HOME > 枕草子 > 枕草子(299段) 雪のいと高う降りたるを 品詞分解と現代語訳

枕草子(299段) 雪のいと高う降りたるを 品詞分解と現代語訳

Sponsored Links
 今回は、「枕草子 雪のいと高う降りたるを(香炉峰の雪)」の原文・現代語訳(口語訳)・品詞分解(文法的説明)・語句の意味・文法解説・敬語(敬意の方向)・係り結び・鑑賞・おすすめ書籍などについて紹介します。


 「枕草子(まくらのそうし) 雪のいと高う降りたるを 299段(全282段)(能278段)」(清少納言)

 ※枕草子は伝本・注釈書によって章段の区切り方が違うことを常識として知っておいて下さい。
   代表的な「日本古典文学大系」の他に「日本古典全書 枕冊子」「能因本」の段数もカッコ内に示す。
   枕草子は作品名や冒頭の文章で検索しましょうね。段数で検索をすると損をしますよ。


<原文>

◇全文の「現代仮名遣い・発音・読み方(ひらがな)」は下記の別サイトからどうぞ。
《⇒現代仮名遣いサイトへ行く》

 雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子(みかうし)まゐりて、炭櫃(すびつ)に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、「少納言(せうなごん)よ、香炉峰(かうろほう)の雪、いかならむ」と仰せらるれ(おほせらるれ)ば、御格子あげさせて、御簾(みす)を高くあげたれば、笑はせたまふ。

 人々も、「さることは知り、歌などにさへうたへど、思ひこそよらざりつれ。なほ、この宮の人には、さべきなめり」と言ふ。 


<現代語訳>

 雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもと違って御格子をお下ろしして、炭櫃に火をおこして、(女房たちが)世間話などをして集まって(中宮様の)おそばにお控え申し上げているときに、(中宮様が)「少納言よ、香炉峰の雪はどんなでしょう」とおっしゃるので、(女官に)御格子を上げさせて、(私が)御簾を高く上げたところ、(中宮様は満足そうに)お笑いになる。

 (他の)女房たちも、「そのような(詩句のある)ことは(私たちも)知っており、歌などにまで歌うけれども、(そうすることは)思いもよりませんでした。やはり、この中宮様にお仕えする人としては、(あなたは)ふさわしい方のようだ」という。


<作者>

清少納言(「現」せいしょうなごん・「歴」せいせうなごん)
966年頃~1020年代頃。平安時代中期の歌人・随筆文学作者。枕草子は随筆文学の傑作。父は清原元輔、曾祖父は清原深養父。清少納言は女房名で姓の「清」と家格を表す「少納言」に由来するといわれる。橘則光と結婚し則長を生むが離婚。993年頃から一条天皇の中宮定子に仕えた。和漢の才能に優れ、約10歳年下の定子に愛されたが、定子の父である関白藤原道隆の死とともに権力は道長に移り、定子は24歳の若さで悲運の死を遂げる。定子の死後は宮仕えを辞し、藤原棟世と再婚したというが、晩年は不遇であったともいわれている。
Sponsored Links
<品詞分解(文法的説明=文法解釈)>

◇主要な品詞を色別表示にした見やすい品詞分解を別サイトに作成しました。
《⇒品詞色別表示の品詞分解サイトへ行く》

 ※活用の基本形を、ひらがなで示した。動詞は、品詞名を省略した。
 ※二通りの解釈や説がある場合、「たる【存続(完了)・・・】」などのように示した。

 雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、
 雪【名詞】 の【格助詞】 いと【副詞】 高う【形容詞・ク活用「たかし」の連用形:「高く」のウ音便】 降り【ラ行四段活用「ふる」の連用形】 たる【存続(完了)の助動詞「たり」の連用形】 を【接続助詞】、 例【名詞】 なら【断定の助動詞「なり」の未然形】 ず【打消の助動詞「ず」の連用形】 御格子【名詞】 まゐり【ラ行四段活用「まゐる」の連用形:謙譲の本動詞】 て【接続助詞】、 

炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、
炭櫃【名詞】 に【格助詞】 火【名詞】 おこし【サ行四段活用「おこす」の連用形】 て【接続助詞】、 物語【名詞】 など【副助詞】 し【サ行変格活用「す」の連用形】 て【接続助詞】 集まり【ラ行四段活用「あつまる」の連用形】 さぶらふ【ハ行四段活用「さぶらふ」の連体形:謙譲の本動詞】 に【接続助詞】、

「少納言よ、香炉峰の雪、いかならむ」
「少納言【名詞】 よ【間投助詞】、 香炉峰【名詞】 の【格助詞】 雪【名詞】 いかなら【形容動詞・ナリ活用「いかなり」の未然形】 む【推量の助動詞「む」の終止形】」
※疑問語「いかなり」に呼応して、「む」(連体形)で結ぶとする説もある。

