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古典文法 現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識

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 今回は、古典(古文・漢文)を学ぶ上で、初学者が苦手としている「歴史的仮名遣い(れきしてきかなづかい)」と「現代仮名遣い(げんだいかなづかい)」・「発音(読み方)」のルールに関する基礎知識について紹介します。なお、練習問題は中段に記載。

 このブログでも、「○○ 現代仮名遣い」の検索ワードで訪れる人たちがたくさんいます。
 なかには、「○○ 現代かなかい」な~んて検索している、この時点で「アウト!」の人たちもいますけどね。

 ほとんどの人が、歴史的仮名遣いの「は・ひ・ふ・へ・ほ」や「ゐ・ゑ・を」を現代仮名遣いに直す程度の超基本的なレベルのものを検索しているので、しっかりと基本的なルールを覚えてしまいましょうね。

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《⇒現代仮名遣いサイトへ行く》
 

<歴史的仮名遣い→現代仮名遣い・発音の基礎知識>

現代仮名遣いの最重要ルールは、原則として現代語の読みに基づいて書き表すということ。

したがって、現代仮名遣いを難しく考え過ぎてはいけませんよ。
ほとんどは、日本人として常識的な国語力があればわかりますね。

※なお、現代仮名遣いや読み方には意見の異なる語もあります。
あなたに指導者がいるのなら、その指導に従ってくださいね。あなたの採点者は、このブログではなく、あなたの指導者ですから。


■短音発音・現代仮名遣いのルール

1、語の途中や語尾のハ行「は・ひ・ふ・へ・ほ」→ワ行「ワ・イ・ウ・エ・オ」と読む。
例 :「おす」→「オス」、「古(いにし)」→「イニシ」、「ものぐるし」→「モノグルシ」
例 :「とり」→「トリ」、「経上がる(あがる)」→「アガル」(この「ひ」、「へ」は語頭なので無変化)
例 :「朝日(あさ)」→「アサ」(この「ひ」は「朝+日」複合語の語頭なので無変化)

2、「ゐ・ゑ・を」→「イ・エ・オ」と読む。
例 :紅(くれな)→「クレナ」、「笑む(む)」→「ム」、「少女(とめ)」→「トメ」

3、「くわ・ぐわ」→「カ・ガ」と読む。
例 :「官人(くわんにん)」→「ンニン」、「外国(ぐわいこく)」→「イコク」

4、「ぢ・づ」→「ジ・ズ」と読む。
例 :「恥(は)」→「ハ」、「万(よろ)」→「ヨロ

※ただし、これらの四つ仮名(ぢ・づ・じ・ず)には連濁などによる例外も多い。
例(無変化) :「鼻血(はな)」→「ハナ」、「仮名遣ひ(かなかひ)」→「カナカイ」、「徒然(つれれ)」→「ツレレ」、「井筒(ゐつ)」→「イツ」
連濁=2つの語が結合して複合語などを作るとき、あとの語の語頭の音節が清音から濁音になる現象。
「ツレツレ」「イツツ」では言いにくいから、言いやすいように「ツレヅレ」「イヅツ」と濁音になるということ。

5、助動詞「む」・「らむ」・「けむ」など、「む」を「ン」と読むことがある。
また、「馬(むま)」・「梅(むめ)」→「ウマ」・「ウメ」など「む」を「ウ」と読むことがある。

◎促音(そくおん)の「っ」や「ゃ・ゅ・ょ」などの拗音(ようおん)は、歴史的仮名遣いでは「つ・や・ゆ・よ」のように普通の大きさの字(並字)で表記するのが一般的。
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■長音発音・現代仮名遣いのルール

・ア段の歴史的仮名遣い「(子音)a(f)u」→発音「(子音)oー」
・イ段の歴史的仮名遣い「(子音)i(f)u」→発音「(子音)yuー」
・ウ段の歴史的仮名遣い「(子音)u(f)u」→発音「(子音)uー」
・エ段の歴史的仮名遣い「(子音)e(f)u」→発音「(子音)yoー」
・オ段の歴史的仮名遣い「(子音)o(f)u」→発音「(子音)oー」

なお、以下の例のうちイ段の「言ふ(いふ)」・ウ段の「食ふ(くふ)・夕波(ゆふなみ)」・オ段の「思ふ(おもふ)・匂ふ(にほふ)」の現代仮名遣いは、上で示した短音のルール【語の途中や語尾のハ行「は・ひ・ふ・へ・ほ」→ワ行「ワ・イ・ウ・エ・オ」】に従う。

