがあろうか、いや、きっと~する。(反語)。

然 :もっともだ。

遂 :そのまま。

与之 :これ(=狐)と一緒に。 与=~と一緒に。

見之 :これ(=狐の後ろにいる虎)を見て。

以為 :二通りの読み方がある。
①「以ツテ(以つて~と為す:もって~となす)」
②「以為ヘラク(以為へらく~と:おもえらく~と)」

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<書き下し文のルール>

◇書き下し文(かきくだしぶん)とは、訓点(返り点・送り仮名・句読点など)に従って、漢字仮名交じりで書いた歴史的仮名遣いの日本文のこと。

①漢文に付いているカタカナの送り仮名は歴史的仮名遣いのまま平仮名で書く。

②日本語の助詞や助動詞にあたる漢字は平仮名に直す。

③再読文字は最初の読みの部分は漢字+送り仮名、二度目の読みの部分は平仮名で書く。
・例:未。(未だ知らず。) 

④訓読しない漢字(置き字)は書き下し文に書かない。

⑤会話文・引用文の終わりの送り仮名「~」は、「と」を「」の外に出し、「~。」と。と書く。
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狐虎の威を借る
教科書には
「走」の横に「にゲ」
と書いてありました

Re:

「あああ」さん、こんばんは。
うん、そうですね。「あああ」さんの教科書は「第一学習社」でしょうかね。
各教科書出版社や漢和辞典を見ると、ラ行四段活用の「走ル(はしル)」としている方が一般的なので、このブログでもそのようにしていましたが、ガ行下二段活用の「走グ(にグ)」とする場合もあることを追記しておきますね。
ちなみに、漢字源には「走ル(はしル)」のほかに「走グ(にグ)」も載っています。
コメントありがとうございました。
また来てくださいね。
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