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漢文 返り点の読み方・置き字・書き下し文の基礎知識

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 今回は、漢文を学習する上で最低限必要な「返り点(レ点・一二点・上下点・甲乙点)の読み方(読む順番)」、「置き字とは何か」、「書き下し文のルール」などの基礎知識について紹介します。


◇白文(はくぶん)=訓点(返り点・送り仮名・句読点など)のない漢文の原文。

◇訓読文(くんどくぶん)=白文に訓点(返り点・送り仮名・句読点など)を付けた文。
※句点(くてん)=《。》 読点(とうてん)=《、》

◇書き下し文(かきくだしぶん)=訓点に従って、漢字仮名交じりで書いた歴史的仮名遣い(※現代仮名遣いではない)の日本文。
※要するに「書き下し文=古文」ということ。

◆送り仮名=訓読に必要な助詞・活用語尾・副詞の一部などを補ったもので、漢字の右下に歴史的仮名遣いの小さなカタカナで書く。

※送り仮名は教科書や参考書・問題集によって違う場合がある。
たとえば、「マタ」と読む「復」・「亦」・「又」の場合、「復」は「復」のように「タ」を送るが、「亦」と「又」は慣用により「タ」を送らないで「亦」と「又」とするのが一般的(一部には「亦」としている教科書もある)。
「イワク」と読む「曰」は、参考書などでは「曰」としているものもあるが、最新の教科書ではほぼ「曰ハク」で統一されている。
また、「モッテ」と読む「以」は、教科書によって「以ツテ」としているものと「以」としているものとがあるなど。
いずれにしても、あなたの教科書や問題文の送り仮名に従ってください。


◆書き下し文のルール

①漢文に付いているカタカナの送り仮名は歴史的仮名遣いのまま平仮名で書く。
・例:「曰ハク」= ×「曰わく」・○「曰はく」、「曰」= ×「曰はく」・○「曰く」、「習」= ×「習う」・○「習ふ」
・例:「以ツテ」= ×「以って」・○「以つて」、「以」= ×「以つて」・○「以て」
※促音(そくおん)の「っ」や「ゃ・ゅ・ょ」などの拗音(ようおん)は、歴史的仮名遣いでは「つ・や・ゆ・よ」のように普通の大きさの字(並字)で表記するのが一般的。

②日本語の助詞や助動詞にあたる漢字は平仮名に直す。
・例(助詞):之(の)、与(と)、自(より)、耳(のみ)、乎(や・か・かな)など。
・例(助動詞):不(ず)、可(べし)、也(なり)、為(たり)、使(しむ)、如(ごとし)など。
※之(これ)、之(ゆく)、与(あたふ)、与(ともに)、為(ために)、為(なす)、使(つかふ)、如(もし)、如(しく)など、助詞・助動詞以外で使われているときは平仮名に直さない。

※ネット上や社会人向け書籍などでは、「曰わく」・「習う」・「如し」のように書き下しているものも多数ありますが、中高生などの漢文学習者は決して真似をしてはいけません。

③再読文字は最初の読みの部分は漢字+送り仮名、二度目の読みの部分は平仮名で書く。
・例:未。(未だ知らず。) 未=《未ダ(いまだ)~ず》
・例:将ハント。(将に買はんとす。) 将ント=《将ニ(まさに)~ントす》
・例:当。(当に学ぶべし。) 当=《当ニ(まさに)~べシ》
※この他に「宜」・「須」・「猶」・「盍」などの再読文字がある。

④訓読しない漢字(置き字)は書き下し文に書かない。
※下段の置き字の項を参照のこと。

⑤会話文・引用文の終わりの送り仮名「~」は、「と」を「」の外に出し、「~。」と。のように書く。
・例:子曰ハク、「愛スト。」(子曰はく、「人を愛す。」と。)
「~」と。でもOKだけど、「~。」と。で覚えておいた方がよい。