よって、長音発音に基づく現代仮名遣いのルールとしては、「ア段(あとで示す「たまふ」などを除く)」・「イ段(「言ふ」などを除く)」・「エ段(あとで示す「酔ふ」などを除く)」の発音「ー」を「う」に替えると覚えておけばよい。


◇ア段の例
・「淡海(あふみ)」「afu」→現代仮名遣い「おうみ」→発音「oー」「オーミ」 ※他には河内(かふち)など。

・「申す(まうす)」「(子音m)au」→現代仮名遣い「もうす」→発音「(子音m)oー」「モース」

・「漸う(やうやう)」「(子音y)au」→現代仮名遣い「ようよう」→発音「(子音y)oー」「ヨーヨー」 

・「装束(さうぞく)」「(子音s)au」→現代仮名遣い「そうぞく」→発音「(子音s)oー」「ソーゾク」 

・「いたう」「(子音t)au」→現代仮名遣い「いとう」→発音「(子音t)oー」「イトー」 (※「いたく」のウ音便)

・「尊し(たふとし)」「(子音t)afu」→現代仮名遣い「とうとし」→発音「(子音t)oー」「トートシ」


◇イ段の例
・「言ふ(いふ)」「ifu」→現代仮名遣い「いう」→発音「yuー」「ユー」 

・「優なり(いうなり)」「iu」→現代仮名遣い「ゆうなり」→発音「yuー」「ユーナリ」 

・「あやしう」「(子音s)iu」→現代仮名遣い「あやしゅう」→発音「(子音s)yuー」「アヤシュー」 (※「あやしく」のウ音便)

・「いみじう」「(子音j)iu」→現代仮名遣い「いみじゅう」→発音「(子音j)yuー」「イミジュー」 (※「いみじく」のウ音便)

・「執念(しふねん)」「(子音s)ifu」→現代仮名遣い「しゅうねん」→発音「(子音s)yuー」「シューネン」


◇ウ段の例
・「食ふ(くふ)」「(子音k)ufu」→現代仮名遣い「くう」→発音「(子音k)uー」「クー」

・「夕波(ゆふなみ)」「(子音y)ufu」→現代仮名遣い「ゆうなみ」→発音「(子音y)uー」「ユーナミ」


◇エ段の例
・「要なし(えうなし)「eu」→現代仮名遣い「ようなし」→発音「yoー」「ヨーナシ」

・「べう「(子音b)eu」→現代仮名遣い「びょう」→発音「(子音b)yoー」「ビョー」 (※「べく」のウ音便)

・「兄人(せうと)」「(子音s)eu」→現代仮名遣い「しょうと」→発音「(子音s)yoー」「ショート」

・「今日(けふ)」「(子音k)efu」→現代仮名遣い「きょう」→発音「(子音k)yoー」「キョー」

・「てふ」「(子音t)efu」→現代仮名遣い「ちょう」→発音「(子音t)yoー」「チョー」


◇オ段の例
・「思ふ(おもふ)」「(子音m)ofu」→現代仮名遣い「おもう」→発音「(子音m)oー」「オモー」

・「匂ふ(にほふ)」「ofu」→現代仮名遣い「におう」→発音「oー」「ニオー」


◎「候ふ(さうらふ・さぶらふ)」
・「候ふ(さうらふ)」「au+afu」→現代仮名遣い「そうろう」→発音「oー」「ソーロー」 
・「候ふ(さぶらふ)」「afu」→現代仮名遣い「さぶらう」→発音「oー」「サブロー(サブラウ)」

※「さうらふ」は、中世初期前後に「さぶらふ」から変化してできたもの。中世の平家物語では、「さぶらふ」は女性、「さうらふ」は男性のように使い分けられている。
※「候ふ(さぶらふ)」については、あとで示す現代仮名遣いと発音(読み方)が一致しない例と同じ。

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■軽く「練習問題」

①歴史的仮名遣い「うひかうぶり」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

②歴史的仮名遣い「かうみやう」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

③歴史的仮名遣い「あふりやうし」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

④歴史的仮名遣い「てんじやうわらは」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

⑤歴史的仮名遣い「ぎやうぐわんじ」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

⑥歴史的仮名遣い「なんでふ」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

⑦歴史的仮名遣い「にふだう」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

⑧歴史的仮名遣い「せうえう」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

⑨歴史的仮名遣い「まんえふしふ」→現代仮名遣い「?」→発音「?」

※解答は最下段に書いておきます。


■現代仮名遣い(表記)と発音(読み方)が一致しない例

以下に示す「給ふ・賜ふ(たまふ)」のなどの場合は、現代仮名遣いは「たまう」だが、発音は「タモー」とするのが一般的で、現代仮名遣いと発音(読み方)が一致しない例です。ただし、「タマウ」と発音しても間違いではない。

