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死諸葛走生仲達(十八史略) 書き下し文と現代語訳

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 今回は、十八史略「死諸葛走生仲達(死せる諸葛生ける仲達を走らす)」の白文(原文)、訓読文、書き下し文、現代語訳(口語訳・意味)、読み方(ひらがな)、語句・文法・句法解説、おすすめ書籍などについて紹介します。


【死諸葛走生仲達:死せる諸葛生ける仲達を走らす:しせる しょかつ いける ちゅうたつを はしらす】
《十八史略:じゅうはっしりゃく》


<原文>

蜀漢丞相亮、悉衆十万、又由斜谷口伐魏、進軍渭南。魏大将軍、司馬懿引兵拒守。

亮数挑司馬懿戦。懿不出。乃遺以巾幗婦人之服。亮使者至懿軍。懿問其寢食及事煩簡、而不及戎事。使者曰、「諸葛公夙興夜寐、罰二十以上皆親覧。所噉食不至数升。」懿告人曰、「食少事煩。其能久乎。」亮病篤。有大星、赤而芒。墜亮営中。未幾亮卒。長史楊儀整軍還。百姓奔告懿。懿迫之。姜維令儀反旗鳴鼓、若将向懿。懿不敢逼。百姓為之諺曰、「死諸葛走生仲達。」懿笑曰、「吾能料生、不能料死。」


<死諸葛走生仲達の意味>

死後も生前の威勢で相手を恐れさせる。



◇送り仮名や句読点や句読点などは本によって若干違う場合があるので、あなたのテキストに従ってください。

◇書き下し文のルールについては、このページ下段に記載しています。

◇返り点の読み方、置き字などについて知りたい場合は、「漢文の基礎知識」を読んでね。

◇現代仮名遣いのルールについて知りたい場合は、「現代仮名遣いの基礎知識」をどうぞ。



《白》 白文
《訓》 訓読文(返り点・送り仮名・句読点など) ※返り点送り仮名 ※置き字
《書》 書き下し文(歴史的仮名遣い)
《仮》 読み方・現代仮名遣い(ひらがな)
《訳》 現代語訳(口語訳)
※《別の訓読および読みなどがある場合は、その主なものを訳の下に記載》


《白》 蜀漢丞相亮悉衆十万又由斜谷口伐魏進軍渭南
《訓》 蜀漢丞相亮、悉クシテ衆十万、又由斜谷口、進ミテ渭南
《書》 蜀漢の丞相亮、衆十万を悉くして、又斜谷口より魏を伐ち、進みて渭南に軍す。
《仮》 しょくかんの じょうしょう りょう、しゅう じゅうまんを つくして、 また やこくこうより ぎを うち、 すすみて いなんに ぐんす。
《訳》 蜀漢の丞相である諸葛亮は、兵十万を総動員して、再び斜谷口から魏を攻め、前進して渭水の南に布陣した。

《白》 魏大将軍司馬懿引兵拒守
《訓》 魏大将軍司馬懿、引キテ拒守
《書》 魏の大将軍司馬懿、兵を引きて拒守す。
《仮》 ぎの たいしょう しばい、 へいを ひきて きょしゅす。
《訳》 魏の大将軍である司馬懿は、兵を引いて防ぎ守った。

《白》 亮数挑司馬懿戦懿不出
《訓》 亮数挑司馬懿ヒヲ。懿不
《書》 亮数懿に戦ひを挑む。懿出でず。
《仮》 りょう しばしば いに たたかいを いどむ。 い いでず。
《訳》 諸葛亮はたびたび(魏の重臣)司馬懿に戦いを挑んだ。(しかし)懿は(亮を恐れて戦いに)出てこなかった。
※《亮 → 諸葛亮》 《挑む。 → 挑めども、》
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《白》 乃遺以巾幗婦人之服亮使者至懿軍
《訓》 乃ルニツテス巾幗婦人之服。亮使者至
《書》 乃ち遺るに巾幗婦人の服を以つてす。亮の使者懿の軍に至る。
《仮》 すなわち おくるに きんかく ふじんのふくを もってす。 りょうの ししゃ いの ぐんに いたる。
《訳》 そこで(亮は懿を男らしくない臆病者だと辱めて挑発するために)女性用の髪飾りと婦人服を贈った。亮の使者が魏の軍にやって来た。

