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古今集 山高み見つつわがこし桜花 品詞分解と訳

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今回は、「古今和歌集」収録の「を・み構文」の和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。


古今集・巻2・春歌下・87 つらゆき(紀貫之:きのつらゆき)

比叡にのぼりて、帰りまうできてよめる
(比叡山延暦寺に参詣して、帰参して詠んだ歌。)


山高み見つつわがこし桜花風は心にまかすべらなり


<平仮名>

やまたかみ みつつわがこし さくらばな かぜはこころに まかすべらなり


<現代語訳>

山が高いので名残りを惜しんで、遠くからながめながら帰って来たあの桜の花を、風は思いのままに散らしているようだ。


<語句文法解説> 詞書

帰りまうでき :謙譲語・動詞カ行変格活用「帰り詣で来(かへりまうでく)」の連用形 (尊い所へ)帰って来る。帰参する。


<品詞分解・語句文法解説> 歌

山 :名詞

高 :形容詞ク活用「高し」の語幹

み :接尾語 ※下の文法特記を参照のこと。

見 :動詞マ行上一段活用「見る」の連用形

つつ :接続助詞 何度も~して。~ながら。

わ :代名詞

が :格助詞

こ :動詞カ行変格活用「来(く)」の未然形

し :過去の助動詞「き」の連体形 
◇「来し」と書いてある場合に「し」と読んでしまった人は下の文法特記を参照のこと。

桜花 :名詞

風 :名詞

は :係助詞

心 :名詞

に :格助詞

まかす :動詞サ行下二段活用「任す」の終止形 
※心にまかす :思う通りにする。

べらなり :推量の助動詞「べらなり」の終止形 ~ようだ。
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<文法特記>

◇「AをBみ」の「を・み構文」 :(原因理由を表し)AがBなので。

名詞+間投助詞「を」+形容詞語幹+接尾語「み」 (「山高み」は、間投助詞「を」が省略された形。)
※なお、形容詞シク活用の語幹の扱いには説の違いがあるので、シク活用の場合は《「を」+「シク活用・終止形」+「み」》で覚えておいた方がよい(例:野をなつかしみ)。

例 :「苫をあらみ」「瀬を早み」「人言を繁み」「人目を多み」「潟を無み」「野をなつかしみ」「国遠み」「山深み」

助動詞「べし」などの形容詞型活用語の語幹+接尾語「み」の形もある。
例 :「知りぬべみ」「泣きぬべみ」「散り過ぎぬべみ」

※このブログで取り上げた、「を・み構文」の和歌としては、「秋の田のかりほの庵の~」「若の浦に潮満ち来れば~」などなど。

◇「来し」の読み方

通常は連用形接続である過去の助動詞「き」が、カ変・サ変には未然形&連用形に接続する特殊接続(こし、こしか、きし、きしか、せし、せしか、しき)なので、「来し」の読み方を、「こし」or「きし」で迷う人がいるようですが、「来し」は、ほとんどの場合「こし」です。
「きし」と読むのは「来し方(こしかた)or(きしかた)」(たどって来た方角。過ぎ去った時。)の形の一部。
源氏物語や蜻蛉日記で見られる程度の限定的なものです。


<作者>

紀貫之(きのつらゆき)
870頃~945年頃。平安前期の歌人。三十六歌仙の一人。古今集の撰者の一人で仮名序の執筆者とされている。土佐日記で仮名日記文学を創始。歌風は理知的技巧的で繊細優美。家集は「貫之集」。美濃介・土佐守などを経て従五位上・木工権頭に至る。

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<古典文法の基礎知識>

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<修辞法(表現技法)>

頭韻(とういん)=句の頭の音が第二句を除いて「ア段音」

脚韻(きゃくいん)=句の終わりの音が第三句を除いて「イ段音」


<私の一言>

この歌の「こし」を、「来し」ではなく、「越し」と解釈する説もあるようです。

詞書が、「比叡にのぼりて、帰りまうできてよめる」だから、山を越したと解釈するのは不自然かな?

「新版 古今和歌集 現代語訳付き 角川ソフィア文庫」の訳も、

「山が高いので見続けるだけで帰ってきた、その桜花を風は自分の思うとおりに吹き散らすようだ。」

ちなみに、比叡山の標高は848mです。


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