◆返り点=漢文の語順を日本語の語順に変更して読むための記号。

◇レ点(れてん) ※正式には「かりがねてん」という。
一文字だけ、下から上に返って読む記号。

B=BA
ABCD=ABDC
C=CBA
BCD=BADC

 (手を握る。)
ンズレバ (先んずれば即ち人を制す。) 
※即ち(「歴」すなはち・「現」すなわち)、先んずれ(さきんずれ)=サ変「先んず」の已然形
 (死せざるを求む。)
※不(ざる)=打消の助動詞「ず」の連体形
レバ (備へ有れば憂ひ無し。) 
※「憂ひ(「歴」うれひ・「現」うれい)
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◇一二点(いちにてん)
二文字以上離れた文字から上の文字に返って読む記号。
連続するときは「一・二・三・四・・・」のように数字を重ねる。
※「一・二・三・四・・・」の間は、いずれもニ文字以上離れている必要がある。

BC=BCA
BCD=BCDA
BCEF=BCAEFD
BCDE=BDECA
BCDEF=BCEFDA

故郷 (故郷を思ふ。)
百万人 (百万人に問ふ。)
クシテ人事天命 (人事を尽くして天命を待つ。)
タラント漢中。 (長く漢中に王たらんと欲す。)
元二使ヒスルヲ安西 (元二の安西に使ひするを送る。)


◇レ点と一二点の併用例

BCDE=BADEC
CD=CDBA
CD=CBDA
CDEF=CEFDBA

レテ故郷 (頭を低れて故郷を思ふ。) 
※頭(「歴」かうべ・「現」こうべ)、低れ(たれ)
百聞一見 (百聞は一見に如かず。) 
※如か(しか)、不(ず)=打消の助動詞「ず」の終止形、如かず=及ばない
ンバ虎穴、不虎子 (虎穴に入らずんば、虎子を得ず。) 
※虎穴(こけつ)、虎子(こじ)、不(ずん)=打消の助動詞「ず」の未然形(テキストによっては連用形)
※「ずんば」の「ん」は、漢文を訓読するときに習慣的に加える音(加音)で、他に「非ずんば」、「無くんば」など。
ムノ (魚を羨むの情有り。) 
※羨む(うらやむ)
ツテルニ天下 (以つて天下を取るに足らず。)

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◇上下点(じょうげてん)
下の文字から「一二点」をまたいで、さらに上の文字に返る記号。「上・中・下」の場合もある。

CD=CDBEA
BCDE=BDECFA
CDFG=CDBFGEA

書物 (書物を読む者無し。) 
狗盗 (能く狗盗を為す者有り。) 
※能く(よく)、狗盗(「歴」くたう・「現」くとう)、為す(なす)
児孫美田 (児孫の為に美田を買はず。)
※児孫(じそん)、為(ため)、美田(びでん)


◇レ点・一二点・上下点の併用例

DEG=DECFBAG
EF=EFDCBGA

外人フニ也。 (外人の為に道ふに足らざるなり。)
※道ふ(「歴」いふ・「現」いう)、也(なり)=断定の助動詞「なり」の終止形
スルヲ (其の親を愛するを知らざる者無し。)
※其の(その)


◇「一点とレ点」、「上点とレ点」との複合
下の文字から一文字だけ上に返り、返った文字を起点にさらに二文字以上返るときに使う。
※「甲点とレ点」との複合は高校レベルではまれ(最下段に例を記載)。

このブログの書式では表示できないので、上レ一レ(いちれてん)、上れ上レ(じょうれてん)とする。

BC一レD=BDCA
CD上レF=CDBFEA

一レルカヲ誰。 (此れ誰たるかを知る。)
※此れ(これ)、誰(たれ)、為(たる)=断定の助動詞「たり」の連体形
モスレバ一レ商。 (動もすれば参と商とのごとし。)
※動もすれば(ややもすれば)、参(しん)、与(と)=格助詞、如(ごとし)=比況の助動詞「ごとし」の終止形
カレツテナルヲ上レスコト (悪の小なるを以つて之を為すこと勿かれ。)
※之(これ)、為す(なす)、勿かれ(なかれ)
我之不一レルヲ明君 (我の明君に遇はざるを知る。)
※之(の)=格助詞、遇は(「歴」あは・「現」あわ)

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◇ハイフン「-」(正式には、「合符」または「竪点」)
二字以上の熟語に返る場合、熟語の一文字目に返り点を付け、続けて読み下す印として文字と文字の間に「-」を付ける。
※下から上の熟語に返るときに用いるのであって、熟語なら何でも「-」をつけるのではない。