《白》 懿問其寢食及事煩簡而不及戎事
《訓》 懿問ヒテ寢食及煩簡戎事
《書》 懿其の寝食及び事の煩簡を問ひて、戎事に及ばず。
《仮》 い その しんしょく および ことの はんかんを といて、 じゅうじに およばず。
《訳》 (すると)懿は(使者に)亮の寝る時間や食事の量および仕事は忙しいのか暇なのかを尋ねて、軍事には(質問が)及ばなかった。
※《問ひて、 → 問ふも、》

《白》 使者曰諸葛公夙興夜寐罰二十以上皆親覧所噉食不至数升
《訓》 使者曰ハク、「諸葛公夙、罰二十以上皆親。所噉食スル数升。」
《書》 使者曰はく、「諸葛公夙に興き夜に寐ね、罰二十以上は皆親ら覧る。噉食する所は数升に至らず。」と。
《仮》 ししゃ いわく、 「しょかつこう つとに おき よわに いね、 ばつ にじゅう いじょうは みな みずから みる。 たんしょくする ところは すうしょうに いたらず。」と。
《訳》 使者が(それに答えて)言った、「諸葛公は朝は早くに起きられ夜は遅くに寝られ、罰が杖打ち二十回以上は、すべてご自分でお取り調べになる。お食事の量は(一日に)数升に満たない(ほどわずかです)。」と。
※《諸葛公 → 諸葛公は》

《白》 懿告人曰食少事煩其能久乎
《訓》 懿告ゲテハク、「食少ナク事煩ハシ。其シカラン。」
《書》 懿人に告げて曰はく、「食少なく事煩はし。其れ能く久しからんや。」と。
《仮》 い ひとに つげて いわく、 「しょく すくなく こと わずらわし。 それ よく ひさしからんや。」と。
《訳》 (これを聞いて)懿は(周囲の)人に告げて言った、「(諸葛亮の)食事は少なく仕事は多忙だ。どうして長生きできるだろうか、いや、できないだろう。」と。
※《少なく → 少なくして》

《白》 亮病篤有大星赤而芒
《訓》 亮病篤。有大星、赤クシテアリ
《書》 亮病篤し。大星有り、赤くして芒あり。
《仮》 りょう やまい あつし。 たいせい あり、 あかくして ぼう あり。
《訳》 (そのとおりに)亮は重病になった。(そしてある夜)大きな星が現れ、赤く長い光の尾を引いていた。
※《大星有り、 → 大星有り。》

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《白》 墜亮営中未幾亮卒
《訓》 墜営中。未シテナラ亮卒
《書》 亮の営中に墜つ。未だ幾ならずして亮卒す。
《仮》 りょうの えいちゅうに おつ。 いまだ いくばくならずして りょう しゅっす。
《訳》 (それが)亮の陣中に落ちた。(そのから)まだいくらもたたないうちに亮は死んだ。

《白》 長史楊儀整軍還
《訓》 長史楊儀整ヘテ
《書》 長史楊儀軍を整へて還る。
《仮》 ちょうしようぎぐんをととのえてかえる。
《訳》 (亮が死んだので蜀の)長史の楊儀は軍を整えて引き上げた。

《白》 百姓奔告懿懿迫之
《訓》 百姓奔リテ。懿迫
《書》 百姓奔りて懿に告ぐ。懿之を追ふ。
《仮》 ひゃくせい はしりて いに つぐ。 い これを おう。
《訳》 (それを見た)人民がかけつけて(このことを)懿に告げた。懿は蜀軍を追撃した。

《白》 姜維令儀反旗鳴鼓若将向懿
《訓》 姜維令ヲシテラシ、若一レクセルガカハント
《書》 姜維儀をして旗を反し鼓を鳴らし、将に懿に向かはんとするがごとくせしむ。
《仮》 きょうい ぎをして はたを かえし こを ならし、 まさに いに むかわんと するが ごとくせしむ。
《訳》 (蜀の将軍)姜維は楊儀に旗の向きを変えて進軍の太鼓を鳴らし、いまにも懿に向かおうとしているように(見せかけ)させた。
※《鳴らし → 鳴らして》
※比況の助動詞「若し(ごとし)」は平仮名で書き下すが、「若くせ」をサ変複合動詞「若くす」の未然形とする考えもあり、その場合は漢字のまま書き下す。

