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百人一首(7) 天の原ふりさけ見れば春日なる 品詞分解と訳

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 今回は、「小倉百人一首」収録和歌(歌番号 7番)の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・作者・出典・英訳・MP3音声・おすすめ書籍などについて紹介します。


小倉百人一首 歌番号(7) 阿倍仲麻呂
  

天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも


<読み(発音)>

アマノハラ フリサケミレバ カスガナル ミカサノヤマニ イデシツキカモ


<音声> ※音声はDownloadして自由に使って下さい。

百人一首007.mp3
(クリックすると、ちょっと音痴なカワイイ棒読みちゃんが歌を読んでくれます。)


<現代語訳>

大空を遠く仰いで見るとそこにある月は、かつて故郷の春日にある三笠の山に出たのと同じ月なのだなあ。

遣唐使として派遣された仲麻呂さんが、帰国する時の餞別の宴で月を見て詠んだ歌です。やっぱり、故郷が懐かしく、帰国することが嬉しかったんでしょうね。結局は叶わなかったけれど・・・。

それにしても、遣唐使として留学して、科挙に登第するって、どれだけ頭が良かったんでしょうかね。

この歌を見ると、昔読んだ「天平の甍 井上靖 (新潮文庫)」を思い出します。


<英訳>

When I look up at
The wide-stretched plain of heaven,
Is the moon the same
That rose on Mount Mikasa
In the land of Kasuga?
  
『University of Virginia Library Japanese Text Initiative, Ogura Hyakunin Isshu 100 Poems by 100 Poets 』 より英訳を引用


<作者>

阿倍仲麻呂(あべのなかまろ) 安倍仲麻呂、安倍仲麿とも。
698年~770年。奈良時代の遣唐留学生。717年に吉備真備らと唐に留学。科挙に合格し玄宗皇帝の寵遇を受けた。751年に遣唐使の藤原清河らとともに帰国途中、暴風のために安南に漂着。再び唐朝に仕え唐に没す。李白や王維とも親交をもつ。唐名は朝衡(ちょうこう)。
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<出典>

古今集・巻9・羇旅歌・406 
「唐土(もろこし)にて月を見て詠みける・阿倍仲麻呂」
(中国で月を見て詠んだ歌)

・古今集の左注

この歌は、昔、仲麻呂を唐土にもの習はしにつかはしたりけるに、あまたの年を経て、え帰りまうで来ざりけるを、この国より、また使ひまかり至りけるに、たぐひてまうで来なむとて、出で立ちけるに、明州といふ所の海辺にて、かの国の人、うまのはなむけしけり。夜になりて、月のいとおもしろくさし出でたりけるを見てよめるとなむ、語り伝ふる。

(この歌は、昔、仲麻呂を中国に学問をさせに(留学生として)派遣していたところ、長い年月を経過して、帰国することが出来ないでいましたが、わが国から、また遣唐使が到着しましたので、いっしょに帰国しようと思って出発したところ、明州(今の中国浙江省寧波)という所の海岸で、その国の人(中国人)たちが、送別の宴をしてくれた。夜になって、月がたいそう美しく上がって来たのを見て詠んだ歌であると、語り伝えている。)

※左注(さちゅう)=和歌の左側に付ける注記。
ちなみに、詞書(ことばがき)=和歌の前書き。万葉集では題詞(だいし)。

※敬語「まうで来・まかる」(参ります。)について
ここでは多少意訳した。この「まうで来」や「まかる」は難しいので、ここでは説明を省きますが、詳しく知りたい方は 「敬語の基礎知識」下段の「荘重体敬語」を参照してください。
また、ここでの「つかはす」は敬意が弱まったもので「派遣する」の意味。

・「え~打消」=不可能(~できない。)を表わす構文。頻出の基本構文ですね。

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<品詞分解・語句文法解説>

天の原(あまのはら) :名詞 広々とした大空。

ふりさけ見れ :動詞マ行上一段活用「ふりさけ見る」の已然形 遥か遠くを仰ぎ見る。
※下記の文法特記参照のこと。

ば :順接確定条件(偶然的条件)の接続助詞 ~すると。

春日(かすが) :名詞 今の奈良市一帯の丘陵地。

なる :存在(断定)の助動詞「なり」の連体形

三笠の山(みかさのやま) :歌枕 春日神社の後方にある山(標高283m)。

に :格助詞

出で(いで) :動詞ダ行下二段活用「出づ(いづ)」の連用形

し :過去の助動詞「き」の連体形

月 :名詞

かも :詠嘆の終助詞


<文法特記>

『 ふりさけ 』(カ行下二段)
「ふり」は勢いがよいという意味の接頭語。「さけ」は「さく(放く・離く)」の連用形で視線を放つという意味。

◇「天の原ふりさけ見れば」や「春日なる三笠の山」は、山部赤人の「天地の~」など万葉集に数首見られる表現。


<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<和歌の基礎知識>

◎和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◎和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)>

・歌枕 :三笠の山


<関連 :土佐日記>

土佐日記 正月二十日(阿倍仲麻呂の歌)では初句を青海原として引用。

青海原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも

(青々とした海をはるか遠くに見渡すと、海の上に出ているこの月はかつて春日にある三笠の山に出ていたのと同じ月なのだなあ。)

青海原(あをうなばら) :青々とした海。

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<関連 :ヨルタモリ>

日本古典文学講座 第8回 百人一首 (2015/05/24)
国文学者 李澤京平(すももざわきょうへい)教授

七 安部君麻呂(あべのきみまろ)


海女の腹振り分け見ればかすかなる みすじの山に出し塩かも


<読み>

あまのはら ふりわけみれば かすかなる みすじのやまに いでししおかも


<歌意・解説>

「海の女=海女(あま)」とワザワザ書いているのはナゼか?それは「海の男=海人(あま)」と区別するためであり、これは「じぇじぇじぇ」の「あまちゃん」で知られる「海女(あま)」さんを詠んだ歌である。
その海女さんのお腹をちょっと見たわけだが、なぜワザワザそのお腹を見たのか?
普段なら海女さんを見ても「ああ、アワビを採ってるなあ、ウニを採ってるなあ」くらいにしか思わないだろうが、旅というものは人に通常とは違う興味を抱かせるもの。
この当時の海女さんは上半身裸で、もちろんお腹も丸見え。そのお腹に興味を持ってしまったのは、旅がもたらす異常な興奮によるものといえよう。
作者が海女さんのお腹をちょっと見たところ、かすかに三筋の山があった。つまり、その海女さんは三段腹だったのである。
夏の日に、海から上がって休憩していた海女さん。そして、その三段腹にできた溝、おそらく、そこには海水が溜まり、それが時間とともに蒸発してしまったのであろう、その溝にはかすかに塩が見えたという、旅が人にもたらす心理を巧みに詠み込んだ秀歌である。


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