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万葉集 あかねさす紫野行き標野行き 品詞分解と訳

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 今回は、「万葉集」収録和歌の現代語訳(口語訳・意味)・品詞分解・語句文法解説・修辞法(表現技法)・おすすめ書籍などについて紹介します。

 この歌に対する大海人皇子の答歌「紫草の~」については、「こちらのリンク(紫草の~)」から参照してください。


万葉集 巻1・20 額田王(ぬかたのおおきみ)

天皇(すめらみこと)、蒲生野に遊猟をしたまふ時、額田王の作る歌
(天智天皇が蒲生野で薬猟をなさった時に額田王が作った歌)


あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る


<平仮名>

あかねさす むらさきのゆき しめのゆき のもりはみずや きみがそでふる


<万葉仮名>

茜草指 武良前野逝 標野行 野守者不見哉 君之袖布流


<現代語訳>

紫草の栽培されている野を行き、御料地を行きながら、野の番人が見はしないでしょうか、いや、見るでしょう。あなたはそんなに袖を振ったりして。

《日本書紀によると、668年5月5日、蒲生野に遊猟をした時、天智妃になっていた額田王が、天智天皇の弟で前夫である大海人皇子(後の天武天皇)に詠みかけたもの。》


<作者>

額田王(ぬかたのおおきみ)
生没年未詳(637年頃~690年以後)。飛鳥時代の女流歌人。万葉集第一期。鏡王の娘。歌風は優艶および雄渾(ゆうこん=雄大で勢いがあること)。初め大海人皇子(天武天皇)の妻となって十市皇女を生み、後に大海人皇子(天武天皇)の兄である中大兄皇子(天智天皇)の寵愛を受けたとされる。額田王をめぐる天智天皇と大海人皇子の確執が壬申の乱(672年)の遠因との説もある。


<語句文法解説> 題詞

蒲生野(かまふの) :滋賀県蒲生郡の野。

遊猟(みかり) :五月の猟は薬猟(くすりがり)で、男は鹿の袋角(新しく生え代わった角)を、女は薬草をとる。

し :動詞サ行変格活用「す」の連用形

たまふ :尊敬の補助動詞:ハ行四段活用「給ふ(たまふ)」の連体形 お~になる。~なさる。

※「題詞(だいし)」=和歌の前書き。万葉集以外では「詞書(ことばがき)」。
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<品詞分解・語句文法解説> 歌

あかねさす(茜さす) :枕詞

紫野 :名詞 紫草の生えた野。
※紫は根から紫色の染料を取る草。

行き(ゆき) :動詞カ行四段活用「行く」の連用形

標野(しめの) :名詞 標(占有のしるし)を立てた一般者の立ち入りを禁じた御料地。
※紫野の言い換えで、同じ野を指している。

行き(ゆき) :動詞カ行四段活用「行く」の連用形 
※「行き~行き」で、あちこち歩き回る様子を表現している。

野守(のもり) :名詞 御料地の野の番人。

は :係助詞

見 :動詞マ行上一段活用「見る」の未然形

ず :打消の助動詞「ず」の終止形

や :反語の終助詞 ※疑問の終助詞(~か。)とする説もある。 
※係助詞とする立場もある。係助詞とした場合も終助詞的用法(文末用法)なので係り結びはない。

君 :代名詞

が :主格の格助詞

袖 :名詞

振る :動詞ハ行四段活用「振る」の連体形 
※主格の格助詞「が」「の」が用いられて文が終始する場合は、それに呼応して述語は連体形となり余情・詠嘆を表す。「連体形止め」の一形態。
※当時、袖を振るのは愛情を表現する行為。 

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<古典文法の基礎知識>

「古文」を苦手科目から得意科目にする古典文法の基礎知識です。

◇「現代仮名遣い」のルールについては、「現代仮名遣い・発音(読み方)の基礎知識」の記事をどうぞ。

◇「用言の活用と見分け」については、「用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用と見分け方」の記事をどうぞ。

◇「助動詞・助詞の意味」や「係り結び」・「準体法」などについては、「古典文法の必須知識」 の記事をどうぞ。

◇「助動詞の活用と接続」については、「助動詞の活用と接続の覚え方」の記事をどうぞ。

◇「音便」や「敬語(敬意の方向など)」については、 「音便・敬語の基礎知識」の記事をどうぞ。


<和歌の基礎知識>

◎和歌の文法、用語、和歌集、歌風などについては、「和歌の文法・用語の基礎知識」をどうぞ。

◎和歌の修辞法(表現技法)については、「和歌の修辞法(表現技法)の基礎知識」をどうぞ。


<修辞法(表現技法)>

・枕詞 :「あかねさす」は、「紫」に係る枕詞(色の類似による)

・句切れ :四句切れ 
※第四句「野守は見ずや」を挿入句と解釈して、句切れ・倒置なしとする説もある。

・倒置 :第四句と第五句が倒置

・反復法 :「行き」の繰り返し

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<私の一言>

「あかねさす~」と答歌の「紫草の~」、まるでお昼のメロドラマのような和歌ですね。

額田王は、大海人皇子が袖を振るのをとがめながらも、喜んでいる感じが伝わってきます。

やっぱり、魔性の女だぁ(笑)

ただし、この歌は二人の密かな愛の歌ではなく、天智天皇も同席した宴で、皆を楽しませるための遊戯的な歌とする説が一般的です。

そりゃそうですよねぇ、1300年以上たった今でも、こうやって皆で鑑賞しているんですから(笑)

◇「切れ」を「切れ」と誤字で覚えている人たちがいますよ。

◇「あかねさす~」が小倉百人一首に撰集されていると思っている人たちもいるようですが、額田王の歌で小倉百人一首に撰集されているものはありません。
なかには、「和歌=百人一首」だと思っている人たち、この歌を「俳句」だと思っている人たちもいます。
上にリンクをつけてある「文法・用語の基礎知識」の記事を読んでね。

小倉百人一首は、勅撰和歌集から撰集されているので、勅撰和歌集ではない万葉集の歌人の歌はほとんど撰集されていない。万葉集の代表的歌人のうち、柿本人麻呂・山部赤人・大伴家持などは拾遺集や新古今集などの勅撰和歌集に所収されている歌が撰集されていますが、額田王・山上憶良・大伴旅人などの歌は撰集されていません。


<和歌索引>

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<古文や和歌の学習書と古語辞典>

古文や和歌を学ぶための学習書や古語辞典については、おすすめ書籍を紹介した下の各記事を見てね。
《古文・和歌の学習書の記事へ⇒》

《品詞分解付き対訳書の記事へ⇒》

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◇関連記事 (前後の7記事を表示)
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