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徒然草(31段) 雪のおもしろう降りたりし朝 品詞分解と訳

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 今回は、「徒然草 第31段 雪のおもしろう降りたりし朝」の原文・現代語訳(口語訳)・品詞分解(文法的説明)・語句の意味・文法解説・敬語(敬意の方向)・係り結び・鑑賞・おすすめ書籍などについて紹介します。


「徒然草(つれづれぐさ) 第31段 雪のおもしろう降りたりし朝」(兼好法師・吉田兼好・卜部兼好)


<原文>

◇全文の「現代仮名遣い・発音・読み方(ひらがな)」は下記の別サイトからどうぞ。
《⇒現代仮名遣いサイトへ行く》

 雪のおもしろう降りたりし朝(あした)、人のがり言ふべきことありて文(ふみ)をやるとて、雪のこと何(なに)とも言はざりし返事(かへりごと)に、 「この雪いかが見ると、一筆(ひとふで)のたまはせぬほどの、ひがひがしからん人の仰せらるる(おほせらるる)こと、聞き入るべきかは。かへすがへす口惜しき(くちをしき)御心(みこころ)なり」 と言ひたりしこそ、をかしかりしか。

 今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし。


<現代語訳>

 雪が趣深く降り積もっていた朝に、ある人の所へ言ってやらなければならないことがあって、手紙をやろうと思って、雪のことを何にも書かなかった(その)返事に、「この雪をどのように思うかと、一言もおっしゃらないような、無風流な人のおっしゃることを、どうして聞き入れることができましょうか、いや、できません。まったく残念なお心です。 」と書いてあったのは、実におもしろいことであった。

 今は亡くなってしまった人なので、この程度のちょっとしたことも忘れることができない。


<徒然草(つれづれぐさ)>

作者=兼好法師(けんこうほうし)・兼好(けんこう)は法号、俗名=卜部兼好(うらべかねよし)、通称=吉田兼好(よしだけんこう)・生家が京都吉田神社の神官であることに由来。

文学ジャンル=随筆。

成立=鎌倉時代末期。

「枕草子」(平安時代中期)、「方丈記」(鎌倉時代初期)とともに日本三大随筆のひとつ。

隠者文学(いんじゃぶんがく)=俗世間を離れ、仏道修行や悠々自適の生活を送る者による文学作品の総称。代表的な作者は兼好法師・鴨長明・西行など。
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<品詞分解(文法的説明=文法解釈)>

◇主要な品詞を色別表示にした見やすい品詞分解を別サイトに作成しました。
《⇒品詞色別表示の品詞分解サイトへ行く》

 ※活用の基本形を、ひらがなで示した。動詞は、品詞名を省略した。
 ※二通りの解釈や説がある場合、「たり【存続(完了)・・・】」などのように示した。

 雪のおもしろう降りたりし朝、
 雪【名詞】 の【格助詞】 おもしろう【形容詞・ク活用「おもしろし」の連用形:「おもしろく」のウ音便】 降り【ラ行四段活用「ふる」の連用形】 たり【存続(完了)の助動詞「たり」の連用形】 し【過去の助動詞「き」の連体形】 朝【名詞】、 

人のがり言ふべきことありて文をやるとて、
人【名詞】 の【格助詞】 がり【名詞(接尾語)】 言ふ【ハ行四段活用「いふ」の終止形】 べき【当然の助動詞「べし」の連体形】 こと【名詞】 あり【ラ行変格活用「あり」の連用形】 て【接続助詞】 文【名詞】 を【格助詞】 やる【ラ行四段活用「やる」の終止形】 と【格助詞】 て【接続助詞】、 
※とて【格助詞】とする立場もある。

雪のこと何とも言はざりし返事に、
雪【名詞】 の【格助詞】 こと【名詞】 何【代名詞】 と【格助詞】 も【係助詞】 言は【ハ行四段活用「いふ」の未然形】 ざり【打消の助動詞「ず」の連用形】 し【過去の助動詞「き」の連体形】 返事【名詞】 に【格助詞】、

「この雪いかが見ると、一筆のたまはせぬほどの、
「こ【代名詞】 の【格助詞】 雪【名詞】 いかが【副詞】 見る【マ行上一段活用「みる」の連体形】 と【格助詞】、 一筆【名詞】 のたまはせ【サ行下二段活用「のたまはす」の未然形:尊敬の本動詞】 ぬ【打消の助動詞「ず」の連体形】 ほど【名詞】 の【格助詞】、 
※のたまは【ハ行四段活用「のたまふ」の未然形:尊敬の本動詞】+せ【尊敬の助動詞「す」の未然形】とする場合もある。

ひがひがしからん人の仰せらるること、聞き入るべきかは。
ひがひがしから【形容詞・シク活用「ひがひがし」の未然形】 ん【婉曲の助動詞「む」の連体形】 人【名詞】 の【格助詞】 仰せらるる【ラ行下二段活用「おほせらる」の連体形:尊敬の本動詞】 こと【名詞】、 聞き入る【ラ行下二段活用「ききいる」の終止形】 べき【可能の助動詞「べし」の連体形】 かは【終助詞】。
※仰せ【サ行下二段活用「おほす」の未然形:尊敬の本動詞】+らるる【尊敬の助動詞「らる」の連体形】とする場合もある。
※かは【係助詞】とする立場もある。