このブログの書式では表示できないので、二ハイフンのようにハイフンを全角の青色で表示。

ABCDEF=ABEFCD ※もしもハイフンが無かったら、「ABDEFC」になりますね。
ABCEFG=ABFGCDE

吾日 (吾日に吾が身を三省す。) 
※吾(われ)、三省(さんせい)、吾が(わが)
ラン年之先ナルヲ於吾ヨリ乎。
(夫れ庸ぞ其の年の吾より先後生なるを知らんや。) 
※夫れ(それ)、庸ぞ(なんぞ)、其の(その)、先後生(せんごせい)、於=置き字、乎(や)=反語の終助詞

大王有一レリトスルニ (大王之を督過するに意有りと聞く。)
※この場合、三点とニ点の間は一字しか離れていませんが、ハイフンがあるために三点が付いている「意」は二字以上離れた「過」から返ることになるからOKなのです。
もし、この三点をレ点にしてしまうと、「督」の次は「過」と「意」の両方を読めることになって混乱するのです。

※なお、テキストによっては、返り点に関係なく、「何-如(いかん)」のように二字以上の漢字が結合して一つの意味を表す熟字を訓読み(=熟字訓)するとき、「鼓-之(こし)」のように下の文字を読まないときに「-」を用いる場合がある。


◇甲乙点(こうおつてん)
「上下点」で間に合わない時に、「甲乙丙丁点」を用いる。それでも間に合わなければ「天地人点」(高校レベルではまれ)を用いる。

DEGH=DCGHFIEBJA

バシテ太子スルヲ
(頸を延ばして太子の為に死するを欲せざる者莫し。)
※頸(くび)、莫し(なし)
一言ニシテツテ燕国之患ヒヲ、報将軍之仇
(一言にして以つて燕国の患ひを解き、将軍の仇に報ゆべき者有り。)
※一言(いちげん)、燕国(えんこく)、患ひ(「歴」うれひ・「現」うれい)、仇(あだ)、報ゆ(むくゆ)、可(べき)=可能の助動詞「べし」の連体形


◆置き字(おきじ)=文中でさまざまな働きをするが、訓読上は読まない字。
※而ルニ(しかるに)、而(なんぢ)、於イテ(おいて)、乎(や・か・かな)、焉クンゾ(いづくんぞ)など送り仮名や振り仮名が付いている場合は置き字ではない(振り仮名はない場合もある)。

◇「而(ジ)」
文中で前後の句を接続する働きをする。
文中で「テ・シテ・ニシテ」(順接)、「モ・ドモ」(逆接)などの送り仮名になる。
※「順接」(先行文と後続文が対立せずに順当)⇔「逆接」(先行文と後続文が矛盾・対立)

◇「於(オ)」「于(ウ)」「乎(コ)」
文中で場所・起点・対象・比較などを表す(英語の前置詞的な働き)。
文中で「ニ・ヨリ・ヨリモ」などの送り仮名になる。

◇「矣(イ)」「焉(エン)」
文末で断定・強調の意を表す。

◇「兮(ケイ)」
主に詩の中で語調を整える働きをする。

ヘテ (酒を供へて祈る。)
ルモ (大を識るも細を知らず。)
 (井の中に堕つ。)
リテヨリヨリ (耳より入りて口より出づ。)
良薬ケレドモアリ (良薬は口に苦けれども、病に利あり。)
リテヨリヨリ (青は之を藍より取りて、藍より青し。)
学之源流 (学の源流は遠し。)
ツテ (以つて号と為す。)
 (力は山を抜き気は世を蓋ふ。)
※蓋ふ(「歴」おほふ・「現」おおう)

◇この他に「也」も語気を強める働きで、たまに置き字になることがある。
子無カレヘテ一レラフコト (子敢へて我を食らふこと無かれ。)


◆最終チェック例文
君子ツテ一レ甲レ
(君子は其の人を養ふ所以の者を以つて人を害せず。)
※所以(ゆえん)
ルコトヒテ一レトスル不可トスル。 
(凡て人は其の可とする所に従ひて其の不可とする所を去らざること莫し。)
※凡て(すべて)

はい、あとは故事成語などの文章を読んで練習しましょうね。
◇漢文 《故事成語・史話・文章》


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とても分かりやすくて参考になりました!ありがとうございます!!

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