「三省堂例解古語辞典 小松英雄」には以下のように書いてありますので、引用しておきます。
『古典を読む場合には、内容を正しく理解することが第一である。声に出してどう読むかにこだわりすぎて、解釈をおろそかにしたのでは本末転倒になる。
(中略)
動詞「た・ま・ふ」には「タマウ」と「タモー」とをあげているが、自分で不自然に感じない方で読んでおけばよい。関西地方の人たちなら「タモー」が自然かもしれない。読むたびに揺れてもかまわない。』(引用終わり)


・「給ふ・賜ふ(たまふ)」・「au」→現代仮名遣い「たまう」→発音「oー」・「タモー(タマウ)」
※終止形以外の発音は「タマワ」・「タマイ」・「タマエ」ですのでお間違いなく。(以下の語も同じ。)

・「笑ふ(わらふ)」「au」→現代仮名遣い「わらう」→発音「oー」「ワロー(ワラウ)」

・「与ふ(あたふ)」「au」→現代仮名遣い「あたう」→発音「oー」「アトー(アタウ)」

・「従ふ(したがふ)」「au」→現代仮名遣い「したがう」→発音「oー」「シタゴー(シタガウ)」

・「歌ふ(うたふ)」「au」→現代仮名遣い「うたう」→発音「oー」「ウトー(ウタウ)」

・「願ふ(ねがふ)」「au」→現代仮名遣い「ねがう」→発音「oー」「ネゴー(ネガウ)」

・「会ふ・逢ふ(あふ)」「au」→現代仮名遣い「あう」→発音「oー」「オー(アウ)」

・「酔ふ(ゑふ)」「eu」→現代仮名遣い「えう」→発音「yoー」「ヨー(エウ)」

・「憂ふ(うれふ)」「eu」→現代仮名遣い「うれう」→発音「yoー」「ウリョー(ウレウ)」

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■主な例外

・語の途中や語尾の「は・ひ・ふ・へ・ほ」→「ワ・イ・ウ・エ・オ」の主な例外(無変化)
「母(はは)」、「甚だ(はなはだ)」、「溢る(あぶる)」、「放る(はふる)」、「垣穂(かきほ)」、「まほし」、「そこはかとなし」

・「au」の主な例外
「扇ぐ・仰ぐ(あふぐ)→(あおぐ)→(アオグ)」、「葵(あふひ)→(あおい)→(アオイ)」、「倒る(たふる)→(たおる)→(タオル)」

・「iu」の主な例外
「強ふ(しふ)→(しう)→(シウ)」、「来経(きふ)→(きふ)→(キフ)」

・「uu」発音の主な例外
ワ行下二段動詞で有名な以下の3語は、「uー」(ウー)と長音では発音しない。
「植う(うう)」、「飢う(うう)」、「据う(すう)」

・「eu」の主な例外
「衛府(ゑふ)→(えふ)→(エフ)」


■「練習問題」解答

①「初冠(うひかうぶり)」→現代仮名遣い「ういこうぶり」→発音「ウイコーブリ」

②「高名(かうみやう)」→現代仮名遣い「こうみょう」→発音「コーミョー」

③「押領使(あふりやうし)」→現代仮名遣い「おうりょうし」→発音「オーリョーシ」

④「殿上童(てんじやうわらは)」→現代仮名遣い「てんじょうわらわ」→発音「テンジョーワラワ」

⑤「行願寺(ぎやうぐわんじ)」→現代仮名遣い「ぎょうがんじ」→発音「ギョーガンジ」

⑥「何でふ(なんでふ)」→現代仮名遣い「なんじょう」→発音「ナンジョー」
※ちなみに、「なでふ」は、「なんでふ」の撥音「ん」が無表記になったもので、現代仮名遣いは「なじょう」。

⑦「入道(にふだう)」→現代仮名遣い「にゅうどう」→発音「ニュードー」

⑧「逍遥(せうえう)」→現代仮名遣い「しょうよう」→発音「ショーヨー」

⑨「万葉集(まんえふしふ)」→現代仮名遣い「まんようしゅう」→発音「マンヨーシュー」


出来たかな・・・?

例外を除いて、基本的には簡単なルールなので、さっさと覚えてしまいましょうね。


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<古文の学習書と古語辞典>

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