と仰せらるれば、御格子あげさせて、
と【格助詞】 仰せらるれ【ラ行下二段活用「おほせらる」の已然形:尊敬の本動詞】 ば【接続助詞】、 御格子【名詞】 あげ【ガ行下二段活用「あぐ」の連用形】 させ【使役の助動詞「さす」の連用形】 て【接続助詞】、
※仰せ【サ行下二段活用「おほす」の未然形:尊敬の本動詞】+らるれ【尊敬の助動詞「らる」の已然形】とする場合もある。

御簾を高くあげたれば、笑はせたまふ。
御簾【名詞】 を【格助詞】 高く【形容詞・ク活用「たかし」の連用形】 あげ【ガ行下二段活用「あぐ」の連用形】 たれ【完了の助動詞「たり」の已然形】 ば【接続助詞】、 笑は【ハ行四段活用「わらふ」の未然形】 せ【尊敬の助動詞「す」の連用形】 たまふ【ハ行四段活用「たまふ」の終止形:尊敬の補助動詞】。

 人々も、「さることは知り、歌などにさへうたへど、思ひこそよらざりつれ。
 人々【名詞】 も【係助詞】  「さる【ラ行変格活用「さり」の連体形】 こと【名詞】 は【係助詞】 知り【ラ行四段活用「しる」の連用形】、 歌【名詞】 など【副助詞】 に【格助詞】 さへ【副助詞】 うたへ【ハ行四段活用「うたふ」の已然形】 ど【接続助詞】、 思ひ【ハ行四段活用「おもふ」の連用形】 こそ【係助詞】 よら【ラ行四段活用「よる」の未然形】 ざり【打消の助動詞「ず」の連用形】 つれ【完了の助動詞「つ」の已然形】。
※さる【連体詞】とする場合もある。

なほ、この宮の人には、さべきなめり」と言ふ。
なほ【副詞】、 こ【代名詞】 の【格助詞】 宮【名詞】 の【格助詞】 人【名詞】 に【格助詞】 は【係助詞】、 さ【ラ行変格活用「さり」の連体形:「さる」の撥音便無表記】 べき【当然の助動詞「べし」の連体形】 な【断定の助動詞「なり」の連体形:「なる」の撥音便無表記】 めり【婉曲の助動詞「めり」の終止形】」  と【格助詞】 言ふ【ハ行四段活用「いふ」の終止形】。

Sponsored Links


<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◆「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◆「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◆「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◆「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◆「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<語句・文法解説>

◇主な敬語については、「敬意の主体」(誰から)→「敬意の対象」(誰へ)を示した。

いと :たいそう。非常に。

「雪のいと高う降りたるを」
「の」は主格の格助詞(~が)、「を」は逆接の接続助詞(~のに)、「高う」は高く」のウ音便。

「降りたる」の「たる」などの存続の助動詞「たり」や助動詞「む」など、主な助動詞の意味については、上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。

例ならず :いつもと違って。
※雪が降った時には御格子を上げて雪を鑑賞するのが普通であったが、(または、いつもなら御格子を上げている時刻であったが、)この日は寒さが厳しかったので下ろしたままにしていたということ。

御格子「まゐり」て :謙譲の本動詞:御格子をお下ろしして。(※御格子を上げる場合にも下げる場合にも用いる。)
◇「作者(清少納言)」→「中宮定子」への敬意。

炭櫃(すびつ) :角火鉢。

さぶらふ :謙譲の本動詞:伺候する。おそばにお控え申し上げる。
◇「作者(清少納言)」→「中宮定子」への敬意。

香炉峰 :中国江西省北部の廬山(ろざん)の最高峰。

いかなら :どんなだ。

「香炉峰の雪、いかならむ」
雪景色を眺めたい中宮定子が普通に眺めたいと言ったのでは風流ではないので、白居易の詩の一節を踏まえ、趣向を変えて清少納言に尋ねた言葉。

「白氏文集」&「和漢朗詠集・山家・554」 白居易(白楽天)
「遺愛寺の鐘は枕を欹て(そばたて)て聴き、香炉峰の雪は簾(すだれ)を撥げ(かかげ)て看る(みる)」
(遺愛寺で打ち鳴らす鐘の音は、頭をのせたまま枕を高く傾けてじっと聞き、香炉峰の雪景色は、すだれをはね上げて眺めるのである。)
地方に左遷された白居易が悠々自適な心境を詠んだもの。
 
仰せらるれ :尊敬の本動詞:おっしゃる。 「言ふ」の尊敬語として「のたまはす」とともに最も敬意が高い。
地の文での最高レベルの敬語なので「仰せらるれ」の動作主は中宮定子。
◇「作者(清少納言)」→「中宮定子」への敬意。

