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古今集・伊勢 世の中に絶えて桜のなかりせば 品詞分解と訳

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 今回は、「古今和歌集」と「伊勢物語 渚の院」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。

◇「渚の院」第二首目(返歌)「散ればこそ~」は、「こちらのリンク(散ればこそ~)」からどうぞ。

◇「渚の院」のこの他の和歌は、「リンク(狩り暮らし~)」「リンク(飽かなくに~)」からどうぞ。


古今集・巻1・春歌上・53 在原業平朝臣(在原業平:ありわらのなりひら) & 伊勢物語 第82段 「渚の院」(第一首目)
※朝臣(あそん)は、五位以上の人の姓名につける敬称。

古今集 詞書

渚院にて桜を見てよめる
 (渚の院で桜を見て詠んだ歌)


世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし


<平仮名>

よのなかに たえてさくらの なかりせば はるのこころは のどけからまし


<現代語訳>

もしこの世の中に全く桜というものがなかったなら、春における人の心はのどかであるだろうに。

(本来、のどかな季節であるはずの春だが、桜を愛するあまりに、咲くのを待ちこがれ、散るのを惜しむような落ち着かない様子を反実仮想「せば~まし」構文を用いて逆説的に詠んだ歌。まさに春を代表する和歌ですね。)


<語句文法解説> 詞書

渚院(なぎさのゐん)
もと文徳天皇(もんとくてんのう)の離宮で、のちに第一皇子惟喬皇子(これたかのみこ)の別邸。今の大阪府枚方市渚元町にあった。
渚=波打ち際。院=貴人の邸宅。

よめ :動詞マ行四段活用「詠む」の已然形

る :完了の助動詞「り」の連体形
※準体法なので、この場合は「歌」を補って解釈する。

※準体法、「る」の識別については、下にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。
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<品詞分解・語句文法解説> 歌

世の中 :名詞

に :格助詞

絶えて :打消の語と呼応する副詞(陳述の副詞) 全く(~ない)。
※ここでの打消の語は「なかり」。

桜 :名詞

の :主格の格助詞 ~が。

なかり :形容詞ク活用「なし」の連用形

せ :過去の助動詞「き」の未然形
※一部に、サ変「す」の未然形とする説もある。

ば :順接仮定条件の接続助詞 ~ならば。

春 :名詞

の :連体格の格助詞 ~の。

心 :名詞

は :係助詞

のどけから :形容詞ク活用「のどけし」の未然形 のどかだ。

まし :反実仮想の助動詞「まし」の終止形
※「せば~まし」 :反実仮想の構文。 (もし)~だったら~だろうに。

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<文法特記>

反実仮想の構文。 (もし)~だったら~だろうに。
※反実仮想の構文は、「せば~まし」、「ませば~まし」、「ましかば~まし」、「仮定(未然形+ば)~まし」の4つがある。

「反実仮想」=事実とは反対のことを仮定して想像する。

この歌の事実は、「桜があるから、(いつ咲くかなあ、雨で散ったりしないだろうかなどと)そわそわして落ち着かない。(それほど桜はすばらしい。)」

※「せば~まし」を使った代表歌としは、この歌の他に小野小町の「思ひつつ~」 などがありますね。

※接続助詞「ば」については、下にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。

◇たまに、この歌が小倉百人一首に撰集されていると思っている人たちもいるようですが、在原業平の歌で小倉百人一首に撰集されているのは、17番「ちはやぶる~」ですよ。


<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。

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<作者>

在原業平(ありわらのなりひら)
825年~880年。六歌仙、三十六歌仙の一人。平城(へいぜい)天皇の皇子である阿保(あぼ)親王の第五子、母は桓武天皇の皇女である伊都(いと)内親王。在原の姓を賜って皇族の身分を離れ臣籍に下る。在原行平の異母弟。容姿端麗、奔放でおおらかな性格であったといわれており、「伊勢物語」の主人公「昔男」のモデル。また、「源氏物語」の主人公「光源氏」のモデルとする説も一部にはある。蔵人・右馬頭などを経て蔵人頭・右近権中将・美濃権守に至る、従四位上。在五中将(在原家の五男の意味)、在中将と呼ばれた。朝臣(あそん)は、五位以上の人の姓名につける敬称。


<和歌の基礎知識>

◎和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◎和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)>

・修辞法は特にありません。

◇この歌の「句切れ」を検索している人たちがいるようなので書いておきますが、この歌は「句切れなし」ですよ。歌の途中に意味上の切れ目(文が終止している所)がないでしょ。
「句切れ」が分からない人は、上にリンクをつけてある「修辞法の基礎知識」を読んでね。


<和歌索引>

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<古文や和歌の学習書と古語辞典>

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◇関連記事 (前後の7記事を表示)
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