かへすがへす口惜しき御心なり」 と言ひたりしこそ、をかしかりしか。
かへすがへす【副詞】 口惜しき【形容詞・シク活用「くちをし」の連体形】 御心【名詞】 なり【断定の助動詞「なり」の終止形】」  と【格助詞】 言ひ【ハ行四段活用「いふ」の連用形】 たり【完了の助動詞「たり」の連用形】 し【過去の助動詞「き」の連体形】 こそ【係助詞】、 をかしかり【形容詞・シク活用「をかし」の連用形】 しか【過去の助動詞「き」の已然形】。

 今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし。
 今【名詞】 は【係助詞】 亡き【形容詞・ク活用「なし」の連体形】 人【名詞】 なれ【断定の助動詞「なり」の已然形】 ば【接続助詞】、 かばかり【副詞】 の【格助詞】 こと【名詞】 も【係助詞】 忘れがたし【形容詞・ク活用「わすれがたし」の終止形】。

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<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◆「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◆「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◆「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◆「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◆「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<語句・文法解説>

■助動詞「たり」、「む」など主な助動詞の意味については、上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。

◇主な敬語については、「敬意の主体(誰から)」→「敬意の対象(誰へ)」(敬意の方向)を示した。

おもしろう :趣深い。風情がある。 ※下の<文法特記>を参照のこと。
※「おもしろく」のウ音便

がり:~のもとに。~の所へ。

いかが :疑問の副詞。どのように~か。
※「いかが」は、疑問の副詞(陳述の副詞)なので、疑問の副詞に呼応して連体形の「見る」で結ぶ。
「いかが」は、「いかにか」(副詞「いかに」+係助詞「か」)の撥音便化した「いかんが」から転じた形。

のたまはせ :尊敬の本動詞:おっしゃる。 
「言ふ」の尊敬語として「仰せらる」とともに最も敬意が高く、地の文では天皇ファミリーなど最高階級に対して使われるが、この場合は会話文(手紙文)なので最高階級とは限らない。
◇「(手紙の)書き手(ある人)」→「作者(兼好)」への敬意。

ひがひがしから :無風流な

「ひがひがしからん人」の「ん」 :婉曲(~ような。)の助動詞
ここは、婉曲(~ような)で解釈した方がよいが、婉曲(~ような)はこの例のように無理に訳さない場合も多い。
ちなみに、「ん」は助動詞「む」が平安時代中期から「ん」と発音変化し、それに伴って「ん」と表記されたもの。

仰せらるる :尊敬の本動詞:おっしゃる。 
「言ふ」の尊敬語として「のたまはす」とともに最も敬意が高く、地の文では天皇ファミリーなど最高階級に対して使われるが、この場合は会話文(手紙文)なので最高階級とは限らない。
◇「(手紙の)書き手(ある人)」→「作者(兼好)」への敬意。

聞き入る :承諾する。同意する。

かは :反語 ~か、いや、~ない。

かへすがへす :(なんど考え直してみても) ほんとうに。まったく。 

口惜しき :残念だ

をかしかり :おもしろい

かばかり :この程度

「忘れがたし」の「がたし」 :接尾語or補助形容詞 動詞の連用形に付いて形容詞を作る。 ~するのが困難だ。

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<係り結び>

※「いかが」→「見る」(疑問の副詞に呼応した結び)

「こそ」→(をかしかり)「しか」

◇係り結びが分からない人は上にリンクを付けてある「古典文法の必須知識」を読んでね。


<文法特記>

◆「をかし」、「あはれなり」、「おもしろし」のニュアンスの違い

ともに「趣深い」と訳すことが出来るが、
「をかし」=知的で上品な感覚で、滑稽の要素もある。
「あはれなり」=「あはれ」が「ああ、はれ」に由来するので、感動を表す感覚で、悲しい時にも用いる。
「おもしろし」=心が晴れやかになる感覚で、愉快の要素もある。


<鑑賞・私の一言>

風流を愛したツレヅレ坊主の兼好が、「ひがひがしからん人」(無風流な人)と言われている所が面白いですね。

相手はおそらく風流な女性だったのでしょうね。

この31段と次の32段は風流であった故人を偲んでいる章段です。

予想テスト問題などは、気分が乗ったら、いずれ追記します。


<このブログに収録済みの品詞分解作品>

 品詞分解:ブログ収録作品一覧


<古文の学習書と古語辞典>

 古文を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
 《⇒古文学習書の記事へ》 

 《⇒品詞分解付き対訳書の記事へ》 

 《⇒古語辞典の記事へ》
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◇関連記事 (前後の7記事を表示)
 その他の記事は、右サイドメニューの「カテゴリ」(和歌などは索引)からどうぞ。
 

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