※ちなみに、尊敬の助動詞「す」「さす」とは違い(例:せ給ふ・させ給ふ)、尊敬の助動詞「る」「らる」は、「給ふ(たまふ)」など尊敬語とは併用しない。尊敬語と併用した場合(れ給ふ・られ給ふ)は、尊敬以外の意味(自発、受身、可能)のうちの自発か受身になる。

「笑はせたまふ」の「せたまふ」 :お~になる。~なさる。
《せ》尊敬の助動詞+《給ふ》尊敬の補助動詞(二重尊敬・最高敬語)
地の文での二重尊敬(最高敬語)なので「笑はせたまふ」の動作主は中宮定子。
◇「作者(清少納言)」→「中宮定子」への敬意。

さる :そうのような。
※さること=白居易の詩。

さへ :~までも。

「思ひこそよら」 :「思ひ寄る」(思いつく)の間に係助詞「こそ」が入った形。

なほ :やはり。

「この宮の人」 :この中宮様の女房。

「さべきなめり」 :ふさわしい人のようである。
※「さるべきなるめり」→「さんべきなんめり」→「さべきなめり」と変化した撥音便「ん」の無表記。
※読む時は「サンベキナンメリ」と撥音便の「ン」を加えて読むのがルール。

Sponsored Links


<係り結び>

「こそ」→「つれ」 

◇係り結びが分からない人は上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。


<枕草子の文学ジャンル・内容分類>

「枕草子」(平安時代中期)の文学ジャンル=「随筆」(日本最古の随筆)。
「方丈記」(鎌倉時代初期)、「徒然草」(鎌倉時代末期)とともに日本三大随筆のひとつ。
「をかし」の文学(枕草子) ⇔ 「あはれ」の文学(源氏物語)

枕草子の内容は、大きく分類すると3つの章段から構成されている。

「類聚的章段」 :類聚(るいじゅ・るいじゅう)=同じ種類の事柄を集めること。
「随想的章段」 :四季折々の自然や人事などを観察。
「日記的章段」 :中宮定子周辺の宮廷生活の様子を回想。「回想的章段」ともいう。

「類聚的章段」(ものづくし) :「うつくしきもの」(もの型)、「木の花は」(は型)など

「随想的章段」 :「春はあけぼの」、「九月ばかり」など
※「春はあけぼの」は、趣のあるものを集めた類聚的章段とも言える。

「日記的章段」 :「中納言参りたまひて」、「雪のいと高う降りたるを」など


<鑑賞・私の一言>

清少納言の自讃の章段ですね。
白氏文集の詩句による中宮定子の趣向を変えた問いかけに対して、他の女房であれば「それは、白氏文集ですね」と言葉で答えて終わりそうなところを、清少納言は中宮の雪景色を眺めたい気持ちを察した上で行動で答えたことによって、中宮定子を満足させ、周囲の女房たちをも感心させたのですね。
また、自ら自慢するのではなく、他人のほめ言葉を引用して書いている所も彼女の賢さなのでしょうね。

予想テスト問題は、気分が乗ったらいずれ追記します。


<このブログに収録済みの品詞分解作品>

 品詞分解:ブログ収録作品一覧


<古文の学習書と古語辞典>

 古文を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
 《⇒古文学習書の記事へ》 

 《⇒品詞分解付き対訳書の記事へ》 

 《⇒古語辞典の記事へ》
Sponsored Links
◇関連記事 (前後の7記事を表示)
 その他の記事は、右サイドメニューの「カテゴリ」(和歌などは索引)からどうぞ。
 

Comment (コメント)

 (任意) 未入力時 = よみ人しらず
 (任意) 入力時もコメント欄には非表示
 (必須) 管理人承認後に表示
Private

Categories (カテゴリ)
Search This Blog (ブログ内検索)
Featured Posts (特集・古典の基礎知識)
◆ 古典を得意科目にする記事
My Recommended Books (おすすめ書籍)
◆ 辞書と学習書の記事
Popular Posts (人気記事)
All Posts (すべての記事)
This and That (あれこれ)
  • ブログ記事に誤字や記述間違い等がある場合は、コメント欄から教えてください。
  • このブログのリンクはご自由にどうぞ。
    その際に連絡の必要はありません。
  • 古典作品の解説や和歌の鑑賞文などを目的とした中学生の読者さんもいるようですね。

    このブログの古典文法などは、詳しい文法的説明を求める高校生以上の読者を想定して書いています。一般の中学生には必要のない知識なので、わからなくても気にしないでね。
About This Blog (このブログについて)

んば

Author:んば
Since May 9,2014


くらすらん
暮らす欄くらすらむClass Run

この絵は私のお気に入りで
アンリ・ルソー『眠るジプシーの女』