《白》 懿不敢逼百姓為之諺曰死諸葛走生仲達
《訓》 懿不ヘテ。百姓為リテハク、「死セル諸葛走ラストケル仲達。」
《書》 懿敢えて逼らず。百姓之が諺を為りて曰はく、「死せる諸葛生ける仲達を走らす。」と。
《仮》 い あえて せまらず。 ひゃくせい これが ことわざを つくりて いわく、 「しせる しょかつ いける ちゅうたつを はしらす。」と。
《訳》 (すると亮がまだ生きているのではないかと疑った)懿は無理に近づこうとしなかった。人民がこのことを諺にして言った、「死んだ諸葛が生きている仲達(=懿)を逃走させた。」と。
※《為りて → 為して:なして》
※《之が諺を為りて → 為シテ:之が為に諺して:これが ために ことわざして》

《白》 懿笑曰吾能料生不能料死
《訓》 懿笑ヒテハク、「吾能ルモ、不。」
《書》 懿笑ひて曰はく、「吾能く生を料るも、死を料る能はず。」と。
《仮》 い わらいて いわく、 「われ よく せいを はかるも、 しを はかる あたわず。」と。
《訳》 (これを聞いた)懿は(無理に)笑って言った、「私は生きている者(のすること)は見当をつけることができるが、死んだ者(のすること)は見当をつけることができない。」と。

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<語句・文法・句法解説>

蜀漢 :三国時代に劉備が漢を再興するとして建てた国。

丞相 :君主を支える最高位の大臣。

亮 :諸葛亮(181年~234年)。字(あざな)は孔明。

悉 :出し尽くす。総動員する。

衆 :軍隊。兵。

斜谷口 :長安の南東にある谷の入口。

軍 :陣取る。布陣する。

渭南 :渭水の南岸、五丈原一帯のこと。

魏 :三国時代に曹操の子である曹丕が建てた国。

大将軍 :軍の最高責任者。

司馬懿 :魏の重臣。字は仲達(179年~254年)。

拒守 :(敵を寄せつけないよう)防ぎ守る。

乃 :そこで。

巾幗 :女性の髪を包む布。髪飾り。

事煩簡 :仕事が忙しいか暇であるか。 煩=忙しいこと。簡=暇なこと。

而 :置き字。この文章では「~テ・シテ」の送り仮名になっている。

戎事 :軍事。戦争。

夙興夜寐 :朝早く起き夜遅く寝る。

罰二十 :杖でニ十回打つ刑罰。刑罰の内で最も軽いものの一つ。

所噉食 :食事の量。食べるもの。

升 :当時の一升は約0.2リットル。

其~乎 :どうして~だろうか、いや、~ない。《反語》 

能 :~できる。《可能》

篤 :病気が重い。

芒 :彗星が長く尾を引いて光る様子のことで、悪いことの予兆。

未 :まだ~ない。《再読文字》

卒 :(高官などが)死ぬ。

長史 :役人を管理・監督する役職。

楊儀 :諸葛亮の部下。

百姓 :人民。庶民。

奔 :かけつける。

姜維 :蜀の将軍。

令 :「使」と同じ。令ヲシテ(AにBさせる)《使役》

若 :~ようだ。《比況》

将 :いまにも~しようとする。《再読文字》

不敢 :無理に~しない。しいて~しない。 (強い否定を表して)決して~しない。

走 :逃げる。

料 :見当をつける。推し量る。

不能 :~できない。《不可能》


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<漢文の学習書と漢和辞典の記事>

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<書き下し文のルール>

◇書き下し文(かきくだしぶん)とは、訓点(返り点・送り仮名・句読点など)に従って、漢字仮名交じりで書いた歴史的仮名遣いの日本文のこと。

①漢文に付いているカタカナの送り仮名は歴史的仮名遣いのまま平仮名で書く。

②日本語の助詞や助動詞にあたる漢字は平仮名に直す。

③再読文字は最初の読みの部分は漢字+送り仮名、二度目の読みの部分は平仮名で書く。
・例:未。(未だ知らず。) 

④訓読しない漢字(置き字)は書き下し文に書かない。

⑤会話文・引用文の終わりの送り仮名「~」は、「と」を「」の外に出し、「~。」と。と書く。
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