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百人一首(2) 春過ぎて夏来にけらし白妙の 品詞分解と訳

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 今回は、「小倉百人一首」収録和歌(歌番号 2番)の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・作者・出典・英訳・MP3音声・おすすめ書籍などについて紹介します。

 万葉集の「春過ぎて~」については、「こちらのリンク(万葉集・春過ぎて~)」から参照してください。


小倉百人一首 歌番号(2) 持統天皇
  

春過ぎて夏来にけらし白妙の 衣干すてふ天の香具山


<平仮名> (歴史的仮名遣い)

はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま


<読み(発音)>

ハルスギテ ナツキニケラシ シロタエノ コロモホスチョー アマノカグヤマ


<音声> ※音声はDownloadして自由に使って下さい。

百人一首002.mp3
(クリックすると、ちょっと音痴なカワイイ棒読みちゃんが歌を読んでくれます。)


<現代語訳>

春が過ぎて夏が来たらしい。(夏に)白い布の衣を干すという天の香具山(に、衣が干されている)よ。

(百人一首(新古今集)の「春過ぎて~」は、万葉集の「春過ぎて~」が原歌で伝承の間に語句が変化したといわれている。
万葉集の歌には、写実的で、すがすがしい力強さがありますが、百人一首(新古今集)の歌は、「夏来にけらし」や「干すてふ」に替わっていることで写実感が薄れて柔らかい表現になっていますね。
なお、このブログでは、万葉集の「来るらし」を「(これから)やって来るらしい」、百人一首の「来にけらし」を「(すでに)来たらしい」として時制を訳し分けた。)


<英訳>

The spring has passed
And the summer come again;
For the silk-white robes,
So they say, are spread to dry
On the "Mount of Heaven's Perfume."
  
『University of Virginia Library Japanese Text Initiative, Ogura Hyakunin Isshu 100 Poems by 100 Poets 』 より英訳を引用


<出典>

新古今集・巻3・夏歌上・175 「題しらず・持統天皇御歌」

原歌は万葉集の「春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山」。
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<品詞分解・語句文法解説>

春 :名詞

過ぎ :動詞ガ行上二段活用「過ぐ(すぐ)」の連用形

て :接続助詞

夏 :名詞

来(き) :動詞カ行変格活用「来(く)」の連用形

に :完了の助動詞「ぬ」の連用形
※「にき(過去)」「にけり(過去)」「にたり(存続)」の「に」は完了の助動詞。

けらし :過去推定の助動詞「けらし」の終止形 ~たらしい。
※過去の助動詞「けり」の連体形「ける」に、推定の助動詞「らし」が付いた「けるらし」が変化したものといわれている。
※「にけらし」 :~てしまったらしい。~たらしい。

白妙(しろたへ) :名詞 コウゾの繊維から作った白くツヤのある布。

の :格助詞

衣 :名詞

干す :動詞サ行四段活用「干す(ほす)」の終止形

てふ :連語 「と言ふ」(格助詞「と」+四段動詞「言ふ」)が変化したことば。
※現代仮名遣いは「ちょう」、発音は「チョー」

天の香具山 :歌枕 下の<文法特記>を参照のこと。

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<文法特記>

「天の香具山(あまのかぐやま)」 ※「あめのかぐやま」とも読む。
奈良県橿原市(かしはらし)東部にある山。海抜148m。
高天原(たかまのはら)にあった山が地上に降ったとの伝説から、古来、神聖視され「天の香具山」と呼ばれる。
香具山(かぐやま)は、畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)、とともに大和三山のひとつ。

「てふ」が使われている和歌としては、この他に小野小町の「うたた寝に恋しき人を~」などがあります。


<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<作者>

持統天皇(じとうてんのう)
645年~702年。第41代天皇。天智天皇の第二皇女。天武天皇の皇后

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<和歌の基礎知識>

◎和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◎和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)>

・歌枕 :天の香具山

・句切れ :二句切れ
※万葉集の歌は二句切れ、四句切れ。

・体言止め :天の香具山

・枕詞 :この歌の「白妙の」を「衣」に係る枕詞とする説と、枕詞ではなく単に純白の布を示すとする説がある。
このブログの訳は「白い布」として枕詞説は採用していない。


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